横浜市にある小中高の市立学校計約500校で2010年度から約30年ぶりに児童や生徒によるトイレ掃除が復活する。市教育委員会が「公共心や規範意識をはぐくみたい」と決定。市民の受け止め方もおおむね好評だが、現場では衛生面の不安のほか、教員からは「掃除の仕方が分からない」との戸惑いの声も。一部の小学校では昨年末からモデル実施。ビデオを用意するなど手探りの取り組みが始まった。
 昨年12月、市立南小(南区)。放課後にマスクやゴム手袋を着けた児童や教員が緊張した表情でトイレに並んだ。モデル校として同月から小学5、6年生によるトイレ掃除が毎日、始まった。教員らも事前に校務員の掃除を撮影したビデオを見て「学習」。初日は床を掃いたり、柄付きブラシで便器をこすったりして約20分で終了。トイレ関連企業7社で構成する「学校のトイレ研究会」(東京)が昨年6月に全国324の自治体に実施したアンケートでは、児童、生徒がトイレ掃除に参加している自治体は小学校で95%、中学校で97%。今では例外となった横浜でも、もともと児童、生徒がやっていたが、「1975年ごろから徐々に校務員が担当するようになった」(市教委)。

同記事では,横浜市における市立の小・中・高等学校において学生によるトイレ清掃が開始されたことを紹介.2008年11月6日付の本備忘録で取り上げ,下名の個人的周辺でも話題となった記事のその後.
同記事でも紹介されている「学校のトイレ研究会」による2008年6月に実施された調査結果(対象:全国1,873教育委員会,回答数:324教育委員会(回答率:17.3%))を拝見すると,トイレの清掃担当者は,小学校では「児童のみ」が53.0%,中学校でも同じく「児童のみ」が同じく53.0%と大半は児童によって清掃されている様子を窺うことができる*1.同会HPを拝見すると「日常清掃」の方法についても紹介*2.同記事には「教員からは「掃除の仕方が分からない」との戸惑いの声」との紹介もあるが,各先生方もまた,同市出身で,トイレ清掃が未経験の世代の方が大半なのだろうか.よく分からない.
ただ,学生による「トイレ清掃」という「技能」が一度失われてしまうと,その「技能形成」を図るには,従来に蓄積されてきたスキルとインテリジェンスの双方を用いた,「状況的実践」*3が試みられることが分かる,興味深い事例.

*1:学校のトイレ研究会HP(お役立データ:全国自治体を対象にしたアンケート調査結果)「清掃担当

*2:学校のトイレ研究会HP(清掃・メンテナンス)「日常清掃

*3:松本雄一『組織と技能』(白桃書房,2003年)228頁

組織と技能―技能伝承の組織論

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