不正経理問題の再発防止策の一環で県は10月1日から、「特別会計事務検査」という名称の検査体制をスタートさせる。当初目指した、リーダー役を公認会計士とする「特別会計検査チーム(会計Gメン)」は、公認会計士を確保できなかったことなどから、県職員が検査を実施することにし、名称の見直しも行った。
 特別会計事務検査は、業者からの通報などに応じ、事案ごとに検査チームを設置。リーダーは会計局の指導課長が務め、抜き打ち検査などを行う。職員が個人的に保管している関係書類なども本人立ち会いの下で検査したり、必要に応じて業者調査を実施したりする。発注や契約締結前の段階の事務も検査対象とする。通報があった事案の検査結果は、匿名の通報を除き、通報者に通知するという。会計Gメンに対しては、「屋上屋を架さないようにすべき」との提言を県議会からも受けており、そうした点も踏まえて見直したという。

本記事では,神奈川県における「特別会計事務検査」の取組について紹介.
本記事においても報道され,同県HPにも記載されている,「1,717人の県庁職員を処分するという県政史上最大の不祥事」としての「不適正経理問題」*1.その対処策に関しては,2010年3月26日付の本備忘録にて記録したように,「強い組織責任」*2として,同県副知事の更迭が行われている.
その後,いわば「弱い組織責任」*3としての予防体制の整備に関しては,同県HPを拝読させて頂くと,当初は,「会計局に,財務・会計分野に専門的知識を備えている有資格者(公募の任期付職員.公認会計士や税理士,法曹有資格者から1名を想定.)をリーダーとした「特別会計検査チーム」を設置」され,「本庁及び出先機関を対象に抜き打ちの検査を実施」し,その「検査結果については,所属長等関係部署に通知するとともに,速やかに公表」する体制を,「平成22年7月から設置予定」ではあったものの,同職の「候補者が辞退したため,検討した結果,再募集は行わず,県職員をチームリーダーに充てる」*4という,「純粋な意味での内部統制システム」*5として配置された模様.「特別会計事務検査」に関する詳細については,現在のところ,把握できず,残念.要確認.
「不祥事を予防しきることは困難であるし,あるいは,予防水準を上げようと思えば,さまざまな費用が発生」*6とされる,「監視と統制」の「コスト」の「二次的ジレンマ」*7に対して,「特別会計事務検査」によるコストの逓減状況については,要経過観察.

*1:神奈川県HP(県の運営情報(職員採用・給与・職員の状況)不祥事防止)「不適正経理問題への対応について

*2:手塚洋輔「だれが「更迭」されるのか」御厨貴編『変貌する日本政治―90年代以後「変革の時代」を読みとく』(勁草書房,2009年)173頁

*3:前掲注2・手塚洋輔2009年173頁

*4:神奈川県HP(県の運営情報(職員採用・給与・職員の状況)不祥事防止不適正経理問題への対応について)「「不適正な経理処理に対する再発防止策」の取組状況(平成22年7月31日現在)

*5:鈴木潔「「外部統制的内部統制システム―大阪市公正職務審査委員会」」『自治体における公正で透明な事務執行をめざして』(財団法人日本都市センター,2009年)79頁

自治体における公正で透明な事務執行をめざして

自治体における公正で透明な事務執行をめざして

*6:金井利之「不祥事の行政学」前掲注5・所収・55頁

*7:山岸俊男社会的ジレンマ』(PHP出版,2000年)98頁

社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)

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