政府は14日、地域主権改革の取り組み方針を示す「戦略大綱」の策定時期を、当初予定の6月下旬から参院選後の7月下旬に先送りする方針を固めた。鳩山由紀夫前首相の退陣をはさみ策定作業が一時中断し、政府内の調整が遅れたことなどが要因だ。
政府関係者は14日、「公示前の(大綱の)閣議決定はなくなった。公示後(投開票まで)に関係閣僚を集め戦略会議を開催するのはほぼ不可能で、選挙が終わってからになるだろう」と述べた。地域主権改革をめぐっては、全国知事会などが今国会での早期成立を求めていた「国と地方の協議の場」の設置法案など関連3法案が継続審議となる見通し。大綱策定の先送りで、地方側の不満がさらに強まりそうだ。政府は当初、今月14日と21日に首相と関係閣僚らをメンバーとする地域主権戦略会議の会合を開いて大綱を取りまとめ、参院選公示前の22日に閣議決定する考えだった。しかし14日の会合は急きょ中止となり、21日も開催されない見通し。
本記事では,地域主権戦略会議において審議が進められている「地域主権戦略大綱」の策定時期について紹介.
2010年6月12日付の本備忘録にて記した「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」,「国と地方の協議の場に関する法律案」(地域主権改革関連2法案)及び地方自治法改正案の国会審議と同様に,同大綱に関しても「先送り」*1との見通しの模様.2009年12月14日に開催された,第1回の同会議配布資料「地域主権戦略の工程表(案)」では,「平22夏」の「策定」*2との見立てが示されていた「地域主権戦略大綱」.2010年6月14日付の時事通信によると「閣議決定時期は遅ければ8月ごろまでずれ込む」*3との見立ても報道.
一方,「6〜8月」は「広い範囲」で「低温傾向」*4との気象庁の「予報」も示されていることからすれば,6月では「夏」には未だ到来せずとの認識なのだろうか,将亦,「「総論の段階」から「各論の段階」に進む時」のなかでは「丁寧に進めて」*5,「関心」又は「歓心を買う」*6手続も又不可欠との判断なのだろうか.悩ましい.
「自治制度」には「制度改革が大きく行われる制度改革期と,比較的に安定している制度運用期・制度安定期が識別できることも,否定できない」*7との認識を踏まえ,「1993年以来」の「地方分権改革」*8の結果への「制度運用期・制度安定期」とともに,「緩慢に推移する」*9「制度改革期」とが併発的に移行しつつあると認識をしてきたものの,地方分権改革推進会議,地方分権改革推進委員会,そして,地域主権戦略会議という各種「地方分権改革審議機関」*10における審議とその結果の取扱い状況を経過観察すると,むしろ,「おおむね一九五五年ころを境に安定期に入った」*11ことと同様に,2000年代以降の自治制度においてもまた,「制度改革期」は「ひとつの区切」*12が付けられており,むしろ唯一「制度運用の時代」*13にあったとの認識が適当なのだろうか,考えてみたい.
*1:上川龍之進『経済政策の政治学』(東洋経済新報社,2005年)329頁 経済政策の政治学―90年代経済危機をもたらした「制度配置」の解明
*2:内閣府HP(地域主権:地域主権戦略会議:会議開催状況:地域主権戦略会議(第1回)(開催日平成21年12月14日(月)議事次第・配布資料)「資料4‐2地域主権戦略の工程表(案)【原口プラン】」
*3:時事通信(2010年6月14日付)「地域主権大綱、閣議決定先送り=8月まで延期も」
*4:共同通信(2010年5月25日付)「梅雨はぐずつき、北日本で冷夏か 気象庁6月からの3カ月予報」
*5:首相官邸HP(菅総理の演説・記者会見等)「第174回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説」
*6:増田寛也『地域主権の近未来図』(朝日新聞社,2010年)35頁
*7:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)88頁
*8:西尾勝『地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)7頁
*9:ポール・ピアソン『ポリティクス・イン・タイム』(勁草書房,2010年)117頁 ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)
*10:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)43頁
*12:砂原庸介「中央政府の財政再建と地方分権改革」『公共政策研究』第7号,2007年,132頁
*13:大杉覚「行政改革と地方制度改革」西尾勝・村松岐夫『講座行政学第2巻 制度と構造』(有斐閣,1994年)296頁