福岡市は21日、地域の自治協議会などを対等なパートナーとして位置付け、街づくりを行うよう意識改革を進める「『コミュニティーとの共働』推進本部」(本部長・吉田宏市長)を設置し、第1回会議を開いた。
 同市は2004年度、町内会長などが市の特別職職員となっていた町世話人制度を廃止し、より地域の主体性を高め、福祉や防犯、育児、清掃などの課題に小学校区で取り組む自治協議会制度を導入。各区役所に地域支援部署と校区担当職員を置いた。だが、06年度から自治協制度を検証した第三者委員会は「『地域は市の下部組織』との意識が双方に残っている」と指摘していた。同本部は市職員の意識改革に向け、全庁LAN(構内情報通信網)活用や手引書の作成により、自治協制度の理解を深める研修を実施。これまで地域に協力依頼していた「市が取り組む大型イベントの広報」などの事業については、廃止も含めてあり方を再検討する。
 一方、対等なパートナーとして地域の主体性もより高めてもらうため、年3回ほど多様な自治活動を紹介する「コミュニティー通信(仮称)」を発行し、フォーラムも開催。7月に第三者委員会を設置し、効果を確認していく。

同記事では,福岡市において.2004年度に「町世話人制度」に替わり設置された「自治協議会制度」について,そのあり方を再検討する方針であることを紹介.同市の町世話人制度については,同市HPを参照*1
1947年5月3日に公布・施行された政令第15号では,「従来の町内会・部落会,その後継団体や類似団体そのものを解散させることによって,市区町村などの行政機関が,町内会・部落会のような組織を利用して行政事務を処理することを不可能にしようとした措置」がなされ「個々の住民が直接に市区町村と関係をする仕組みに改め」*2られた.これにより「行政事務はすべて市区町村で処理する仕組みに改める」(同頁)ことにはなるものの,「三月四日通牒」により「町内会長や部落会長などから引継いだ行政事務を処理するために,市区町村は駐在員制度を設置することができる」(同頁)ともされた.更には,「配給」については,「それまでのように町内会を通じないで,個々の消費者に対して行うこと」(7頁)として,「廃止する隣組程度の区域の代表者に連絡することができる」(5頁)とされた.
同市の同制度については,このような背景のものと,「町内会に代わり町内の婦人会に協力を求め.50世帯に一人程度の「世話人」を選任し,食糧の配給事務などを行ってき」*3たことに,制度の淵源がある.その後,政令15号が廃止されたことを受けて,町内会が設置されることとなり,同市では「世話人と町内会(自治会)の役割が曖昧」になったとして「昭和28年6月に「福岡市町世話人規則」を制定し,町世話人の位置づけを明確化」(7頁)された.その後,同制度を通じて,「広報に関する事務 (市政だより,市議会だより,その他広報物の配布)」「防災に関する事務 (災害発生状況の調査,被災状況調査等)」,「衛生に関する事務 (保健・衛生関係書類等の配布)」,「特に指示する調査に関する事務 (受持世帯数調査,各種統計調査)」,「前各号のほか,市民に関係ある事項の周知徹底 (選挙公報配布等)」を行ってきたものの,「自治会・町内会等の自治組織と行政が対等のパートナーとして連携を強化」を前提とした場合には,「市民と行政とのパイプ役としての町世話人の必要性,町世話人業務の委託の可能性など,町世話人制度の抜本的な見直しを行う必要」(12頁)との方向性が示され,同制度が廃止されている.
一方で,「自治協議会」については,「校区の「自律経営」を担っていくこと」*4を目的として,「小学校区」単位に設置された組織であり,「校区で組織されている全自治会・町内会のおおむね8割の団体」の参加と,「校区交通安全推進委員会」「校区体育振興会」「校区女性協議会」「校区青少年育成連合会」「校区ごみ減量・リサイクル推進会議」「校区献血推進協力会」「校区衛生連合会」「校区自主防災組織」の「8団体すべての参加」(4−5頁)が求められている.同制度の特徴の一つには,「コミュニティでのさまざまな事柄を,校区住民の発意と責任で解決できる」という効用以外にも,8団体参加が前提となっていることとも関連し,制度的には「校区の団体毎に交付している以下の9つの補助金を一つにまとめ」(6頁)ることにより,いわゆる「包括補助金(block grant)」*5に準じた仕組みが採用されていことにもある模様.
ただ,同市では,同制度もまた検証した結果,同記事の取り組みを本年度より開始された模様.取り組み内容については,同市HPを参照*6.「制度は変われど,地方自治は変わらず」ともいえるのか,又は,「自治促進」もまた「永遠に未完」*7なのだろうか,

*1:福岡市HP(コミュニティ・地域の活動・NPO・ボランティア市が目指すものコミュニティの自律経営推進に関する提言)『コミュニティの自律経営推進に関する提言』(2003年5月)7−8頁

*2:高木鉦作『町内会廃止と「新生活共同体の結成」』(東京大学出版会,2005年)167頁

町内会廃止と「新生活協同体の結成」

町内会廃止と「新生活協同体の結成」

*3:福岡市HP(コミュニティ・地域の活動・NPO・ボランティア市が目指すものコミュニティの自律経営推進に関する提言)『コミュニティの自律経営推進に関する提言』(2003年5月)7頁

*4:福岡市HP(コミュニティ・地域の活動・NPO・ボランティア市が目指すもの福岡市のコミュニティ施策のあらまし)『コミュニティの自律経営に向けて』(2005年4月)4頁

*5:北村亘「強制されたアカウンタビリティ:イギリス」持田信樹編『地方分権と財政調整制度』(東京大学出版会,2006年)135頁

*6:福岡市HP(コミュニティ・地域の活動・NPO・ボランティア市が目指すものコミュニティに関する平成21年度からの取り組み)『コミュニティに関する今後の取り組み』(2009年4月)

*7:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)54頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)