北海道厚沢部町が「世界一素敵な過疎の町」を掲げ、移住希望者を募っている。今春には移住体験用の住宅も完成し「過疎だからこそできることや魅力がある」とPRに意気込む。
 同町は1960年代に約1万人だった人口が、ことし3月には約4600人と過疎化が進む。そこを逆手に取ろうと、昨年3月に「素敵な過疎のまちづくり基本条例」を制定し、第三セクター「素敵な過疎づくり株式会社」を設立。移住情報を紹介するホームページやパンフレットも作成した。
 ことし2月、町建築協会が4棟の移住体験用住宅を建築。近代的な2階建てや和風の平屋などさまざまで、家具や家電は備え付け。4月から利用され、9月までに既に10件の予約が入った。計画には当初、住民から「マイナスイメージ」との声も寄せられていたが、問い合わせは徐々に増えているという。
 同社の安田光事業推進室長は「最終的に移住してもらうにはハードルは高いが、滞在すれば良さが分かってもらえる」と話している。

本記事では,厚沢部町の移住促進の取組を紹介.
過疎地域自立促進特別措置法第2条1項の「適用」*1される同町.同条例に関して,同町HP*2を確認してみたところ,「気迫と自虐の入り混じった,複雑なネーミングが印象的」*3とも評される,いわゆる「自治基本条例」として制定されている.同種条例に採用される「ストックフレーズ」*4に収まらない,「素敵な過疎」とは,魅力的な規定.
一方で,同条例内では,「素敵な過疎」に関しては本文中明確な規定は置かれてはいない模様.同条の「前文」では,「厚沢部町に「住んでよかった」,「住んでみたい」,「いつまでも住み続けたい」と思える,安全で安心して暮らせる,個性豊かで活力に満ちた」との規定が設けられており,「素敵な」という形容詞が有する含意を読み取ることが想定されているようでもある.2008年9月9日付の本備忘録にて言及した,自治基本条例の制定機会の二つの形態,「追憶としての条例化」と「希望としての条例化」からすれば,後者の要素が込められた規定とも想定されなくもない前文規定の「住んでみたい」,「いつまでも住み続けたい」の具体化の取組を通じて,人口減少率が増加率に転じた際には,同条例はより「《実質的な自治基本条例》」*5として,その名称改正も行われるのだろうか.興味深い.

*1:総務省HP(政策地方行財政地域力の創造・地方の再生新たな過疎対策について)「過疎地域市町村等一覧(平成22年4月1日)

*2:厚沢部町HP「厚沢部町トピックス情報

*3:永嶺超輝『47都道府県これマジ!?条例集』(幻冬舎,2009年)27頁

47都道府県これマジ!?条例集 (幻冬舎新書)

47都道府県これマジ!?条例集 (幻冬舎新書)

*4:斉藤誠「自治基本条例の法的考察」『年報自治体学 コミュニティガバナンス』第17号(第一法規,2005年),52頁

*5:金井利之「自治行政学自治基本条例(上)」『自治フォーラム』vol.560,2006年5月号,49頁