学識経験者らでつくる京都市財政改革有識者会議(座長・伊多波良雄同志社大教授)は4日、市財政健全化に向けた改革案を門川大作市長に提出した。市債発行額の抑制や人件費削減を具体化する数値目標の設定を求めるとともに、部局横断的な政策判断を重視する予算編成システムへの転換を訴えている。
 提言は公共投資や人件費、社会福祉関係経費のあり方など4分野における改革の方向性を31項目で示した。自治体財政健全化法で破綻(はたん)寸前とされる「財政健全化団体」への転落を防ぐため、公共投資の規模の抑制、「聖域」とされてきた市消防局や市教委を含む各部門の計画的な人員削減、社会経済情勢を踏まえた福祉施策の見直し、府や国との事務分担の点検などの必要性を指摘した。
 伊多波座長ら委員6人が市役所を訪れ、「市民と危機感を共有することが改革の第一歩になる」と市財政の現状を広く周知することも求めた。門川市長は「負債を抑制するための数値目標の設定は有効な提案」と述べ、今後、庁内の財政健全化推進本部で具体案を検討する考えを示した。来年度の予算編成や改革実行計画などに反映させる方針。

本記事では,京都市において設置された「京都市財政改革有識者会議」が取りまとめた提言が同市長に提出されたことを紹介.2010年7月22日付の本備忘録においても触れた同会議による同提言に関しては,同市HPを参照*1
同提言では,「①公共投資のあり方,②人件費,業務委託費のあり方,③社会福祉関係経費のあり方,④市税,受益者負担,国・府との財政面の関係のあり方の4つのテーマ」を「歳入歳出の主要な構成要素」*2として設定されており,その「対象となるテーマ」に関しては,金井利之先生により整理された「全行全施策横断的にパッケージを一括して示す」「一括方式」と,「行革所管部課が重視する少数の項目を選定し,一点突破で行政改革を進める」「一点方式」*3の2つの方式のうち,確かに,外形的には,公共投資社会福祉関係経費といった「一点突破型」的要素が含まれてはいるものの,例えば,公共投資では「優先順位等について全庁的な視点で検討し,予算を編成する必要がある」*4との記述からも,他の,人件費と業務委託費,市税・受益者者負担・国・府との財政面の関係のテーマと同様に,「一括方式」的色彩が含まれた内容となっている.まさに,「《行政改革》とは何でも入る器」*5ということなのだろうか.興味深い.
また,こちらも金井利之先生により整理された「行革スタイル」の「三つ」*6の形態を参照させて頂くと,同提言内の事項を拝読させて頂くと,「行政整理という方向性」とされる「減量型行政改革」と,「減量型行政改革の限界を超えて,無駄や非効率それ自体を生んできた「お役所仕事」という行政システム・仕組み自体」を対象とする「行政経営システム改革」*7とが「濃淡・干満」*8により,二種混合で接種された内容とも整理ができそう.同提言では,「敢えて実現のハードルが高いと思われる事項も盛り込」*9たとするならば,「「各論反対」の議論にぶつかってしまうこと」を回避すべく,同会議の「委員も,わざわざ好き好んで,施策・事業の縮減を提言する「嫌われ役」になる気はない」*10行動形態が観察されるなかで,進んで「嫌われ役」として提言されたことにもなるのだろうか.同提言が展開される様相は,要経過観察.

*1:京都市HP(市の組織行財政局各課の窓口財政課財政健全化推進本部会議・財政改革有識者会議)「京都市財政改革有識者会議京都市財政改革有識者会議」から提出された「京都市の財政改革に関する提言」について)「京都市の財政改革に関する提言〜低成長,少子高齢化時代にふさわしい財政運営の考え方〜」(京都市財政改革有識者会議,平成22年10月)

*2:前掲注1・京都市京都市の財政改革に関する提言)5頁

*3:金井利之『実践自治行政学』(第一法規,2010年)161頁(後期に開講する,本務校の学部演習の第一回目のテキスト.何度か拝読させて頂いておりますが,本日の演習の準備のため,昨晩から書き込みと付箋を貼りつつ読み進めておりましたら,これらで満身創痍になってしまいました.)

*4:前掲注1・京都市京都市の財政改革に関する提言)7頁

*5:前掲注3・金井利之2010年:161頁

*6:前掲注3・金井利之2010年:146頁

*7:前掲注3・金井利之2010年:148頁

*8:前掲注3・金井利之2010年:209頁

*9:前掲注1・京都市京都市の財政改革に関する提言)3頁

*10:前掲注3・金井利之2010年:148頁