東京都杉並区が静岡県南伊豆町で進めている特別養護老人ホーム(特養)の開設準備が7月中に本格始動する。2018年3月の開設に向け、24日から約50床の区民利用枠の受け付けを始める。都市部の自治体が遠隔地に設ける全国初の区域外特養で、杉並区は高齢化の進展で今後深刻になる特養不足を解決する切り札と位置づける。
 杉並区は直線距離で約130キロ離れる南伊豆町に区の児童向け施設があった縁で、交流を進めてきた。南伊豆町が町有地を特養の用地として提供。約17億円の建設費のうち、3割強を杉並区が負担した。施設名は「エクレシア南伊豆(仮称)」で、社会福祉法人の梓友会(静岡県下田市)が運営する。全体では90床。
 区には区民利用枠について、すでに20件超の問い合わせが来ているという。7月以降、区民向け説明会を開き、区役所内に相談窓口も開設する。
 区域外特養を巡っては後期高齢者医療制度に移行する75歳以上の入居者の医療費負担が問題だった。以前は74歳以下で入居した杉並区民の医療費は、75歳になると区から静岡県に負担が移ってしまっていた。15年の法改正で区が負担し続けられるようになり、特養の開設につながった。
 区域外特養には「家族の絆が弱くなる」などの批判がある。区は泊まりがけで面会できる宿泊室のほか、インターネットを使ったテレビ電話を導入し、家族に配慮する。南伊豆町も敷地内に「健康福祉センター(仮称)」を用意する計画で、健康相談などを受けられる体制を整える。
 杉並区によると、5月時点で区内に約1000人の特養の入居待機者がいる。仮に都心部で1000床の特養を整備するには土地代だけで200億円規模の財源が必要になるという。区は「エクレシアは区内施設に比べ1.5倍のスペースを確保した」と説明。土地代がかからない分をサービスの質向上に充てたと強調する。
 東京都の推計によると、15年度から25年度の10年間で、都内の要介護認定者は56万人から77万人に増加する見通しだ。都内では特養の待機問題が深刻化する可能性が高く、区域外特養を検討する区がほかにも出てきそうだ。

本記事では,杉並区と南伊豆町における特別養護老人ホーム整備の取組を紹介.
2014年12月12日付2016年12月1日付両本備忘録で記録した,同区による同町における区域外特別養護老人ホーム整備の取組.「7月から入居者の申し込み」*1と紹介されていた同施設.本記事によると同月「24日から約50床の区民利用枠の受け付け」を開始する模様.「遠隔型連携」*2による同施設の整備.応募状況は,要確認.

*1:杉並区HP(区長の部屋区長記者会見資料平成29年度区長記者会見)「区長記者懇談会 」(平成29年5月22日)6頁

*2:千葉尚樹「東京都杉並区の遠隔型連携に関する取組み」公益財団法人日本都市センター『自治体の遠隔型連携の課題と展望 新たな広域連携の可能性』(公益財団法人日本都市センター,2017年)21頁

自治体の遠隔型連携の課題と展望-新たな広域連携の可能性-

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  • 作者: 横道清孝,伊藤正次,西田奈保子,辻一郎,木村俊介,高田秀和,檜槇貢,千葉尚樹,公益財団法人日本都市センター
  • 出版社/メーカー: 公益財団法人日本都市センター
  • 発売日: 2017/05/12
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