東京都杉並区議会は12日、毎年度の予算の1割程度を積み立て、運用益で10年後の区民税10%減税を目指す「減税基金条例」案を一部修正の上、自民、民主、公明各党などの賛成多数で可決、成立した。
 区によると、地方自治体が将来の減税を目的に基金を設置するのは全国で初めて。条例は4月から施行される。山田宏区長はこうした手法で恒久減税をする独自の構想を提唱していた。ただ区長自身は多選自粛条例により2011年春に退任する予定で、駆け込みで構想の具体化に踏み切った格好だ。
 区が掲げる減税目標は、12年度から150億円前後を毎年積み立て、長期国債などにより年1・5%以上の高い利回りで運用することが前提。また基金地震など大規模災害時にも活用可能としており、目標通りの減税ができるか実現性は未知数といえる。

本記事では,杉並区における減税に伴う基金設置に関する条例成立を紹介.2009年9月8日付の本備忘録でも取りあげた同検討の取組に関しては,ひとまずのおしまいであり,同取組としては,はじまり.
2010年3月13日付の中日新聞の報道によると,議決においては「議長と欠員を除く四十五人のうち自民,公明,民主などの三十人が賛成」され「共産や社民などの十五人が反対」*1されたとのこと.また,本記事記されている上程案への「一部修正」の内容に関しては,2010年3月12日付の時事通信社による配信記事によると「具体的な減税実施時期や規模を定める手続きを透明化する修正」*2とある.詳細については,同区議会HPを参照*3.修正事項は,上程案の第2条に新たに第3項として,「区長は,基本方針を策定し,又はこれを変更しようとするときは,あらかじめ杉並区減税基金委員会に報告しなければならない」*4という条項を追加.
同構想・同条例に関しては「区長側に」「水をあけられた」*5との観察をする向きもあるなかで,「付帯決議の審議」においては,「厳しい意見も」提示されつつ,同条例の施行にあたり,「基金の積立て際しては,行政サービスの低下を招くことなく,さらなる区民生活の向上を図ること」,「基本方針の策定,変更にあたっては,あらかじめ区民及び区議会の意見を聞くこと」,「基金管理方針の策定,変更にあたっては,あらかじめ区民及び区議会の意見を聞くこと.また,基金の運用の計画の策定,変更にあたっては,あらかじめ区民に説明行うこと」,「条例等の趣旨,内容について区民の理解が得られるよう周知に努めること.また,条例施行後,一定期間毎に条例案の施行状況を検証すること」*6が付帯決議されている.
意見の聴取を始めとする付帯決議を通じて,上記の上程案への修正よりもより明確に,区民,そして,区議会による関与が図られることを決議されており,いわば,同区議会側から「自治税政策マネジメント」*7に関する見解が示されたとも観察できそうか.会議録の公開後,同審議の様子は,要確認.

*1:中日新聞(2010年3月13日付)「杉並の『減税条例』成立 全国初の基金設立

*2:時事通信社(2010年3月12日付)「減税基金条例が成立へ=全国初、10年後へ積み立て−東京・杉並区

*3:杉並区HP(杉並区議会議案一覧:平成22年第1回定例会)「動議 議案第4号杉並区減税基金条例に対する修正案

*4:前掲3・杉並区議会(動議 議案第4号杉並区減税基金条例に対する修正案)2頁

*5:廣瀬克哉「自治体減税と議会の機能」(『ガバナンス』No.107,2010年3月号,37頁

ガバナンス2010年3月号

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*6:杉並区HP(杉並区議会議案一覧:平成22年第1回定例会)「動議 議案第4号杉並区減税基金条例に付する付帯決議」4頁

*7:大杉覚「減税と自治体経営改革」『ガバナンス』No.107,2010年3月号,32頁

ガバナンス2010年3月号

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