和歌山市の職員が政策を研究し、その成果を発表する平成22年度政策研究グループ報告会が2日、市役所の庁議室であった。若手職員5人が集まった 「第3グループ」 が大橋建一市長ら幹部10人に専門用語などをまとめた「市役所用語集」 の作成と活用をテーマにした報告を行った。市は今後、事業化するか検討する。
市は平成9年度から、職員の自主的な研究成果を施策に反映するために 「研究政策グループ制度」 を導入。これまで、庁舎壁面緑化や行政評価システム、保育マニュアルなどが事業化されている。同グループは、市が昨年初めて実施した「政策形成研修」 で知り合った若手職員で結成。人材の育成に焦点を当てて議論を重ねる中で、異動の際に完璧な引き継ぎができていない点に着目し、後任者がすぐに業務に対応できるよう、職員にアンケートを取って 「市役所用語集」 を作成。原戸(改正原戸籍謄本)や印本(印刷製本費)など、分かりにくい専門用語や和歌山弁など合計2000語とその解説を収録した。
報告を聞いた大橋市長は 「かつて取り組んでいないこと。ほかの行政機関でも役立ちそうだ。今後、解説を精査していけばいいものができると思った」 。畠山貴晃副市長は 「ウィキペディアのようにウェブ上で職員全員が加筆できれば面白い」 と提案し、松見弘副市長は 「私たちの知らない言葉もある。市民の人向けに作ってもいいのでは」 と話していた。同グループの都市計画課の工藤直士事務副主任(33)は 「2カ月半の編集期間だったがいいものができたのではないか」 と話していた。

本記事では,和歌山市における職員研修の取組を紹介.本記事で取り組まれている「研究政策グループ制度」の一環.同制度とその内容に関しては,同市HPでは把握できず,残念.同制度を通じて,「「市役所用語集」 の作成と活用」を提案された模様.興味深い(是非,同用語集を拝読したいですね).
「「なんとなく恰好がつくから使っている」程度」*1の用語から,法定上及び技術的な専門性に基づく用語,そして,その起源が判然とはしないまま略称として利用されている用語まで,「お役所の「業界用語」*2は,それらの用語が流通し,そして個々の職員の体得することで波及されることになるものと想定される.そのため,「組織指向型」*3となるためには前提要件とも整理ができそう.果たして,新しく組織に採用された方々,そして,新たな部署へと「異動」*4された方々は,これらの用語をいつ頃接し,日々のルーティン的な利用と図り,一「組織人」*5となっていくのだろうか,その過程も,興味深そうな観察対象.
なお,蛇足.各自治体で用いられる「役所用語」.自治体総体として共通的に用いられる用語もあれば,個別自治体で特殊に用いられている用語もありそう.後者の用語の把握も興味深そう(基本的なところでは,職制上の名称等もこれに当てはまりそうですが).更に,下名,お話を伺う際に,「○○について伺いたいのですが」とお伺いした場合でもあっても,ご担当の方は,今一つピンとされない場合もしばしばある.その時は,やや説明的にお話を伺いたい事案に関してお話すると,「ああ,■■のことですね」とのお返事を頂くこともある.とすれば,同一事案ンを指しつつも,個別自治体毎で異なる用語もあることも窺えそうか(いわば,方言でしょうか).その独自の用語の整理とともに,用いられ方の「境界線」*6についても,把握できると,楽しそう.

*1:町田智弥,かたぎりもとこ『リアル公務員』(英治出版,2010年)177頁

リアル公務員

リアル公務員

*2:新規採用研修研究会『自治体職員スタートブック―仕事の全体像と法令・政策の基礎知識がまるごと身につく!』(学陽書房,2010年)74頁

自治体職員スタートブック―仕事の全体像と法令・政策の基礎知識がまるごと身につく!

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*3:真渕勝『官僚』(東京大学出版会,2010年)51頁

官僚 (社会科学の理論とモデル)

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*4:読売新聞(2011年2月3日付)「“お役所用語”集作成を

*5:桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論 補訂版』(有斐閣,2010年)208頁

組織論 補訂版 (有斐閣アルマ)

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*6:松本修『全国アホ・バカ分布考』(新潮社,1996年)21頁

全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)

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