総務省は2日、国主導で市町村合併を進める「平成の大合併」の旗振り役となってきた同省の「合併推進課」を、来年4月から「市町村体制整備課」に改組することを決めた。政府の地方制度調査会が来年3月末で大合併を「一区切り」とするよう答申したのを受け、市町村間の広域連携の支援に軸足を移す。
 総務省は「名実ともに合併推進の看板を下ろすことになる」としている。合併推進課は2003年4月、自治行政局市町村課から独立する形で設置。合併協議会の設立や、合併後の新自治体を財政的に支援するなどし、平成の大合併を後押ししてきた。新設する市町村体制整備課は、複数の市町村が共同で事務を処理する広域連携の取り組みのほか、4月以降も自主的な合併を目指す自治体を支援する方針だ。
 組織改編ではこのほか、住民基本台帳制度などを所管する「市町村課」を「住民制度課」に改組し、住基ネットワークの運用など住民サービスに関係が深い業務を主に担当させる。また在留期間3カ月超の外国人に住民票を作成する改正住基台帳法が成立したことを受け「外国人住民室」を新設、12年7月までの制度スタートに備える。

同記事では,総務省における,来年度の機構改編の方針について紹介.「合併推進課」を「市町村体制整備課」,「市町村課」を「住民制度課」と改める予定とのこと.
驚きは,後者の名称変更.市町村課という名称は,内務省における「県治局」に置かれていた府県課・郡区課・地方費課の三課のうち,郡区課が「市制・町村制施行後の明治二十三年」*1に市町村課として改めらたことを契機として用いられて以来のもの.ただ,大正11年には「都市課と町村課にわかれ」(64頁)たことで,当時の内務省地方局は三課制(もう一つは,府県課)となり,更に,大正13年には「行政・財務の二課制」(同頁)と改められ,その後,内務省「解体」迄には「市町村課」の名称は用いられてはいなかった.大正13年の機構改編は,「府県・市町村の団体別事務分掌を行政部門別の縦割り組織に改め」(同頁)られたものであり,いわば「統合(総合)的」*2な領域別の内部機構から,「分立(分化)的」な機能別の内部機構へと改組されたことで,内務省の内部機構における領域的な内部機構の喪失とも整理することもできる.
果たして,総務省自治行政局にある領域的な内部機構である市町村課が,その名称を「市町村」から「住民制度」へと改めた場合,住民(制度)もまた一つの「領域」として整理することが適当なのだろうか,住民制度という一つの「機能」に基づく変更と整理できるのだろうか,むずかしいところ.前者であれば,今回の機構改編が,総務省の内部機構における領域的な内部機構の喪失となるのだろうか,興味深い.
また,同課の再編は,組織変動の類型のうち「改称」*3と位置付けることができそうではあるものの,それは,「名称自体の適正さを確保する」ための「改名型」と整理されるのか,また,同記事にも紹介されている「市町村体制整備課」の新設に伴い,「市町村体制整備課」において「広域連携」を分掌されるとなると現「市町村課」の所掌事務からの移管が行われることにもなる(のだろうか).そうすれは,「改称にともなって事務の一部移管を受ける場合」(166頁)である「改称拡充型」(同頁),又は,「部内や課間の再編を伴う場合」(166-167頁)である「再編改称型」(167頁)(単に所掌事務が移管されるのであれば「改称縮小型」なのでしょうか)と整理することが適当なのだろうか.
いずれも分掌次第ではあり,同省組織令*4の改正状況は,要観察.

*1:大霞会『内務省史 第2巻』(原書房,1980年)63〜64頁

内務省史 第2巻 (明治百年史叢書 第 296)

内務省史 第2巻 (明治百年史叢書 第 296)

*2:金井利之「空間管理」森田朗編著『行政学の基礎』(岩波書店,1998年)166頁

行政学の基礎

行政学の基礎

*3:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)166頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*4:総務省HP(所管法令組織・通則)「総務省組織令」(平成12年6月7日政令第246号)