京都市の新景観政策による屋外広告の規制強化で、建物から道路の敷地上に突き出た看板が今後、制度上の猶予期間を過ぎて完全に撤去された場合、市が看板設置料として得ている年間収入が約3000万円減る見通しであることが、8日までに分かった。財政難の中、収入減は痛いが、「景観を守るためには必要な措置」としている。
 市では道路法に基づき、市道府道上に突き出た看板は道路上空の占用料として、市街化区域では看板1平方メートルにつき年額7200円、その他の地域で3600円を看板設置者から徴収している。市全体で毎年約1億円の収入となっている。
 しかし、2007年9月から導入した新景観政策で、河原町通烏丸通など景観に配慮する幹線道路では「突き出し看板」を禁止。すでに設置済みの看板も14年8月末までの猶予期間内に自主的に撤去しなければならない。
 市によると、この撤去対象となる突き出し看板が約1200個あり、占有料は毎年約3000万円。この収入が規制強化でなくなる見込みだという。
 現在、突き出し看板は店の改装などに合わせて順次撤去されているといい、市街地景観課は「看板撤去で減収になっても景観が改善させる。市の魅力が増し、観光客が増えれば、結果的に増収となる」としている。

同記事では,京都市における「新景観政策」内の屋外広告物規制による「突き出し看板」の禁止に伴い,同市では年間約3,000万円の収入減となる見込みであることを紹介.
同記事を拝読すると,「景観」という政策領域は,そもそもが「効果ラグ」*1が内在化した政策領域であるためか,本来想定される効果は早々には顕在化しないものの,同政策において用いられる手法が,直接規制として整備されることで,意外な「外部効果」は,短期的に顕在化することが分かる.興味深い.同市では,このような長期的効果(利益)と短期的効果(利益)との間でのトレードオフ関係には区切りを付けて,長期的効果(利益)の実現を推進する判断にはあるものの,同市が2008年12月に設置された「京都市景観政策検証システム研究会」*2の審議状況については,現在のところ把握できないものの,これらの効果を含めた検証が行われるのだろうか.
景観政策に(特に,そのなかの景観計画)おいては,一般的に,「具体的な数値がにわかに決定できない項目がある場合」もあるとされる.その場合には,「とりあえず抽象的な文言で規定しておいて効力自体は発生」させておき「確定する部分をもとに届出・勧告ができる」ようにしておき,「それ以外の部分については議論を継続し,決定がされたときに計画を改定して対応する」という「二段階ロケット方式」*3が提唱されることもある.同政策の効果という観点からは,長期的な利益を得るためには,遺失利益を含みつつの,「二段ロケット方式」の状況にあるものと再認識.

*1:畑農鋭矢・林正義・吉田浩『財政学をつかむ』(有斐閣,2008年)19頁

財政学をつかむ (テキストブックス「つかむ」)

財政学をつかむ (テキストブックス「つかむ」)

*2:京都市HP(都市計画局各課の窓口景観政策課広報資料)「京都市景観政策検証システム研究会の設置について

*3:北村喜宣『分権政策法務と環境・景観行政』(日本評論社,2008年)228頁

分権政策法務と環境・景観行政

分権政策法務と環境・景観行政