文部科学省が来年度以降に実施する全国学力テストについて、鳥取県教育委員会は十四日、市町村別、学校別結果を県情報公開条例を改正した上で開示することを正式に決めた。学校別結果が公表されないよう請求者への使用制限を設けた条例改正の当初案は見送り、「児童らの心情への配慮」などの責務にとどめる修正案を示した。二十二日に結論を出す。
 県教委事務局が示した修正案は、請求者に「特定の学校や学級が識別できる方法」でのデータの公表や提供を禁じる当初案を見直し、こうした方法での公表や不特定多数への提供をしないなど児童らの心情に配慮を求める内容。当初案では「制限付き開示」としていた表現を「開示を受けた者の責務」に緩めた。市民団体などから「表現の自由や知る権利を侵害する」などと批判が相次いだため、制限を断念した。
 委員からは「(制限から)責務にしたとはいえ、受け取った情報の使い方を具体的に指示するのは憲法違反ではないか」との指摘もあった。二十日締め切りのパブリックコメントなどを踏まえて二十二日の臨時委員会で最終案を決める。条例改正案は二十五日に開会する十一月定例県議会に提案される。県教委は八月、県情報公開審議会の答申を覆し二〇〇七、〇八年度結果の非開示を決定したが、原則公開の県条例に従えば開示せざるを得ないと方針転換。先月三十日に条例改正を経て開示する方針を固めた。

同記事では,鳥取県教育委員会において,来年度以降実施される全国学力テストに関して,同県の情報公開条例を改正し,市町村別・学校別結果を開示する方針を決定したことを紹介.同記事は,7月10日付の本備忘録8月6日付の本備忘録8月13日付の本備忘録10月31日付の本備忘録でも取り上げた記事群のその後.
改定案の内容としては,毎日新聞の報道によると,現在の同県条例に規定されている「10人以下の学級のデータを除いて開示」とされる規定を,全国学力テストにも適用すること,情報開示を受けた者の「責務」とすること,学校や学級を識別できる方法で公表すること,不特定多数の者に提供しないこと,児童らの心情への配慮・序列化や過度の競争が生じないような配慮等が記載されること*1がその内容.改定案としてあった使用制限は「見送り」,取りまとめられた模様.
10月31日付の本備忘録でも,少し触れた,同県における情報公開条例の改正過程についての疑問(所掌部署である同県総務部県民室と,同記事のように修正案を審議している教育委員会との関係)は,その後も晴れないまま.ただ,上記毎日新聞の記事を執筆されている,同社鳥取支局の宇多川はるか記者によるレポートを拝見すると(同事案に関して,その背景・経緯とその構造をよく理解できる,非常に優れたケースレポートです),「県政策法務は「県教育委が知事部局所管の条例に改正を要請した例は聞いたことがない」としている」とあり,下名の疑問も何となく融解されたものの,ただ,「知事は県教委からの提案を受けて条例を見直す考えを再三示している」*2ともある.同案件は,知事からの意向を受けて,教育委員会において審議されたと理解することが適当なのだろうか.これはこれでまた興味深い.今後,執行部側の対応,そして,議会審議の様相も要経過観察.

*1:毎日新聞(2008年11月15日付)「全国学力テスト:成績、第三者提供を禁止せず 学校別開示を決定−−鳥取県教委

*2:宇多川はるか「教育的配慮は県条例を上回る?鳥取県国学力テスト非開示決定」『地方自治職員研修』第41巻No.11,通巻579号,2008年11月号,43頁

地方自治職員研修 2008年 11月号 [雑誌]

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