政務調査費の使途基準などを話し合う県議会超党派の「あり方研究会」が2日、非公開で行われ、県議の職責の定義について会派間で合意した。使途基準の明確化や、政調費の収支報告書への領収書添付は議論されず、9月の次回会議以降に回された。同研究会座長の野本陽一氏(自民)によると、これまで非常勤の地方公務員と同列だった県議の職責の条文が、先月の地方自治法改正で分けられたのを受け、自民、公明、民主、刷新の会の各会派が「県議は公務員として住民全体の奉仕者であり、住民の代表者」とする見解を確認した。政調費の使途基準見直しなどは「年度内にまとめたい」(野本氏)としている。【和田憲二】

同記事では,埼玉県において県議会が超党派で,議員の職責について検討したことを紹介.「議会あり方研究会」は,2005年9月に,4会派の議員から構成され,議長公館,議員会館,議会バスの廃止,議員共用車の削減等の検討・実施を行い,それらの審議結果は,議長に提出されている模様.現在では,県政調査費及び海外視察政務等に関する検討を進めているとある*1.議員自らの規制・給付に関する事項について,自律的に検討する「場」といえる.ただ,審議「過程」の公開度については,同記事を機に検索を行ってみたところ,ネット上では当会自体が発信する直接的な情報は,余り把握できなかった.残念.
下名の不勉強ぶりを露呈するようで大変お恥ずかしい限りですが,先般,本学の先生より,先月11日に地方自治法の改正案が成立されていたことをご教示いただきました.改正内容は,同記事にもあるように「議員の報酬に関する規定の整備」と「議会活動の範囲の明確化」*2を図るもの.しかも,議員立法による改正(地方自治法が閣法以外で改正されることは稀なのか否かは,同法改正の変遷を(『長野・逐条』の後ろに確か改正経過年表があったなあと思い出しつつも)調べてみなければならないなあ,とこれまた不勉強さを痛感).
前者の改正は,旧「第203条」から議員の報酬に該当する箇所を抜き出し,「普通地方公共団体は,その議会の議員に対し,議員報酬を支給しなければならない」「普通地方公共団体の議会の議員は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる」「普通地方公共団体は,条例で,その議会の議員に対し,期末手当を支給することができる」「議員報酬,費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない」の4つの項目を新たに「第203条」として独立に定めるもの.ただ,改正により「議員報酬」として独立されたとしても,結局は,議員の人件費は,「非常勤であるか常勤であるかの違い」*3から,「給与」とはならず,「報酬」のままである.そのため,「職責」自体が大きく変更したものではない模様.なお,旧「第203条」は「第203条の2」として後ろに追いやられることとなる.
後者の改正は,「議会は,会議規則の定めるところにより,議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる」との項目を,第100条第12項として新設するもの.同改正の趣旨を把握するため,自由民主党HPを拝見すると,後者の条項追加は,「各派代表者会議や議会広報・図書運営委員会なども正規の活動とする」」*4ことを目的としている.これにより,実質的な意思決定を行っていた各種会合も「正規」の会議とされる(また,公務災害補償もなされることになる).ただ,実質的な議会運営にどのような影響を及ぼすかは要観察.例えば,矢祭町議会の日当制で規定されている*5「正規の会議」(第3条第2項(1))が,今回の法改正によりその対象が増加されたことにもなり,同町での議員への日当支給額が増加することになるのかなあとも思う(いや,四方や同改正.日当制が今後広がることを予期しての改正ではないでしょうね.ひとえに邪推).
同法改正からも分かるように,「正規」か「非正規」の領域画定は,議会規則という各議会の判断によって行われる.ただ,「報酬=役務」の考えに立つならば,これらの領域確定もまた条例事項とする方が,「問責・答責」(金井利之)の統制関係から見ても,理に適っているとは素人的には思う.しかし,これもまた,下名が想起するほど,そう簡単には行かないお話なのだろう.議会関連の制度事項は難しい.

*1:埼玉県議会HP「第101回一都三県議会議長会が開催されました」,平成20年6月定例会・委員長報告「議会運営委員長報告・委員長神山佐市

*2:内容は,次を参照.市議会議会議長会HP(トピックス)「地方自治法の一部を改正する法律案が今通常国会で成立。同法律案など関連資料を掲載します

*3:碓井光明『政府経費法精義』(信山社,2008年)136頁

政府経費法精義

政府経費法精義

*4:自由民主党HP(ニュース:平成20年5月28日)「地方議員の位置付け明確にする地方自治法改正案を了承 総務部会

*5:矢祭町議会議員の報酬及び費用弁償に関する条例