県は二十七日、県内大学から県政にかかわる政策について提案を募集し、県と大学が協働で実施する「大学発・政策提案制度」を創設したと発表した。四月一日から提案を募集し、採択した提案は二〇一〇年度から実施する。県によると、知的資源の活用が目的で同様の制度は全国初という。
 短期大学、大学院大学を含む県内に所在する大学が対象。実施期間は原則として単年度で、事業費は一件につき二千万円まで。政策分野は、産業・労働や福祉、まちづくりなど七分野。八月に公開コンペを開き、採択する提案を決定する。最大五件程度という。五月三十一日締め切り。問い合わせは、県政策部総合政策課045(210)3052。

同記事では,神奈川県において,「県内大学」からの政策提案制度を創設したことを紹介.来年度から募集を開始し,2010年度から実施する予定とのこと.制度内容及び一連の手続等を確認しようと同県HPを拝見するものの,現在は未掲載の模様,残念.
同記事のみの情報のため,制度内容については不確実ではあるが,同制度の対象主体として,同記事にある「県内大学」「県内に所在する大学」というのは,本部を設置する大学が対象となるのだろうか,又は,キャンパスがあれば*1同制度の対象となるのだろうか(そもそも,下名個人的には,「県内」に限定する理由がいま一つ整理できなかったりもしますが).同県では,同種の制度として「県民からの政策提案制度」*2を,2007年度から設けており.7事業*3が実施されている.この「県民からの政策提案制度」の「応募要件」としては,「県内に在住又は在勤・在学している方」「県内に事務所又は活動場所を有するNPOやその他の団体」*4ともあることからすれば,大学が一重に同県に対して政策提案を行うことが目的とすれば,「県民からの政策提案制度」を用いることが可能とも考えられる.
恐らくは,同制度の場合,提案後,採択され,その実施を含めて「協働」を想定されており,この一連の協働作業が同制度の特徴であるかのようにも考えられる.ただ,2008年6月11日付及び2008年9月14日付の両本備忘録でもあげた「提案」「選定」「契約」の一連の流れとその断続性への配慮の取り組みから考えてみると,確かに,選定された提案主体が,実施主体として同県と(随意)契約することは一貫としており,事業実施が財源とともに保障されることで,提案に対する誘因構造が配置された仕組みとも考えられなくはないものの,「協働という観念は,協働の公正な条項の観念を含んでいる」*5と捉えるならば,必ずしも,提案主体と実施主体が同一である必要性はなく,提案事業を選定後,別途,実施主体を再度募集するという手続きもまた想定される.後者のように,制度的に,提案主体と実施主体が異なる可能性がある場合には,対象の範疇もやや広めに捉えることも一つの方策とも考えられなくもないがどうなのだろうか.考えてみると興味深い制度.要観察.

*1:同県内にキャンパスのある大学としては,次の通り.神奈川県生涯学習情報センターHP「神奈川県内にキャンパスがある大学一覧 (75大学・50音順)

*2:神奈川県HP(くらし・交流(生活と環境)県民の声)「あなたのアイデアを県政に!「県民からの政策提案制度」

*3:神奈川県HP(くらし・交流(生活と環境)県民の声あなたのアイデアを県政に!「県民からの政策提案制度」)「採択提案の概要

*4:神奈川県HP(くらし・交流(生活と環境)県民の声あなたのアイデアを県政に!「県民からの政策提案制度」)「募集案内

*5:ジョン・ロールズ『公正としての正義 再説』(岩波書店,2004年)11頁

公正としての正義 再説

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