瀬戸内市は23日、「新年度から組織内弁護士制を採用する」と発表した。問題が生じた際に相談する顧問弁護士制と違い、弁護士が定期的に市役所を訪れ、市の法的な問題の協議に応じる。当面は「週1回半日」で実施する。市によると「県内市町村では初めてではないか」としている。
 契約内容の検討や市条例案作りなど、法的な問題に幅広く協力してもらう。導入の狙いについて、武久顕也市長は「初期対応をきちんとしたい」と話している。市では定額の報酬を支払うことにしており、「一般の法律相談料金より、かなり低額で請けていただけそう」としている。
 また同市は、総額140億4249万円の10年度一般会計当初予算案を発表した。対前年同期比3・6%増で2年連続増。25日開会の市議会に提案する。歳入では、企業の業績回復などから市民税を同0・7%増の44億3709万円、地方交付税を10%増の47億3000万円とした。財政調整基金からの繰り入れは行わない。主な事業は、市民団体が自主的に行う公益活動を公募、助成する市民活動応援事業に5031万円▽市独自に小4〜中学生全員の学力調査を実施、個別に追跡調査を行う学力調査に199万円▽保育所緊急整備事業1億1376万円−−など。【小林一彦

本記事では,瀬戸内市において,組織内弁護士制を採用する方針を紹介.
法務における専門知識調達の2つの形態のうち「外部調達型マネジメント」*1の一形態.ただ,同形態のうち顧問弁護士制については,「数十年にわたって同じ弁護士」へ「顧問弁護士などを依頼している場合」,その「多くが高齢化」し「顧問弁護士を「金科玉条」」の如く位置付けられる場合も「ないわけではない」*2との観察ができないわけではない,ともいう.また,その長期契約化の要因としては,調整費用と動機付け費用*3の2種類発生(逓減)からも説明が可能とも考えられそうではあるものの,鈴木潔先生による観察結果に基づく分析では,各地域での弁護士の希少性,更新提示の困難性,長期事件の継続性(一貫性),政治的影響性*4などが提示されている.なるほど.
個別地域のみならず,前提としての現在での「行政訴訟や行政実務に通じた弁護士が非常に少数」*5という「行政法に明るい弁護士」*6自体の希少性もまた観察されるなかで,顧問弁護士制に代替する組織内弁護士制への移行が,法制執務を中心とした法環境を如何に変化させるかは,要経過観察(他の自治体では,どの程度,同制度を採用されているのでしょうか,要確認).

*1:鈴木潔『強制する法務・争う法務』(第一法規,2009年)184頁

行政上の義務履行確保と訴訟法務「強制する法務・争う法務」

行政上の義務履行確保と訴訟法務「強制する法務・争う法務」

*2:前掲注2・鈴木潔2009年:188頁

*3:ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ『組織の経済学』(NHK出版,1997年)31〜32頁

組織の経済学

組織の経済学

*4:前掲注2・鈴木潔2009年:188−189頁

*5:前掲注2・鈴木潔2009年:188頁

*6:鈴木潔「行政事件訴訟法と訴訟法務」『ジュリスト』No.1394 ,2010.2.15,69頁