民主化の韓国政治―朴正煕と野党政治家たち1961~1979

民主化の韓国政治―朴正煕と野党政治家たち1961~1979

同書は、同期の韓国の民政化過程を「マイナスのバランスの上に立つ、イデオロギー的均衡状態」(331頁)として捉え、与党のみならず、離合集散が図られる野党政治家の観点から、それぞれの行動の正統性をいかに確保するかを描く。本日の大学業務の合間を見て読み進めるが、待ち時間が多い業務が、あっという間に過ぎてしまうほど、同書の60年代〜70年代の韓国の政治状況の分析に引き込まれていく。
先日、六本木で見た映画「ユゴ大統領有故」では、ソン・ジェホが演じる大統領陛下が、最後となる酒宴において「我が国は、野党があるからな」と、当時既に自国が民主主義国家であることを示す例示としての含みある発言をするシーンがある。その含意がもつ苦味が残っているなかで、同書を読むと、大統領陛下がこれまで等閑視できた自壊リスク含みの野党勢力が、当時勢力を持ちはじめ、与党勢力に迫る分岐点の時期(322頁)であったことを理解。