2020年度からの住民税10%減税の実施を発表した杉並区は、過去10年にわたって財政の健全化を進めてきた。今後は区民の税負担を軽減することで、「都内に移り住む住民が杉並区を選んでくれれば、さらに税収が増え、街が活気づく」とそろばんをはじいている。(渡辺光彦)
区はこの10年間で学校給食の民間委託などで職員数を900人以上削減し、外郭団体を統廃合するなどの行財政改革を進めた。同時に、年間予算の約1割に当たる150億円を債務の返済と財政調整基金への積み立てに充て、財政の健全化を図ってきた。
その結果、1999年度に872億円あった区債残高は、昨年度に246億円まで減少し、今年度には179億円になる見通しだ。また、1999年度には19億円しかなかった同基金は、昨年度で223億円まで増えた。こうした中、学識経験者でつくる「区減税自治体構想研究会」(会長=黒川和美・法政大教授)は今年1月、「150億円を積み立て、1・5%の金利で運用していけば、10年後に10%、20年後には15%の区民税減税は計算上可能」とする報告書を区に答申した。区はこれを受け、減税実施に向けた具体的な検討に入っていた。
 区は資金運用にあたっては、安全性の高い国債や地方債で、安定した利回りを確保するとしている。区の試算によると、年収700万円で家族4人世帯の場合、現行制度だと約9万円かかる区民税が、約9000円ほど軽減されるという。山田宏区長は、「低負担、高福祉を目指す基盤を固めたい」としている。

同記事では,杉並区において,区債残高が1999年度の872億円から2009年度は179億円となり,財政調整基金の残高は,同じく1999年の19億円から2008年度には223億円となったことを紹介.
同日付の同紙では,同区の同情況を踏まえて,「減税自治体構想」の実現に向けた方針にあることも報道*1.同構想については,同区HPを参照*2.同日付の朝日新聞の報道では,「来年初めに「減税基金条例(仮称)」案を議会に提出」後,「積み立て」*3開始の予定.同区による着実な資金運用の成果.ただ,同基金の整理,地方自治法第241条第1項にいう基金の2種*4類のうち,減税目的の運用を前提とされる基金は,「特定財源を確保するために設けられる基金」(「財産を維持し,又は資金を積み立てるための基金」)と「一定額の原資金を運用することにより特定の事務又は事業を運用するためもうけられたもの」(定額の資金を運用するための基金)のうち,前者と整理されるのだろうか.要確認.

*1:読売新聞(2009年9月8日付)「杉並区、基金運用益で区民税10%減税へ

*2:杉並区HP(暮らしの情報区民の声と区政の架け橋減税自治体構想)「「減税自治体構想」とは

*3:朝日新聞(2009年9月8日付)「杉並区、住民税減税へ基金創設10年後の実施目指す

*4:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)940頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法