首相の諮問機関の第29次地方制度調査会(委員長・中村邦夫パナソニック会長)は16日、「平成の大合併」を10年3月末で、「一区切りとすることが適当」という答申をまとめた。これを受けて政府は、財政支援策をテコに10年間で市町村をほぼ半減させた合併運動の旗を降ろす。今後は、合併で住民の声が行政に届きにくくなったなどという意見を踏まえながら、広域連携重視の自治体政策へと転換する。
 調査会は2年間にわたり、学識経験者や国会議員、自治体代表ら30人が「市町村合併を含めた基礎自治体のあり方」などを審議してきた。99年から政府が強力に推し進めてきた合併を、現行の特例法の期限が切れる10年3月末以降も続けるのかどうかが焦点だった。
 調査会は、99年に3232を数えた市町村が来年3月には1760に減ることで「合併は相当程度進捗(しんちょく)した」と判断。地方分権の受け皿づくりも進みつつあると合併効果を評価した。同時に住民の声が行政に届きにくくなる、伝統・文化の継承、発展が危うくなるといった「懸念が現実化している地域もある」ことも指摘した。そのうえで、財政優遇策が縮小するとともに頭打ちになっている合併の現状を踏まえ、「従来と同様の手法を続けていくことには限界がある」と明記。特例法の期限切れとともに「一区切り」にすることを打ち出した。
一方で、1万人未満の小規模自治体が471あること、合併をめざす自治体がなお多いことなどを課題にあげて、今後の対応策を検討。合併をしやすい制度を残しつつも、「事務の共同処理による周辺市町村間での広域連携や都道府県による補完」といった「多様な選択肢」を用意して、市町村が選べるようにすべきだという考え方を示した。答申を受けて、政府は複数の市町村が会計課や観光課といった「内部組織」、教育委員会などの「事務局」、保健所などの「行政機関」を共同設置しやすくするための法改正に取り組む。
 調査会は「議会制度のあり方」と「監査機能の充実強化」も答申した。議会については(1)定数の法定上限の撤廃(2)会期制を前提としない弾力的な議会運営の促進(3)議会に経営状況を報告する第三セクターの範囲の拡大などが柱だ。

政府の第29次地方制度調査会(首相の諮問機関、会長・中村邦夫パナソニック会長)は16日午前の総会に、基礎自治体(市町村)と監査・議会制度のあり方に関し、「平成の大合併」を2010年4月以降は打ち切ることなどを盛り込んだ答申案を提示した。
 同日夕に麻生首相に答申する。政府は答申を踏まえ、合併誘導策をやめるための合併特例法改正案などを来年の通常国会に提出する方針だ。平成の大合併は、1999年から政府が取り組んでいる市町村合併推進運動だ。99年3月末に3232だった市町村数は、10年3月には1760まで減少する見込みとなっている。
 答申案では大合併を「地方分権の受け皿としての行政体制が整備されつつある」と評価した。一方で、「周辺部が取り残される」などの問題点を挙げて、このまま進めることには「限界がある」とし、現行の合併特例法の期限である来年3月末で一区切りとするのが適当と明記した。ただ、自主的に合併を模索する市町村には、一体的な振興を行えるよう国や都道府県が10年4月以降も支援をすべきだとしている。また、合併が進まなかった小規模市町村が福祉、保健分野などの事務処理体制を維持する方法として、各市町村の判断で都道府県が事務を代行できる仕組みを検討するよう求めた。

首相の諮問機関「第29次地方制度調査会」(会長・中村邦夫パナソニック会長)は16日午前、市町村合併を推進する方針を見直し、新合併特例法の期限が切れる10年3月末で「平成の大合併」を打ち切るべきだとする答申をまとめた。答申は、合併しなかった小規模市町村が、議会事務局などを共同で設置できるようにする「広域連携制度」の検討も求めている。
 平成の大合併が始まった99年3月に3232あった市町村数は、10年3月には1760まで減少する見込みで、答申は「合併は相当程度進ちょくした」と指摘。合併で住民の声が行政に届きにくくなっている地域もあるとし、「従来と同様の(合併推進の)手法を続けるには限界がある」と結論づけた。答申を受け、総務省は正式に打ち切りを決定する方針だ。
 打ち切り後は、広域連携制度のほか、小規模市町村の一部の事務を都道府県が肩代わりできる仕組みを検討する必要性などにも触れている。平成の大合併は、99年7月の旧合併特例法の改正で、合併特例債の発行など市町村への財政優遇措置が盛り込まれたことから、一気に加速した。【石川貴教】

地方制度調査会(首相の諮問機関)は16日、都内で総会を開き、1999年から続いている「平成の大合併」を2009年度限りで終了することを柱とする答申をまとめた。同日午後、麻生太郎首相に提出する。
 答申は平成の大合併の成果として行財政基盤を強化したり、福祉や保健などの行政サービスを充実したりした点を指摘。小規模なまま残った市町村を支えるため、今後は「定住自立圏」など近隣の自治体が協力し合って行政サービスを維持する仕組みづくりを求めた

政府の第29次地方制度調査会(首相の諮問機関、会長・中村邦夫パナソニック会長)は16日、国が財政支援などで促した「平成の大合併」を、現行合併特例法が期限切れとなる2010年3月末で「一区切り」とするよう求める答申をまとめた。小規模市町村に対しては連携促進策、自治体の監査や議会制度については機能強化策を打ち出した。同日夕、麻生太郎首相に提出する。
 総務省は答申に沿って新合併特例法や地方自治法改正を検討し、2010年の通常国会に関連法案を提出する方針。平成の大合併により、市町村数は1999年3月の3232から、10年3月には1760へ大幅に減少する見込みで、答申は今後の合併推進について「限界がある」と認めた。ただ、人口1万人未満の小規模市町村が471に上る現状の中で、合併自体は「行財政基盤強化の手法として今後も有効」と評価。自主的に合併する市町村を新合併特例法で支援するよう求めた。 
 一方、合併しない小規模市町村の新たな広域連携策を提唱したのも特徴。例えば複数の自治体が会計課や保健所などを共同設置することを想定する。自前では困難な事務を都道府県に返上できる制度構築にも言及したが、全国町村会などの反発を受け、今後の検討に委ねた。このほか、外部による監査の導入促進や、議員定数の上限撤廃、議会への報告義務を持つ第三セクターの範囲拡大など、地方分権に伴い必要となる監査や議会の機能強化策も提言した。

 首相の諮問機関である政府の地方制度調査会(会長・中村邦夫パナソニック会長)は16日午前の総会で、1999年から国主導で推進してきた「平成の大合併」について、現行の市町村合併特例法が期限を迎える来年3月末で打ち切ることを柱とする答申案を審議した。総会で答申を決定、同日午後に麻生太郎首相に提出する。
 答申案は、合併できずに残る小規模市町村の住民サービス確保の必要性を指摘、一部の事務を都道府県が補完できる新たな仕組みなどについて「関係者と十分に意見調整し多角的に検討する必要がある」とした。
 一方で「合併は行財政基盤の強化に今後もなお有効」とも指摘。特例法期限後も自主的に合併を選択する市町村を支援する新たな特例法を制定し、旧市町村区域に自治組織を置いて民意を反映する仕組みなどを盛り込むべきとした。平成の大合併の評価として、市町村数がほぼ半減、自治体の規模拡大により高齢者向けサービス向上や職員削減などの成果が出ていると分析。その上で、国の財政支援などで誘導してきた合併推進も、合併しなかったり合併できない自治体が多い実情を踏まえ、来年3月末で合併は「一区切りとすることが適当」と明記した。

以上記事は,昨日,2009年6月16日に取りまとめられた,第29次地方制度調査会答申について,紹介.同日,同調査会の副会長及び専門小委員会小委員長から,諮問された内閣総理大臣へ手交済み.同手交の風景については,首相官邸HPを参照*1.同答申の提出版については,同調査会HP*2及び総務省HP内では把握することができず,残念.
各紙ともに市町村合併に重点を置き報道.これらの報道は,同答申において「平成11年以来,強化された財政支援措置等により全国的に行ってきた合併推進運動も10年が経過し,これまでの経緯や市町村を取り巻く現下の状況を踏まえれば,従来と同様の手法を続けていことには限界がある.したがって,平成11年以来の全国的な合併推進運動については,現行合併特例法の期限である平成22年3月末までで一区切りとすることが適当」(6頁)との判断が示された箇所が根拠.ただ,あわせて「平成22年4月以降は,自主的に合併を選択する市町村に対して必要な支援措置を講ずることが適当」(同頁)ともあり,この「自らの判断により合併を進めようとする市町村を対象とした合併に係る特例法」の具体的な内容としては,「合併の障害を除去するための措置や住民の意見を反映させれるための措置(合併特例区,合併に係る地域自治区等)を定めることが適当」(7頁)ともされている.同答申内の同箇所が予期する「合併の障害」とは,同答申内の別箇所からすれば,「人口規模に大きな差が生じる」「基礎自治体に求められる十分な組織や職員の配置などの事務処理体制や財政基盤を有していない」(5頁)ことが念頭にありそうではあるものの,自主合併の特例法を整備することにより具体的にどのような障害の除去を想定されているのかは判然とはしないようにも思わなくもない.
ただ,この「基礎自治体に求められる十分な組織や職員の配置などの事務処理体制や財政基盤を有していない」という課題に対しては,同答申では,「広域連携の積極的な活用」を提唱していることが特徴.例えば,地方自治法第252条の14にいう「事務の委託」においては,「委託をした普通地方公共団体は,委託のその範囲においてその権限がなくなること」*3とされてきたことから,同答申では「委託団体が事務処理の状況を把握し,受託団体に対して意見を提出しやすくなるよう」(8頁)と,受託者(agency)による,非対称情報のなかでの,その隠れた行動(hidden action)と隠れた知識(hidden knowledge)*4に対しての委託者(principal)によるmonitoringのための「制度改正を含めた検討」の必要性を指摘.
更に,2009年4月15日付の本備忘録でも取り上げた,「内部組織,事務局及び行政機関についても共同設置が進められるよう,制度改正を含めた検討を行うこと」が必要ともされる.上記の朝日新聞では,内部組織としては,「会計課や観光課」等の例示をもって報道.「「内部組織」の共同設置」となると,制度面は勿論のこと,むしろ,人事管理における指揮命令系統を如何に整備されることになるか,法制度改革以上に,共同設置する自治体間での「運営能力」*5次第ともいえそう.
同答申内では,「小規模市町村における事務執行の確保のための方策」として,「必要な行政サービスを安定的に提供することが困難と考えられる小規模市町村があればその選択により,法令上義務付けられた事務の一部を都道府県が代わって処理することも考えられる」との見解を提示しつつも,「こうした方策については,様々な論点や是非についての考え方があり,また,地域の実情も多様であること等から,関係者と十分な意見調整を図りつつ,多角的に検討がなされる必要がある」(9頁)として,いわゆる「漸進」*6の路線を同答申では選択されたといえる.例えば「法律によって市町村のみが処理できるものとされいてる事務」についてもまた,「都道府県が代わって処理する」ことになると,都道府県においても「管理執行の職員」等を「あらたに置かねばならない」(前掲・松本:1172頁)ことからすれば,下名個人としては,上記の「事務の委託」を通じて,各市町村が位置する都道府県側の体制整備状況を勘案のうえ協議を経た後に,対応できるのではないかとも考えなくもないが,それも困難なのだろうか.
重ねて同答申では,2008年3月1日付の本備忘録でも言及した地域自治区の設置上の課題についても,「現行,地方自治法に基づく地域自治区は,市町村の全域にわたって設置されるものとされているが,地域自治区制度の一層の活用を促す観点から,市町村の判断により当該市町村の一部の区域を単位として地域自治区を設置することもできるようにすることについて検討すべき」(10頁)ともあり,全く同感.
同答申,上記の記事群では余り報道されていない,11〜21頁の「第2監査機能の充実・強化」,22〜33頁の「第3 議会制度のあり方」において,更に重要な制度改正案・制度の考え方が示されており,こちらこそが自治行政観察上は必読箇所とも思わなくもないが,その確認については,公表後再読.

*1:首相官邸HP(麻生首相の動き)「地方制度調査会答申の手交

*2:総務省HP(審議会・委員会)「地方制度調査会

*3:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)1172頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*4:Jan-Erik Lane,Public Administration And Public Management: The Principal-agent Perspective,Routledge,2005,58-61

Public Administration & Public Management: The Principal-Agent Perspective

Public Administration & Public Management: The Principal-Agent Perspective

*5:金井利之「自治体の自治運営」『ジュリスト』No.1358,2008年6月15日号,128頁

Jurist(ジュリスト)1358

Jurist(ジュリスト)1358

*6:大杉覚「行政改革と地方制度改革」西尾勝村松岐夫『講座行政学第2巻 制度と構造』(有斐閣、1994年)322〜323頁

制度と構造 (講座行政学)

制度と構造 (講座行政学)