名古屋市河村たかし市長は15日、市役所本庁舎の国の重要文化財指定を目指し、調査を開始したことを明らかにした。同市長は「正庁でダンスパーティーをしたり、屋上を屋台村にして手羽先でも販売したらいい」と述べ市民に開放する考えを示した。
 1933年建設の本庁舎は、鉄筋コンクリートの現代建築に瓦屋根をかぶせた帝冠様式。高さ53メートルの中央塔の上に2層の屋根があり、頂には名古屋らしく四方にらみのしゃちが乗る。格調高い貴賓室や正庁、大理石の玄関ホールなど見どころが多く、ドラマや映画のロケにも使用されている。
 市は重文指定の審査に向け、建築当初から残る部材や改築状況、建築史上の価値などの学術調査に着手。調査には数年を要する見通しだ。河村市長は「重要文化財の中で仕事するというのはなかなかない。市民のみなさんにも活用してもらいたい」と意気込んでいる。【高橋恵子

本記事では,名古屋市において同市庁舎を重要文化財指定を目指した調査を開始されたことを紹介.
「壁はヨーロッパ系のデザイン中心でまとめその上に日本式の瓦屋根を載せ」られており「木に竹を継ぐスタイル」*1とも称される「定冠様式」.「デザインとしてぎこちないが,その異和感」が「伝統をトゲトゲしいまでに強調する効果」があるとして「きわめてイデオロギッシュな表現方式」*2ではあるものの同様式.ただし,同市庁舎の「現在位置」*3からも分かるように,一人屹立されているものではなく,「互いに隣接する」愛知県庁とともに「この二庁舎は,いずれも名古屋城からの暗示を受け」*4ており,「今日の目で見て」「イデオロギッシュに見える」同様式も,建築当時は「和と洋の様々な趣味の一つとしてたまたま選ばれ」,「周囲の景観に配慮」*5もされた同市庁舎(下名も,はじめて同市庁舎を訪れた時の,帝冠様式の頂を眺めた際の驚きと,一方での空間的には,妙な調和を感じたことを思い出されます).
文化庁の「国宝・重要文化財(建造物)」を拝見すると,近代に建設された「官公庁舎」*6のグループに関しては,現在,21件が重要文化財として指定されており,そのうち,今日でいう自治体の庁舎としては,北海道庁旧本庁舎,旧三重県庁舎,京都府庁旧本館,山口県旧県庁舎及び県会議事堂と限定的であり,市レベルでは,その庁舎の残置状況もあってか,現在のところ未指定の模様.
重要文化財」の指定においては,「意匠的に優秀なもの」「技術的に優秀なもの」「歴史的価値の高いもの」「学術的価値の高いもの」「流派的又は地方的特色において顕著なもの」項目の5項目の「一に該当し,かつ,各時代又は類型の典型となるもの」であると規定された「指定基準」*7と照し合せてみると,同市庁舎は該当しそうではあるものの,2008年12月7日付の本備忘録において項目立てを試みた本備忘録における妄想的・断続的観察課題である「庁舎管理の行政学」の観点のうち,「序章:庁舎と自治体-その歴史的変遷と分析視角」と「第1章:建築と維持のポリティクス」からも,興味深い取組.同市の調査結果及び同指定過程に関しては,要経過観察.

*1:藤森照信『日本の近代建築(下)』(岩波書店,1993年)21頁

日本の近代建築〈下 大正・昭和篇〉 (岩波新書)

日本の近代建築〈下 大正・昭和篇〉 (岩波新書)

*2:前掲注1・藤森照信1993年:22頁

*3:名古屋市HP(暮らしの情報施設案内市役所)「(現在の位置)名古屋市役所

*4:井上章一『戦時下日本の建築家』(朝日新聞社,1995年)58頁

*5:前掲注1・藤森照信1993年:30頁

*6:文化庁HP(国指定等文化財データベース国宝・重要文化財(建造物))「重要文化,財近代/官公庁舎

*7:文化庁HP(文化財種類国宝・重要文化財(建造物))「国宝及び重要文化財( 建造物) 指定基準」(昭和26年5月10日文化財保護委員会告示第2号)