平成の大合併」第1号として1999年に発足した篠山市で、「丹波篠山市」への市名変更をめぐる議論がくすぶっている。その後の合併で、丹波市京都府京丹波町と、近隣に「丹波」が付く自治体が相次いで誕生。黒大豆など農産物のブランド名として知れ渡る「丹波」が、篠山市と結び付きにくくなっているとの危機感が背景にあり、合併から12年を経て対立が表面化している。(井原尚基)
 旧国名丹波」は本来、篠山、丹波両市を含む兵庫県東部と京都府中部にまたがる地域を指す。篠山市の市名は、合併時、旧多紀郡4町が協議して決めた。住民から募集した案には「丹波篠山市」もあったが、難航の末、「丹波は地域全体を指す言葉」という考え方もあり「篠山」に落ち着いた経緯がある。ところが2004年、隣接する旧氷上郡が合併して丹波市となったことが、篠山市を刺激した。07年、JR篠山口駅を「丹波篠山口駅」に改称することなどを求める署名運動では1万2千人分以上が集まった。09年には篠山市議の一部が「全国的な知名度は『丹波篠山』のほうが高い」とし、市長に市名変更を要望。10年には市が市名変更の効果などを見極めるプロジェクトチームを立ち上げた。
 しかし、市会の多数派は変更に慎重だ。変更に伴う看板書き換えなどで少なくとも6千万円が必要とする市の試算を取り上げ「財政が厳しい中、緊急性がなく、市民の関心も低い」と指摘。6月市会で市が補正予算案に盛り込んだ市民アンケートの費用を認めず、修正案を可決した。検討作業は足踏み状態となっている。市内の自営業の40代男性は「以前から『丹波篠山』は特産品などの愛称として定着している。高額な経費をかけて市名まで変える意味がわからない」と冷ややかだ。一方、篠山市の特産「丹波焼」の窯元の60代男性は「間違って丹波市へ行く客もいる。市名変更は知名度を上げるまたとないチャンス」と力説する。酒井隆明市長は「議論の第一歩として、市民に問題提起したいという気持ちは変わらない」と話す。地方自治に詳しい小西砂千夫・関西学院大学教授(50)は「問題提起は大切だが、一度決めた現在の市名を覆すには、よほど大きな賛同が必要になる」と指摘する。

本記事では,篠山市における市名変更の検討状況を紹介.
「平成11年4月1日」の合併により「篠山町」*1へと移行される予定されたなかで,「合併する場合に市となるための人口要件」の「緩和」*2を受けて,同緩和後「初めて」*3合併された同市.同市の合併の記録を拝読させて頂くと,同市名に関しては,いわゆる「昭和の大合併」の際に,同市が位置した兵庫県多紀郡内の町村間での「数々の合併協議」により「「篠山市」への移行を目指」されつつも実現に至らず,特に,「昭和35年」は「庁舎位置で合意を得ることができず」に最終的合併へと至らなかったものの,実際にも「市の名称を「篠山市」と定め」*4られていたことも分かる.
そのため,同市の名称は,いわば,当時から現在まで続く,「経路依存」により,市町村合併という「更新」に際しても,「相対的な安定」*5とも解されそうではあるものの,本記事を拝読させて頂くと,その安定性は所与ではなく,名称変更という更新も検討されている模様.現在,同市では,「市民のなかから,現在の「篠山市」の市名を「丹波篠山市」にすればとの提案」があるとして,変更への「賛成」と「現状維持」の双方の意見を例示しつつ,「平成23年7月29日(金)」「市内在住・在勤・在学または市内で活動・事業を営む方」又は「その他市名変更に関心のある方」からの「意見募集」*6を行われている.名称の「安定性」に対して,どのような意見が提出されることになるのか,要経過観察.

*1:篠山市HP(市行政に関する情報合併に関する情報合併記録 篠山市誕生)「篠山町・西紀町・丹南町及び今田町合併の記録「篠山市」誕生」58頁

*2:宇賀克也『地方自治法概説第4版』(有斐閣,2011年)40頁

地方自治法概説 第4版

地方自治法概説 第4版

*3:前掲注1・篠山市(合併記録 篠山市誕生)84頁

*4:前掲注1・篠山市(合併記録 篠山市誕生)58頁

*5:ポール・ピアソン『ポリティクス・イン・タイム』(勁草書房,2010年)67頁

ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)

ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)

*6:篠山市HP(募集情報「市名を考える」意見募集について)「「市名を考える」意見募集について