文化や学術、スポーツなどで優れた実績を収めた意欲や行動力を県政に生かしてもらおうと、県は来年度実施の県職員採用1種(大学卒業程度)試験から特別枠を設ける。県人事課によると全国で4県目、近畿では初めてという。
仁坂吉伸知事が18日の会見で発表した。特別枠は一般行政職が対象で、従来の募集40〜50人の中で、1割程度を想定。仁坂知事は「筆記試験だけでは限界を感じていた。何かに打ち込んできた根性が他の職員の刺激になり、全体レベルも上がるのでは」と期待を込めた。県によると、近年、採用試験では人物性を重視。1次の筆記試験より、2次の論文・面接試験の配点が高い。これまで1次の筆記試験で定員の2倍程度まで選抜していたが、本年度から3倍程度にまで拡大した。特別枠受験は▽高度な語学能力▽社会貢献経験▽国際、全国レベルのスポーツ大会での優秀な成績▽分野を問わず人に誇れる実績などを持つ人が対象。1次では筆記試験に、実績や培った能力についての自己アピールの評価が加わる。配点基準などは県人事委員会と今後協議するという。2次試験は同じ条件で行う。仁坂知事は2015年開催の和歌山国体に向けた選手強化目的については否定。「採用は30〜40年の設備投資と同じで、県のために働ける人を人事委で判断してもらいたい」と話している。教員や警察官A(大学卒程度)の採用でも特別枠設置を検討しているという

同記事では,和歌山県において,来年度実施の県職員採用において,「特別枠」を設けることを紹介.詳細に関しては,同県HPには現在の所未掲載のようであり,確認できず.残念,
同記事によると,「特別枠」では,語学能力,社会貢献,スポーツ大会等の成績等が対象となり,「何かに打ち込んできた根性」に基づき審査されるとのこと.同取り組み,その「根性」云々はその測定は困難な部分も残るかと思われるが,見方次第では,1月12日の本備忘録でも取り上げた「メリット・システム(成績主義)の徹底」の事例の一つとも言えなくもないか.
ただ,「特別枠」による採用が一般行政職とすると,採用後の異動管理等をどのように想定されているのかが,気になるところ.6月25日付の本備忘録でも取り上げた「社会人・中途採用」,「第2新卒採用」者の採用経路に関する事案と同様に,入口部分では同取り組みのように「特別枠」を設けておいても,「我が国では個人名は組織の中に埋没している」*1なかでの,異動管理に関する慣行が維持されたままであると,将来的には「特別枠」に関連しない職に付くことにもなり,採用時の成績と職との間での齟齬が生じ,同枠の意義がよく見えなくなる(特に,「特別枠」採用者のスラック化?)蓋然性も高いようにも思われる.
2007年11月19日付の岡山日日新聞でも報道されていた岡山市職員の池山直選手*2のような事例があるものの,スポーツ大会等の成績に関してはやや難しい部分もあるのかとも思われるが,語学能力等の資格や社会貢献等の活動に関しては,11月9日付の本備忘録でもみた「公務員ハンター」の如く,採用後の職員の自主活動を承認し,支援*3することで,一定程度確保できる特性とも思わなくもないが,どうなのだろうか.

*1:大河内繁男『現代官僚制と人事行政』(有斐閣,2000年)185頁

現代官僚制と人事行政 (上智大学法学叢書)

現代官僚制と人事行政 (上智大学法学叢書)

*2:岡山日日新聞(2007年11月19日付)「「大仕事やった」女子ボクシングWIBA世界ミニマム級王座奪取池山さん市職員と偉業両立

*3:渡辺聰子,アンソニー・ギデンズ,今田高俊『グローバル時代の人的資源論』(東京大学出版会,2008年)173頁