船橋市は、公認会計士を係長級の任期付き職員として監査委員事務局に配置することを決め、募集を始めた。同事務局の機能強化などが目的で、公認会計士を監査委員事務局の職員に採用するのは県内で初めて。
 市監査委員事務局では、複式簿記が取り入れられている公益法人などの会計のチェックポイントを、公認会計士から他の職員が学び、資質向上につなげたいとしている。応募受け付けは21日まで。10月1日付で採用し、任期は3年間。
 県外では、東京都や大阪市などが、公認会計士を監査委員事務局に採用している。2006年度から2年間の任期で採用した神奈川県横須賀市の監査委員事務局では「会計を点検する視点が勉強になった」と話している。問い合わせは船橋市監査委員事務局(047・436・2752)へ。

本記事では,船橋市における監査委員事務局の取組を紹介.同市では,同「事務局の強化と職員の技術向上を図る」ことを目的として,同「事務局に公認会計士有資格者を一般職任期付(3年間)職員として採用」の方針とのこと.詳細は,同市HPを参照*1
「応募資格」は「平成22年7月1日現在」で「公認会計士有資格者で実務経験のある方」を「1名」であり,募集される職は「班長(係長)」として,「職務内容」「定期監査等の監査,例月現金出納検査等の検査,決算審査等の審査」,「専門知識を生かした効果的な監査方法の確立,実施」,「OJTを通じた実効性のある検査方法の職員への研修,指導等」,「班の統括」がその「職務内容」*2.2010年7月4日付の毎日新聞を拝読すると,同市の同「事務局は現在計12人で,3班に分かれて調査」されているものの,「今回の採用に当たっては定数を増やさず,公認会計士は監査の実務を仕切る」*3ことを期待されている,という.
申込時には「申込時の提出書類 ・選考申込書」とともに,「公認会計士登録証明」と「職歴証明書」*4を提出.「勤務条件等」は「実務経験年数により決定」されるあり,募集案内では,「例」として「実務経験10年の場合」が例示されており,「年収約660万円(税込)」の「他に時間外勤務手当,扶養手当,通勤手当,住居手当等の手当が支給要件に応じて支給」*5される模様.
2009年9月11日付の本備忘録にて整理した,自治体の各種職における庁内外部からの登用形態の制度類型に基づくと,「常勤・非同意職・専門系・任期付」とも分類できそうな,2010年7月1日付の本備忘録にて紹介させて頂いた神奈川県における2名の法曹有資格者の採用取組では,その選考手続では,第1次試験の論文試験,第2次試験の面接試験という重層的な手続が行われていたものの,同市では,「プレゼンテーション(10分程度)を含む」「面接」*6を1回の模様.選考を巡る「専門能力の非対称性」に関しては,法曹資格者よりも公認会計士が,小さいということなのだろうか,興味深い.
「監査の「領域」が「古い旅館の建て増し」のごとく,そして,一向に魅力は高まらないが廃止はしない公営国民宿舎のごとく,増え続けてきた様子が窺える」*7とも指摘がされるなかで,総務省に設置された「地方行財政検討会議」では,2010年6月22日に取りまとめた『地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方』において,「監査委員の事務を補助する職員として任じられている者」に関しては,「当該地方公共団体の職員として採用され,他部局等にも異動するのが一般的」として,「監査を受ける立場の職員との一体性が高く,また,将来は,監査を受ける立場にもなり得る」との現状認識が示されており,そのため,同会議では「現行の監査委員制度では,例えば,財務に関する事務処理の組織的・慣習的な不正行為を是正する機能を十分に発揮できないのではないかという批判」とともに,「監査の専門性という観点からは,監査委員,監査委員の事務を補助する職員の監査に関する専門的な知識・経験が不十分であるという指摘」*8があることが示されている監査委員事務局.
外部の専門資格を有する方の知見を「任期付」という一過性の摂取を通じて,同職の採用後に,同班長の下で勤務される事務局職員の皆さんの専門能力の涵養は想定されなくもないものの,一方で,これらの職員の皆さんは確かに「任期なし」ではあるものの,「自治体では職員集団の一体性が強い」*9ことからも,結果的には,その技能の摂取もまた一過性の職となることが考えられなくもない.離任後に,どのようにして,その技能が継承されることになるかは,要確認.

*1:船橋市HP(市政情報監査委員事務局)「監査体制の充実強化のため公認会計士有資格者を任期付(3年間)監査委員事務局職員として募集します

*2:船橋市HP(市政情報監査委員事務局監査体制の充実強化のため公認会計士有資格者を任期付(3年間)監査委員事務局職員として募集します)「船橋市監査委員事務局任期付職員募集案内」1頁

*3:毎日新聞(2010年7月4日付)「船橋市:公認会計士、常勤職員に 市が募集、監査の体制強化で /千葉

*4:前掲注4・船橋市HP(船橋市監査委員事務局任期付職員募集案内)2頁

*5:前掲注4・船橋市HP(船橋市監査委員事務局任期付職員募集案内)2〜3頁

*6:前掲注4・船橋市HP(船橋市監査委員事務局任期付職員募集案内)2頁

*7:金井利之『実践自治行政学』(第一法規,2010年)258頁

*8:総務省HP(組織案内研究会等地方行財政検討会議)『地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方』(平成22年6月22日)12頁

*9:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)201頁

ホーンブック 地方自治

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