青森県弘前市情報公開・個人情報保護審査会(中林裕雄会長)は24日までに、市監査委員が監査委員会議録などを不開示とした決定に対する弘前市民オンブズパーソンの異議申し立て2件について、いずれも「開示すべきだ」との答申書を、山形一郎市代表監査委員に提出した。
 オンブズパーソンは、2004年6、7月分の監査委員会議録と同年の県都市監査委員会実務研修会の資料が不開示とされたため、市情報公開条例に基づいて05年11月と06年1月に異議を申し立てた。答申書は、会議録の不開示について「(監査委員は)批判の対象になることを恐れているにすぎず、不開示の弊害について合理的な説明はない」と指摘。監査委員が審査会に対しても非協力的で「不開示とする立証責任を放棄した」としている。市監査委員事務局は「近く委員の協議会を開き、対応を話し合う」と語っている。

同記事では,弘前市において設置されている情報公開・個人情報保護審査会が,同市の監査委員に対して,監査委員会議の議事録等の開示を求める答申書を提出したことを紹介.同答申書を確認させて頂こうと思い,同市HPを拝見するものの,同審議会に関する掲載を把握できず,残念.
情報公開・個人情報保護審査会については,伝統的な法的な分析のみならず,自治体行政観察の観点からも,例えば「大量請求」*1への対応等を始めとして種々興味深い課題が多く含んでおり,観察を取り組んでみたいと思いつつも未対応の課題の一つ.
同記事を拝読すると,行政委員会制度に関して,永らく続いている検討課題もまた想起されてくる.行政委員会に関しては,第28次地方制度調査会答申において「社会経済情勢が大きく変化している中で、制度創設時と同様の必要性がすべての機関について存続しているとはいえない状況にある」なか,「すなわち,住民から直接選出された長が責任を持つことが求められているにもかかわらずこの要請を満たすことができない行政分野が生じている状況を改善し,また,地方行政の総合的,効率的な運営や組織の簡素化を図るため」*2,「という見地」から「必置規定の見直しや組織・運営の弾力化を行うべき」*3との提案がしめされているものの,例えば,選択制がその一つではあるが,具体的には改正されない現況のままの部分もあり,現在においても,地方分権改革推進委員会において,主に「地方自治体における行政体制の整備や地方自治関係法制による制度規制の緩和を進める観点から」*4持続的に審議課題として扱われている課題.
ただ,同委員会における同課題に関する課題設定の淵源を,2007年5月に提出された『地方分権改革推進にあたっての基本的な考え方―地方が主役の国づくり―』に求めるとすれば,「自己規律が働く自治体組織の改善等による地方分権改革の推進に応じた行政体制の整備及び確立方策」*5との記載もあり,「自己規律」に重きが置かれていたようにも解することができなくもない.上記の選択制もまた,その根源には規律の問題が根ざしているとも考えられ,同記事を拝読すると,「自己規律」という観点からは,行政委員会の活動に対する統制機構の整備・活性化がまずありきという考え方もできそうか.

*1:中原茂樹「説明責任を果たすための文書管理」村松岐夫・稲継裕昭・財団法人日本都市センター編著『分権改革は都市行政機構を変えたか』(第一法規,2009年)202頁

分権改革は都市行政機構を変えたか

分権改革は都市行政機構を変えたか

*2:総務省HP(審議会・委員会地方制度調査会過去の会議資料)『地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申』(平成17年12月9日)5〜6頁

*3:地方分権改革推進委員会HP(委員会開催状況第84回:2009年5月20日開催)「第84回地方分権改革推進委員会 議事録」17頁

*4:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『第2次勧告 〜「地方政府」の確立に向けた地方の役割と自主性の拡大〜』(平成20年12月8日)43頁

*5:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『地方分権改革推進にあたっての基本的な考え方―地方が主役の国づくり―』(平成19年5月30日)4頁