総務省の「町村議会のあり方に関する研究会」は26日、小規模市町村の議会維持に向けた報告書を公表した。18歳以上の住民から任意に選ぶ議会参画員と強い権限を持つ少数の常勤議員で構成する「集中専門型議会」など、二つの新制度の創設を提案した。現在の全国一律の地方議会制度を改め、過疎地などで深刻な議員の成り手不足の解消を目指す。
 もう一つの新制度は、兼職・兼業の議員が中心の「多数参画型議会」。議員は非常勤で、報酬を抑制する代わりに定数を大幅に増やす。各自治体が現在の議会制度と二つの新制度の中から選択できるようにする。
 報告書を受け、政府は地方制度調査会(首相の諮問機関)で対象となる自治体の規模などを詰め、来年の通常国会にも地方自治法改正案などを提出したい考えだ。(2018/03/26-16:32)

本記事では、総務省における「町村議会のあり方に関する研究会」による検討結果を紹介。
2017年7月28日付同年9月13日付2018年3月8日付の各本備忘録で記録した同省が設置した同研究会。同研究会による検討結果として、2018年「3月26日」に「町村議会のあり方に関する研究会 報告書」*1を公表。「議員のなり手不足」*2の現状に対して、その要因を「議決事項」が「広範な事項」となり「その結果」「議員」の「専門性がより強く求められる」「時間的」な「拘束」がなされ「一般の有権者が議会に参画しにくくなっている」*3のこと、「各市町村」が進めた「議員定数の削減」により「元々議員定数が少ない小規模市町村ほど」「議員の負担感が増加」*4していること、そして、「議員報酬だけでは生計を立てていけないという状況」*5を指摘。また、制度面では「兼職禁止及び請負禁止」により「公務部門の人材や市町村との取引関係がある事業者等が議員になり得ない」の「実態的影響」*6や、「兼業議員」の場合にも議会運営上、「議員活動に係る時間的制約が大きい実態」への「各企業等の理解が得られにくい状況」*7から、「勤労者の参画に対する保障が必ずしも十分ではないもの」*8ことにあるとの認識が示されている。
このような認識のもと、同研究会では「町村総会」制度に対しては「現在、実効的な 開催は困難である」として、「議員のなり手不足の対策」となる「持続可能な議会の姿を実現するか、という観点」*9から、「少数の議員によって議会を構成するものとし、議員に専業的な活動 を求める方向性」である「集中専門型」、「本業を別に持ちつつ、非専業的な議員活動を可能とする方向性」である「多数参画型」*10を提案している。それぞれの具体的な内容は、「議員活動」では「集中専門型」では「主たる職務として専業的に活動」となり、「多数参画型」は「従たる職務として非専業的に活動」する。「権限」では前者は「地方自治法第96条第1項を維持 (積極的に同条第2項を活用し、 政策形成に関与)」し、後者は「契約・財産等に関する議決事件を除外」する。「議員報酬 ・定数など」は前者は「生活給を保障する水準」と「少数の者からなる議員構成」とし、後者は「生活給保障なし」で「多数の者からなる議員構成」とし「選出方法の見直し」をする。「兼職禁止 ・請負禁止」では、前者は「請負禁止を維持」し「公務員の立候補退職後の復職制度」し、後者では「請負禁止を緩和」し「他の自治体の常勤の職員との兼職可能」とする。「議会運営」では、前者は「本会議審議(委員会制なし)」で「平日昼間中心」とし、後者では「通年会期制による審議日程の分散」「夜間・休日中心」とする。「勤労者の参画」には、前者は「立候補に係る休暇の取得等について不利益取扱いを禁止」し、後者は「立候補及び議員活動(夜間・休日 中心)に係る休暇の取得等について 不利益取扱いを禁止」とする。「住民参画」では、前者は「議会参画員の活用」とし、後者は「多数の有権者が議員として参画」*11とする。
本記事によると、今後、「政府は地方制度調査会」で「対象となる自治体の規模などを詰め」る予定にある模様。実態上及び制度上の「兼職は制限」*12に対する制度改正の検討状況は、要経過観察。


*1:総務省HP( 広報・報道報道資料一覧:2018年3月「町村議会のあり方に関する研究会」において取りまとめられた報告書の公表)「町村議会のあり方に関する研究会 報告書」(平成30年3月、町村議会のあり方に関する研究会)

*2:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)2頁

*3:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)5頁

*4:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)5頁

*5:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)5頁

*6:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)6頁

*7:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)6頁

*8:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)6頁

*9:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)9頁

*10:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)11頁

*11:前掲注1・総務省(町村議会のあり方に関する研究会 報告書)12頁

*12:出雲明子「第3章 議会と執行機関」柴田直子・松井望編著『地方自治論入門』(ミネルヴァ書房、2012年)78頁

地方自治論入門

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