東かがわ市議会は22日の本会議で、議員発議で提出されていた自主解散決議案を賛成多数で可決した。可決に伴い、市議会は即日解散。公職選挙法に基づき、市議選が4月17日告示、24日投開票の市長選と同じ日程で執行されることが確定した。香川県自治振興課は「統計データがないため正確には分からないが、県内で自主解散決議が可決されたのは初めてでは」としている。
 当初は、4月に市長選と議員死去に伴う市議補選(定員1)が行われ、約半年後の11月に任期満了に伴う市議選が行われる予定だった。しかし、4月の同日選が実現すれば、選挙費用約2千万円と、昨年9月に次回選挙から定数を20から18に削減することが決まり、議員2人分の約8カ月間の報酬約640万円が節減できることから、議員4人が11日にあった3月定例議会本会議で自主解散決議案を提出していた。22日の本会議では、自主解散決議案の討論に反対1人、賛成5人が登壇。反対議員は「住民の間で議論は盛り上がっておらず、自主解散を決議することは議員、議会の重みを軽視することになる」、賛成議員は「世論に鑑みて議員は市民の利益を最優先に考えるべき」などとそれぞれ主張。続いて記名投票で採決が行われ、賛成18票、反対1票となり、地方公共団体の議会の解散に関する特例法で定める賛成が出席議員の5分の4(16票)に達して可決した。
 採決後、提案した1人の石橋英雄議員は「会派を超えて多くの議員に賛同を頂いた。経費節減を率先して行うのも議員の役目の一つなので規範を示せた」と話した。議会の議決による解散は、議員定数の4分の3以上の出席の上で、出席議員の5分の4以上の賛成が必要。現在、東かがわ市議会(定数20)では議員死去に伴い欠員1のため、議員19人全員が出席して採決した場合、16人以上の賛成が条件だった。東かがわ市議会では、2007年3月にも自主解散決議案が提出されたが、賛成17、反対5で否決された。

解説=民意に応え経費節減へ
 4年前に提案され、否決となった東かがわ市議会の自主解散決議案が今回、反対わずか1票で可決された。「自主解散して市長選との同日選で経費節減を」という民意に4年越しに応えた形だが、この間、議会が議論を尽くしたとは言い難く、大半の議員には来る選挙戦でのマイナスイメージを回避したいとの思惑があったと言わざるを得ない。今回も前回と同様に提案理由は経費節減だった。にも関わらず、前回の1票差での否決から一転、賛成多数で可決となった。前回、反対しながら今回は賛成に回った一部議員は、東日本大震災で国内が混乱している中、議会と市民が対峙(たいじ)している場合ではないとの認識を示した。引退を考えている別の議員は、後任の印象を良くしておきたいと“本音”を漏らした。同市では、新市が発足した2003年、旧3町の町議が合併特例法の在任特例を適用して市議として在職していたことをめぐり、リコールが成立するなど議会不信が根強く残っている。可決の理由はどうであれ、今回は「民意」に応える形となった。議場や議会中継のテレビの前には大勢の市民が陣取るなど関心の高さもうかがわせた。解散を契機に、市発足直後のリコール問題から続く議会の混乱を断ち切り、市議会の在り方について市民を巻き込んだ有意義な議論が起こることに期待したい。(東讃支局・中西賢一郎)

本記事では,東かがわ市議会における自主解散議決の取組を紹介.概要は,同市HPを参照*1
総務省による「平成23年統一地方選挙執行予定団体に関する調」を拝読すると,「平成23年統一地方選挙」では「28.99%」と,前回が「29.78%」*2であったことに比べても0.78%減と,まさに「年を追うごとに低下」する「統一地方選挙の統一率」*3.そのなかでも,「指定都市以外の市」では,首長の改選は「11.47%」,議会議員の改選は「39.77%」*4と統一率は,他の区分と比しても低値にはある.
本記事を拝読すると,「民衆・被統治者側からの民主主義的入力が,為政者・統治者側からの統治権力という出力に対して不足していること」を指す「民政赤字(democratic deficit)」*5への考慮としてではなく,「選挙費用」単独でも「約2千万円」の減を想定されているように,「経費節減」という純然たる「民政費用」への配慮により,自主解散のうえ,同市の首長改選と自主的に統一化を図られた模様.
地方自治法第126条に基づき「議員全員が同時に辞職する」「総辞職」*6では,「議会外の住民又は長のイニシアティブに基づく」ものと解されることに対して,「議会の自主的判断に基づき行われる」*7,「地方公共団体の議会の解散に関する特例法」に基づく,議会の自主解散の取組.とはいえ,「首長選挙と議会議員選挙の時期が一致しない」ことによる,いわば副次的な効果として,「首長の行政運営に対する任期途中の中間評価,いわゆる中間選挙としての意味」*8として,選挙サイクルが異なることへの効用も想定されることもある.
ただ勿論,その判断においては「住民の世論と無関係に議会だけの判断によってこの制度を濫用することのないよう留意しなければならない」*9と,「住民の世論」に重きを置くとの見解も示されることもあるなか,同市の自主解散へと至った「判断」における「住民の世論」の状況に関しては,要確認.

*1:東かがわ市HP(お知らせ)「東かがわ市議会は解散されました!

*2:総務省HP(広報・報道報道資料一覧:2011年1月)「平成23年統一地方選挙執行予定団体に関する調(平成22年12月1日現在)」(平成23年1月1日)

*3:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)64頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*4:前掲注2・総務省(平成23年統一地方選挙執行予定団体に関する調)

*5:金井利之「大都市自治体制度と「民政赤字」」『ガバナンス』No.97,2009年5月,27-28頁

ガバナンス2009年5月号

ガバナンス2009年5月号

*6:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)434頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*7:前掲注6・松本英昭2009年:435頁

*8:前掲注3・礒崎初仁・金井利之・伊藤正次2007年:66頁

*9:前掲注6・松本英昭2009年:435頁