文科省が昨年度から実施した全国学力・学習状況調査結果(市町村別・学校別)に対する鳥取県教委の非開示決定について、県情報公開審議会は八日、決定の取り消しを求める異議申し立てを認める答申を出した。中永広樹県教育長は答申を尊重する意向で、開示が決定されれば全国初という。
全国学力調査は昨年四月、小学六年と中学三年を対象に国語と算数・数学が実施された。文科省が公表するのは▽国全体▽都道府県ごと▽市と町村など地域の規模に応じたまとまり−の結果(得点)のみ。文科省は序列化や過度な競争が生まれることを理由に非公表を通達していた。これに対し、鳥取県では昨秋、市町村・学校別の調査結果の開示請求があったが、県教委は非開示を決定。異議申し立てがあったことから今年一月に同審議会に諮問され、公文書の原則公開を義務付けた県情報公開条例との整合性などが審議されていた。県教委は県条例が非開示条件としている「国の事務事業に支障を及ぼす恐れ」を根拠としたが、審議会は、県独自の基礎学力調査で結果が公表されても序列化などの問題が生じていないことから「該当しない」と判断。「児童または生徒数が十一人以上の学級の調査結果は開示」という県条例の基準に沿った開示を求めた。県教委は答申を受けて、十五日の定例教育委員会で方針を協議する。中永教育長は「答申は尊重する方向で検討する。情報公開は大切という認識はあるが、意外な内容だった」と戸惑いを隠せない。文科省初等中等教育局は「非開示に反する対応が取られると、調査の実施方法に対する信頼が失われる恐れがある」と懸念を示している。

同記事では,鳥取県において,同県に設置されている情報公開審議会が,文部科学省が実施した全国学力状況調査結果に対する非開示決定に対して,取り消しの判断を示したことを紹介.同会の答申については,鳥取県情報公開審議会のHPを参照*1.不服申立が2008年1月7日,答申が7月8日と約半年を掛けて審議.同会の他答申における審議期間と比べてみれば,比較的慎重に審議を行ったといえそう. 
我が国の情報公開条例の「最大の特徴」*2である,不開示決定等に対する情報公開審査会への諮問の仕組みは,法令を巡る政府間関係の観点からも興味深い答申.個人的な関心としては,やはり,文部科学事務次官及び文部科学省初等中等教育局長から発出された,全国調査に関する通知に対する同会としての判断にある.
答申を見てみると,同会では「実施機関が大臣からの授権の根拠としているのは文書決裁規則であるが,これは文部科学省の総括的な内部規定であり,具体的にどの事務が事務次官決裁事項に当たるか不明」(6頁),そして「全国調査事務は法定受託事務ではなく,文部科学省が実施機関へ協力要請し,実施機関がこれに応じたもので,国と実施機関の間に特に明示の契約等があったものではない」(6頁)として,「本件公文書が条例第9条第2項第1号に該当するには,全国調査通知に,条例の開示義務を上回る,法的根拠等に基づく実施機関に対する拘束力が必要と考えられるが,以上を勘案すると,同通知に当該拘束力があるとは認められない」(6頁)との見解を示す.明快,分権的な法令解釈(いや,同通達が法令なのかという疑問もあるが).
もちろん,同見解が「波及」し,他の都道府県においても,同見解に「右に倣えで落ち着き,自治を選べない」ことも想定される.ただ,自治事務であればこそ,実際に開示するか否かは各自治体での判断とも思う.