横浜市監査事務局は二十日、市民参加型で実施している「市民の目」監査の結果を公表した。喫煙禁止地区の案内表示の見直しなど、十四件の指摘や改善要望、意見を行った。
二〇〇八年度のテーマは「美しい街へ〜おもてなしの心〜」。横浜開港百五十周年の年を迎え観光客の増加も期待されることから、街の美化分野を対象とした。改善要望事項の一つ「ポイ捨て・喫煙 禁止の取組」は、市が条例で定める喫煙禁止地区の案内板に日本語以外の表記がなく、海外からの来訪者のために外国語でも案内すべきだ―というもの。喫煙禁止地区での喫煙者やポイ捨てを減らすためには「PR活動や表示を増やし周知を徹底する」(30%)という市民の意見を反映させ、三月に新たに指定された地区には四カ国語での看板が設置された。「市民の目」監査は〇七年度に導入され、毎年発行される市民意識調査を参考にテーマを選定。監査結果に市民意見を反映させるため、監査で把握した課題に関する市民意見を、区役所や窓口などで募集している。

同記事では,横浜市における,行政監査の結果を紹介.同市では,同参加を市民参加型で実施しているとのこと.
同市HPを拝見*1すると,「市民の目線」から「事務事業の抽出や監査の着眼点を定め監査」を実施し,「把握した取組や課題等に対する市民意見募集」(「監査委員アンケート」)を行い,その「結果を反映させた監査結果とする」*2とされており,具体的には,「監査テーマ」の選定と,そのテーマを受けて抽出された「監査実施項目」への監査を通じて把握された内容に対しての意見公募という,2回の市民意見を把握する機会が設けられている.
全国都市監査委員会による,2008年6月30日現在での調査結果では,201都市での実施*3と,やや限定的に用いられている行政監査.「監査は単にテクニカルなタスクの集合ではなく,組織環境の中に存在するプログラム的な理念,つまりある種のコントロールスタイルや組織の透明性を約束する理念」*4との認識からすれば,監査委員と市民参加とを組み合わせにより「信頼の回復」*5にも結びつく可能性をもつ取り組み.同市では,行政監査により行政評価が実施*6されており,確かに両者が同一主体で実施されることで,「監査と評価の目的の取り違え,両者の役割の重複と混乱を招き,本来の監査業務が弱まり,有効性や効率性を追求しているが非違を見過ごしてしまう恐れ」*7との危惧も指摘がなされはいるものの,実際に同市の場合は,監査業務自体への影響はどのようになっているのだろうか.こちらも興味深い観察課題.

*1:横浜市HP(監査委員)「行政監査結果

*2:横浜市HP(監査委員行政監査結果)『平成20年度監査報告「市民の目」監査(行政監査)結果報告』2−3頁

*3:全国都市監査委員会HP(会員実態調査の集計結果)「行政監査実施都市数

*4:マイケル・パワー『監査社会』(東洋経済新報社,2003年)170頁

監査社会

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*5:菊地端夫「イギリス行政改革における市民の信頼回復の取り組み」『会計検査研究』第39巻,2009年3月号,81頁

*6:横浜市HP(監査委員行政監査結果)「平成20年度行政監査(評価)結果

*7:山谷清志『政策評価の実践とその課題』(萌書房,2006年)57頁

政策評価の実践とその課題―アカウンタビリティのジレンマ

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