全国で相次ぐ食品表示の偽装問題を受け、不適切な表示の監視にあたる「食品表示監視協議会」の設置が、中国5県で進んでいる。国と地方自治体、警察などが参加。「縦割り行政」の枠組みを超えて連携し、複数の法律が絡む食品表示の問題に対応する。
食品の表示に関する法律は、日本農林規格(JAS)法や食品衛生法景品表示法不正競争防止法などがあり、法律ごとに所管する官庁が異なる。北海道の食肉加工販売会社の偽装事件では、農水省と北海道の間で偽装の情報が伝わらず、実態の把握が遅れるという事態もあった。こうした縦割り行政の弊害を打破しようと、政府は都道府県ごとに関係機関で構成する食品表示監視協議会の設置を指示。中国地方では、山口県が昨年12月に協議会を設けた。鳥取、島根の両県が4月、岡山県も5月に入って相次いで発足させた。いずれの協議会も県農政事務所と県、県警、検査機関などの担当者で構成している。偽装情報が寄せられた場合は、会合を開くなどして対応。定期の会合では、情報連絡の確認や法解釈の勉強会などを開く。広島県は2003年、農政事務所に広島、呉、福山の3市の担当者を加え、県食品表示対策連絡会を設置した。新たな協議会はつくらず、今月23日の会合で県警の担当者が加わり、協議会の機能を持たせる方針だ。

同記事では、中国地方における食品表示監視協議会の設置状況を紹介。
食品表示監視協議会は、『生活安心プロジェクト緊急に講ずる具体的な施策』内の以下の規定に基づき、各都道府県において設置*1

不適切な食品表示に関する監視を強化するため,関係する都道府県の機関と国の出先機関との間で,「食品表示監視協議会(仮称)」を設置すること等により,不適正な食品表示に関する情報が寄せられた場合に,必要に応じて関係機関で情報共有,意見交換を行い,迅速に問題のある事業者への処分等必要な対応をとるとともに,こうした対応が円滑に実施されるよう,関係省庁の間で「食品表示連絡会議(仮称)」を設置し,関連情報の共有を進める。(20年度)(公正取引委員会警察庁厚生労働省農林水産省

中国地方に限らず、他の協議会を見てみると、JAS法・食品衛生法不当景品類及び不当表示防止法の所管部署又は消費者相談担当部署と県警本部(更に、保健所設置市を有する県では当該都市を含めることもある)、これに、独立行政法人農林水産消費安全技術センター地方農政局(又は、各農政事務所)が基本的な構成員。ただ、設置されたばかりであるためか、本格的な監視というよりも「情報共有化や意見交換」が主たる目的のよう。これにより、自治体内でも断絶しがちな同種業務を結びつけ、更には、地方農政局が媒介となり自治体を横断するネットワークとなり「国の政策決定への現場の意見を反映させたり、国民へ情報提供を提供するなどの機能を果たす可能性」*2も期待はできる。ただ、国から地方への媒介項が地方農政局であることが、国レベルでの分立割拠を都道府県レベルでの「総合化」となりうるかは、また別のお話とも思う。

*1:内閣府HP(生活安心プロジェクトHP)『生活安心プロジェクト緊急に講ずる具体的な施策』「2 5つの分野」1頁

*2:藤田由紀子「職員の専門性と資格職」松下圭一西尾勝・新藤宗幸編『自治体の構想4機構』(岩波書店、2002年)201頁

岩波講座 自治体の構想〈4〉機構

岩波講座 自治体の構想〈4〉機構