京都市の外郭団体役員のうち、職員とOBが全体の3割近くを占める142人に上り、有給の常勤役員45人のうち36人と8割を占めていることが、1日の市議会一般質問で明らかになった。外郭団体が「天下り先」になっている実態が浮き彫りになり、指摘した市議は「市民感覚では優遇だ」と改革を訴えた。
 日置文章市議(公明)と市によると、1日現在で財団法人や三セクなど34の外郭団体があり、役員524人のうち、27%の142人が市幹部(100人)と職員OB(42人)だった。特に有給の常勤役員に就く割合が高く、45人中36人と8割を占める。うちOBは29人で、事実上の天下りポストになっている。
 市会で日置市議は「外郭団体は民間の知識を活用して市政と連携するのが目的。職員とOBが多すぎ、職員優遇と思われる」と改善を求めた。これに対し、由木文彦副市長は「行政経験を社会で活用するという観点から人材を紹介している」と、外郭団体の求めに応じて退職者を紹介していることを認める一方、2005年度に比べて職員やOBの役員就任数は89人減り、OBには外郭団体の退職金を不支給としている点などを強調。「公務員の再就職に厳しい目線が向けられている。市民感覚を大切にしながら適正に行う」と弁明した。

同記事では,京都市におけるいわゆる「外郭団体」の職員の現状を紹介.同市における「外郭団体」の現状については,同市HPを参照*1
「定義は確定していない」*2ともされる「外郭団体」.同記事では,同市の「外郭団体」は「34団体」と紹介されているものの,同市HPでは,「平成21年4月現在」では「35団体」であったことが分かる(下名の数え方が適切ではないのでしょうか.または,この間,1団体は統廃合されたのでしょうか).各団体に対する同市からの「出資率」を見てみると,100%の出資率が19団体,50%以上100%未満の出資率が9団体,25%以上50%未満の出資率は7団体となる.
これら出資比率を考慮すると,機能的にも「混合(hybrid)」な組織に対しては,地方自治法第243条の3第2項にいう「毎事業年度,政令で定めるその経営状況を説明する書類」及び,同市による「経営状況及び経営評価結果を説明する書類」*3の提出とともに,例えば,出資側からの「任用(appointment)」もまた「統制(bureaucratic control)」*4手法の一つとなり,組織規律の確保が期待される蓋然性も想定されなくもない.そのため,同行政現象は,2008年8月6日付2009年7月5日付同年7月29日付同年12月2日付の各本備忘録で言及した,(出資)自治体職員における退職管理としての再就職論(「天下り」論)として収斂されるに止まらず,もう一方で,出資比率に対する「統制(bureaucratic control)」という観点からの手法整備としても考慮することも不可欠ともいえそう.
ただ,もちろん,その場合であっても,その統制主体して任用される方の属性や任用された方の職員数と「統制の範囲(span of control)」との適合性の考慮,そして何より「「はじめに職員ありき」の組織形成」*5への回避等を踏まえて,例えば,「どじょうの水槽の中に熱帯魚が迷いこ」*6むことになる「混合(hybrid)」な統制形態の可能性に関しても,検討の残余部分があるようにも考えられる.悩ましい論点.

*1:京都市HP(市の組織行財政局財政課外郭団体の指導調整)「外郭団体一覧

*2:笠京子「省庁の外郭団体・業界団体・諮問機関」『講座行政学 政策と管理』(有斐閣,1995年)83頁

政策と管理 (講座行政学)

政策と管理 (講座行政学)

*3:京都市HP(市の組織行財政局財政課外郭団体の指導調整)「平成21年度外郭団体の経営状況及び経営評価結果を説明する書類について

*4:Koppell,Jonathan G S.(2006).The Politics of Quasi-Government: Hybrid Organizations and the Dynamics of Bureaucratic Control.Cambridge University Press:39

*5:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)62頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*6:萩原浩『メリーゴーランド』(新潮社,2004年)62頁

メリーゴーランド

メリーゴーランド