総務省から出向している愛知県安城市副市長山田朝夫氏(48)が、4月1日付で同県常滑市に「転出」することが分かった。11日、総務省から派遣の内示が出た。期間は2年で、国から常滑市に職員が出向するのは初めて。
 山田氏は東京都出身で、1986年、東大法学部を卒業後、国家公務員上級職(キャリア)として当時の自治省に入省。小規模の自治体への派遣を望み、出向先の大分県久住町(現竹田市)や臼杵市で、有機農業などに取り組んだ。2006年、安城市助役となり、主に環境行政を担当。副市長の任期満了を前に、市民病院の移転や財政難などの課題を抱える常滑市の片岡憲彦市長が“ラブコール”を送っていた。常滑市は山田氏を市長直轄の参事として迎える。山田氏は「与えられた仕事を精いっぱいやるだけ」と話した。

本記事では,常滑市における参事職の採用方針を紹介.
同市における同職は,「特に市長が命ずる事務を掌理する」職として,「必要があると認めるとき」「置くことができる」*1.また,「常滑市参事設置規則」第1条第1項によると「非常勤の特別職」であり,同規則第3条第2項によると,その「任期」は「2年」*2とある.2009年9月11日付の本備忘録にて,制度的な観点からの類型化を図た,各種職に対する庁内外部からの登用形態の制度類型からすれば,「非常勤・非同意職・専門系・任期付」とも分類ができそう(同職の「特に市長が命ずる事務」の内容次第では,「非常勤・非同意職・総務系・任期付」でしょうか).
喜多見富太郎先生による分析結果からは,「自治省からの出向者」としては「本省の人事ローテションに組み込まれて定期的に本省,他省庁,国所管外郭団体,自治体の4つの職域を回遊的に移動する職員」と「自治体に出向したまま他の職域に異動することなくその自治体に「地方化」し,退職後の再就職先を含めて以降の職業生活を委ねる職員」の「2種類の職員が存在することが確認」されるとあり,後者を「地方化職員」*3として整理されている.
本記事を拝読すると,本記事で紹介されている人事配置は,必ずしも一つの自治体で「地方化」されてはいないこともあり,喜多見富太郎先生が提示された「地方化職員」の類型内に止まらず,方や,前者の類型の異動パタンに比べると,恰も2008年3月14日付の本備忘録でも言及した,自治省自治制度官庁)における「規範的アイディア」*4である,いわゆる「三惚れ主義」*5からすれば,個別「地方」に限定されず「総体」としての「地方に惚れよ」的な,「総体」としての「自治体」という職域で異動が行われていることが分かる.興味深い.
金井利之先生による観察結果からは,「現在の地方自治では,〈仕組みとしての地方自治〉と〈個々の自治実践〉に活動領域が大きく分裂して」おり,「辛うじて両者を架橋している両生類が,往復的出向を組み込んだ自治制度官僚たち」であり,この「出向」を通じて「「当たらずとはいえども遠からず」という程度の〈仕組み〉を作ることに成功してきたとも言える」*6との認識も示されている.本記事のような人事配置を通じて,「自治体の側」において,どのように「〈仕組みとしての地方自治〉と〈個々の自治実践〉」を「架橋」する「〈個々の仕組み〉」*7が形成されるのだろうか.考えてみたい課題.

*1:常滑市HP(常滑市例規集)「常滑市事務分掌規則」(昭和44年2月1日規則第2号)第3条の2

*2:常滑市HP(常滑市例規集)「常滑市参事設置規則」(平成2年1月25日規則第2号)

*3:喜多見富太郎『地方出向を通じた国によるガバナンス』(東京大学行政学研究会研究叢書4,2007年)28頁

*4:ヴィヴィアン・シュミット「アイディアおよび言説を真摯に受け止める」小野耕二編著『構成主義的政治理論と比較政治』(ミネルヴァ書房,2009年)81頁

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

*5:神一行『自治官僚』(講談社,1986年)139頁

自治官僚

自治官僚

*6:金井利之「地方自治のミ・ラ・イ第24回(最終回)地方自治のミ・ラ・イ」『ガバナンス』No.107,2010年3月号,83頁

ガバナンス2010年3月号

ガバナンス2010年3月号

*7:前掲注6・金井利之2010年:83頁