今年完成百周年を迎える国重要文化財(重文)の「横浜市開港記念会館」(中区)を巡り、現在の市直営から民間に運営を任せる指定管理者制度への変更を検討していることが、関係者への取材で分かった。既存の集会所機能に加え、歴史的建造物の魅力を生かした観光施設としての活用を模索する。早ければ二〇一九年度に運営事業者を公募する。 (志村彰太)
 開港記念会館は一九一七(大正六)年、それまであった住民の集会所が火災で焼失したのを機に、市民の寄付で建設。関東大震災(二三年)で内部を焼損したが建物は無事で、横浜大空襲(四五年)の被害も免れ、戦後の接収を経て八九年に国重文に指定された。角張った時計台の形から「ジャックの塔」とも呼ばれ、県庁の「キング」、横浜税関の「クイーン」と合わせて「横浜三塔」として親しまれる。
 横浜の建築に詳しい横浜都市発展記念館の青木祐介・主任調査研究員は「赤レンガと花こう岩を組み合わせた外観は、明治−大正時代に流行したデザイン。レンガの内部には鉄筋を入れるなど地震対策も施しており、歴史的に第一級の建物」と評価する。
 厳重な保存管理が必要な歴史的建造物だが、もともと集会所として建設した経緯から、市条例に基づく公会堂として長らく使われてきた。他の十七区に一カ所ずつある公会堂は既に指定管理者が運営しているが、開港記念会館は重文であることや老朽化した空調・照明設備の更新が必要なことから、検討が遅れていた。
 集会所としては、市民団体の発表会や勉強会、イベントに使われ、利用率は八割を超える。一方、建物の意匠や構造、二七年設置のステンドグラスなどの内装に関心を持って訪れる観光客も増えている。市直営では観光需要を十分に取り込むのが難しいことから、民間の経営手法を採り入れる必要があると判断した。
 二月から、観光業者やイベント企画会社などに、どのような集客の仕方があるか意見を募っている。集まったアイデアを基に公募条件を詰めるという。
 ただ、公募には時間がかかる見込み。「百周年事業は市直営でやりたいという思いがあった」と市関係者。百周年記念事業は今月十一、十二日にコンサートや防災講演会、館内の非公開スペースへの特別案内などをし、七月一日の開館記念日に式典を開く。二〇一八年度は空調などの大規模修繕を見込み、これらが終わってから具体的な検討に入る。
 市関係者は「重文のため活用に制限があるが、現状の市民利用と観光の目玉の機能を両立させたい」と話している。

本記事では,横浜市における指定管理者制度の取組方針を紹介.
2016年「4月1日現在」,「932」*1施設を指定管理する同市.本記事によると,「横浜市開港記念会館」*2を「直営から」「指定管理者制度への変更」を検討されている模様.同制度による「施設の運営方法を見直し」*3た後での,施設の利活用状況は,要観察.

*1:横浜市HP(政策局各種取組公民連携/PPPの推進に向けた取組指定管理者制度)「指定管理者指定済み施設一覧」(28年4月1日現在)

*2:横浜市HP(各局の紹介中区)「開港記念会館

*3:伊藤正次,出雲明子,手塚洋輔『はじめての行政学』(有斐閣,2016年)165頁

はじめての行政学 (有斐閣ストゥディア)

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