横浜市の「横浜こども科学館」(磯子区)を指定管理者として運営する市の外郭団体「市青少年育成協会」が、2011年度以降の指定管理者から外れたことで、職員のリストラを進めていることが分かった。科学館での収入は全体の3分の1強を占めており、今後は厳しい経営を強いられるという。 (荒井六貴)
 科学館は、一九八四年に開館。市は、協会の前身となる団体を設立し、管理運営を委託した。〇六年度に指定管理者制度を導入した後も、五年契約で運営を任せてきた。今回、契約満了に伴い、一一年度から五年間の指定管理者を初めて公募で募集。協会に加え、NTTの出資会社(東京)と文化施設運営会社(大阪)の共同企業体など計三団体から応募があった。外部の大学教授ら五人が審査。NTT出資会社などの共同企業体が八七・四点を獲得、実績で有利なはずの協会の八三・六点を上回り、指定管理者に選ばれた。委員会は、共同企業体の選定で利用者サービスの向上や収支計画などで高得点を与えており、「民間活力に期待する」と講評。
 一方で、協会については「実績は評価できるが、展示物の更新をしないなど、保守性を感じる」と指摘した。これに対し、協会は昨年十二月、結果の詳細な説明を求め、公開質問状を選定委員会に提出。委員会側は「個々の質問には答えない」としたが、協会は納得せず「委員会の運営、進行に誤りがあった」「評価の十分な議論がない」とする「見解」を発表した。協会は、野島青少年研修センター(金沢区)なども管理運営しており、年間収入は約九億円。このうち科学館の管理運営による収入は約三億六千万円と三分の一強を占めている。今後、経営が厳しくなることから、協会は早期退職を募集。これまでに六人が三月までの退職に応じる予定で、契約職員二十七人のうち二十人を雇い止めにもする。協会の大槻哲夫事務局長は「質問状は、選定結果を覆そうと考えたわけではなく、職員らに説明するために出した」と説明。自身も市の元職員だが、「市は科学館を運営するために協会をつくったんだから、きちんと始末をつけてほしい」と訴えた。
 協会を所管する市の担当者は「協会の在り方は外部の有識者により検討されているので、かじ取りはその結論を聞いてからになる」と話した。

同記事では,横浜市における公の施設に対する指定管理者の公募審査結果について紹介.同審査結果に関しては,同市HPを参照*1
同市では,指定管理者の公募に伴う選定に当たり,「行政運営等に関して知識を有する学識経験者(大学教員等)」「団体の財務状況の審査が可能な者(公認会計士,税理士等)」「当該施設が属する政策分野の専門家(例:スポーツの専門家等)」「当該施設の利用者代表」「の者等から選任することを基本」ととされた,「外部委員によって構成する」「選定委員会」*2により審査.同審査は,全庁一括での選定,審査による施設の専門性や施設の独自性の公募者と審査者と非対称性を是正するためか,「施設の特性に合わせて施設所管課が個別に判断」*3するとあり,いわば「分散型」の審査体制を採用.評価項目では,「サービス及び経費等についての総合的な視点からの評価」とされつつも,「施設の地域特性の考慮度合いや地域活性化への貢献等の評価価を検討」することや,「本市の重要政策課題への対応状況を評価」すること,「これまでの管理運営の実績」を「加減点」*4的な評価項目として設定されることも想定されてはいる.ただし,最後の「これまでの管理運営の実績」にうちては,「実績評価の選定に占める割合は最大でも10%以下」であること,「加点だけではなく,要求水準を下回った場合には減点」を図ること,「最低限の要求水準(協定の下限)を満たすだけでは加点しない」*5ことにより,「他の事業者の参入意欲を減退させ,競争性を阻害する可能性」*6を抑制されること想定されている.
同施設に関しては,「3団体から応募」があり,同加減点の5点を加えた,「総合点数」「105点」満点中,「指定候補者」が「87.4」点,「次点候補者」が「83.6」点,「第3順位の候補者」が「81.2」点とされ,本記事でも紹介されている同施設の現指定管理者は,「次点候補者」として「これまでの実績は評価できますが.展示物の更新を行わないなどの点について,少々保守性が感じられました」「理念は理解できますが,今後の事業展開において疑問を感じました」との選定委員会の「講評」*7が示されている.2011年1月20日付の同紙の報道では,「首都圏五つの政令市と千葉県の六自治体」では「指定管理者を公募した」結果,「約三割は応募が一団体」*8とあり,管理主体の「経路依存」により,「更新」時期のなかでの管理主体の「相対的な安定」*9の様相が窺えるものの,他の主体の参加を通じて,実際の管理状況の安定も限定的になるのだろうか.同市の選定状況もまた,要確認.

*1:横浜市HP(こども青少年局トップ青少年育成課青少年施設等 第2期指定管理者公募)「横浜こども科学館 第2期 指定管理者選定結果報告書」(横浜市青少年施設等指定管理者選定委員会,平成22年9月)

*2:横浜市HP(共創推進事業本部指定管理者制度指定管理者制度運用ガイドライン)「横浜市指定管理者制度 運用ガイドライン 【第2版】」(横浜市,平成22年4月)35頁

*3:前掲注2・横浜市横浜市指定管理者制度 運用ガイドライン 【第2版】)35頁

*4:前掲注2・横浜市横浜市指定管理者制度 運用ガイドライン 【第2版】)36頁

*5:前掲注2・横浜市横浜市指定管理者制度 運用ガイドライン 【第2版】)36頁

*6:前掲注2・横浜市横浜市指定管理者制度 運用ガイドライン 【第2版】)35頁

*7:前掲注1・横浜市横浜こども科学館 第2期 指定管理者選定結果報告書)3頁

*8:東京新聞(2011年1月20日付)「施設管理 3割競争なし 首都圏の6自治体

*9:ポール・ピアソン『ポリティクス・イン・タイム』(勁草書房,2010年)67頁

ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)

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