社長さん、役所で働きませんか−−。市川市は7日、新設した経済対策担当理事(部長級)の募集要項を公開した。中小企業を4年以上経営した経験を持つ人を対象に、1人を公募する。年齢不問。民間企業から市幹部への“天上り”は異例で、市によると全国でも珍しいという。
 産業振興のため、経験を生かして中小企業支援プランを提案・実行できる人材を求めて公募を企画した。対象は、小売業の場合、資本金5000万円以下で従業員50人以下など中小企業基本法が定める会社の経営者。任期は7月1日から12年3月末まで。毎年契約を更新し、5年を限度とする。待遇は年収900万円強。地元ケーブルテレビ社長だった大久保博市長は「中小企業の社長は融資の手続きも自分でやる。パワーがあるはずだ。人物本位で選びたい」と語った。応募者は具体的な経済活性化策を10〜28日に提出し、書類選考後、市長らによる個別面接で1人を採用する予定。【山縣章子】

本記事では,市川市における部長級職の公募の取組を紹介.同市において公募される職は,「経済担当理事」.同職及び同公募の詳細については,同市HPを参照*1
「資格」としては,「中小企業基本法第2条第1項に定める中小企業者としての代表者経験を4年以上有する者」に限定されている点であり,「中小企業者としての代表者経験」という「資格」に,同職の「専門性」を想起されている模様.同職の「採用予定日および任期」は,「平成22年7月1日から平成24年3月31日まで」の2ヶ年.ただし,「業績により4月1日以降1年毎の更新」もあり,「最長で採用日から5年を限度」*2とされている.「選考手順」は,「一次選考」は「書類選考」と「企画書審査」が実施.次いで,「二次選考」として「個別面接」となる.「給与等」は,同市における「理事」であるため,「9級9号給」の「563,090円」*3.同職,2009年9月11日付の本備忘録にて整理した,自治体の各種職における庁内外部からの登用形態の制度類型に基づくと,「常勤・非同意職・専門系・任期付」とも分類ができそう.
財団法人日本都市センターが全国の市区(806市区人事担当課長)を対象に,2009年10月から12月にかけてに実施された「都市自治体行政の専門性確保」に関する郵送質問紙調査(回答数411市区,回答率50.9%)の結果を拝読すると,「高度の専門的な知識経験又は優れた識見を有する者をその者が有する当該高度の専門的な知識経験又は優れた識見を一定の期間活用して遂行することが特に必要とされる業務に従事させる場合」の採用である「任期付職員3条1項」型が「5.8%」,「専門的な知識経験を有する者を当該専門的な知識経験が必要とされる業務」に関して「当該専門的な知識経験を有する職員の育成に相当の期間を要するため,当該専門的な知識経験が必要とされる業務に従事させることが適任と認められる職員を部内で確保することが一定の期間困難である場合」で採用である,「任期付職員3条2項1号」型が「9.2%」*4の現状にあり,依然,任期付職員制度の採用は限定的ともいえる現状.
一方で,同制度を通じて置かれる職位についてみてみれば,同市のように管理職系に配置されることは,2008年12月28日付以来の断続的観察課題である自治体人事管理における「半開き(semi-open system)化仮説」の観察対象としても興味深そう.一方で,このような「半開き」により,「多様な社会経験が自治体行政に反映されることは望ましい」ものの「必ずしも「専門性」の強化につながるとは限らず,単なる“(行政)経験不足”という別の課題をクローズ・アップしかねない点にも留意を要する」*5として,「少なくとも当面は,日本型組織の強みを活かすならば,一括採用・定期異動などに特徴づけられる内部キャリア形成を中心とした閉鎖型任用制を基盤としたうえでのこと」*6との指摘もある.なるほど,「半開き」も「閉鎖型」が前提のうえでのこととも整理できそうか.

*1:市川市HP(事業者向け情報産業振興商工業振興商業)「経済担当理事の募集について

*2:市川市HP(市政情報市政の運営人事・職員 )「任期付職員募集のお知らせ

*3:市川市HP(市政情報市政の運営人事・職員 任期付職員募集のお知らせ)「市川市職員採用選考案内〔 一般任期付職員 〕」3頁

*4:財団法人日本都市センター編著『都市自治体行政の専門性確保に関する調べ』22頁(財団法人日本都市センター,2010年)

都市自治体行政の専門性確保に関する調べ

都市自治体行政の専門性確保に関する調べ

*5:大杉覚「自治体人事マネジメントと職員の「専門性」」『地方公務員月報』2010年4月号,561号,8頁

*6:前掲注5・大杉覚2010年:15頁