川崎市は4日、市路上喫煙防止条例で定めた悪質違反者に対する過料について、今秋をめどに徴収に向けた環境整備を図っていく方針を明らかにした。昨秋の市議会では、徴収に必要な書類の携行を「路上喫煙防止指導員」に徹底させていない点が問題視されており、これを改めるという。
 市議会本会議で、吉田史子議員(民主)の質問に答えた。同市では、条例に基づき配置された指導員が喫煙者への注意・指導を実施。注意に従わない悪質違反者には、2千円の過料を取ることができるよう定めたが、これまで実際に徴収した事例はないという。本会議で市側は「注意に従う方がほとんど」としつつ、「注意に従わない喫煙者がわずかながらいることも事実。過料を課すことで効果が期待できる点もある」と指摘。具体的には、自宅から巡回地域へ直行する指導員と、勤務時間外の持ち出しが不可能な書類を受け取るため市役所へ立ち寄る指導員を、2人1組で活動させる態勢に変更し、書類の携行を促すという。同条例は06年4月に施行。川崎駅など主要駅周辺を重点区域に指定し、路上喫煙を禁止している。

本記事では,川崎市における「川崎市路上喫煙の防止に関する条例」の実施状況に関して紹介.
同条例では,第8条に定める「重点区域において路上喫煙」した場合,同条例第10条に基づき「20,000円以下の過料」*1が科せられることを規定.具体的には,「「川崎市飲料容器等の散乱防止に関する条例」で指定している散乱防止重点区域と同じ区域」である「川崎駅周辺重点区域」「武蔵小杉駅周辺重点区域」「武蔵溝ノ口周辺重点区域」「鷺沼駅周辺重点区域」「新百合ヶ丘周辺重点区域」の5区域において喫煙した場合には,「川崎市路上喫煙の防止に関する条例施行規則」第6条第2項により,「2,000円」*2が科される.ただし,本記事を拝読させて頂くと,この過料は「これまで実際に徴収した事例はない」とも報道.過料徴収の有無若しくは多寡よりも「威嚇に止め」*3ることにより,「実効性の確保」*4が図られる,制度としての「ハードな戦略」のなかの運用としての「ソフトな戦略」*5の取組.
同市が「午前8時から9時までの1時間」「原則として第3水曜日」に実施されている「路上喫煙通行量調査結果」*6の結果を拝読する限りでは,勿論,同調査時刻以外での喫煙状況は判然とはしないものの,定点観測的な同時刻での通行人に占める喫煙者の割合に限れば,喫煙率は極めて限定的な状況.過料徴収もまた「高レベルの執行水準」には「人海戦術*7が不可避となり,「監視と統制」の「コスト」の「二次的ジレンマ」*8も生じることが想定されるものの,同条例施行後の同区域での他の時間帯での実行状況も要確認.

*1:川崎市HP(ストップ!路上喫煙)「川崎市路上喫煙の防止に関する条例」(平成17年12月22日,川崎市条例第95号)

*2:川崎市HP(ストップ!路上喫煙)「川崎市路上喫煙の防止に関する条例施行規則」(平成18年3月31日,規則第32号)

*3:松井望「政策の決定と実施」首都大学東京都市教養学部都市政策コース編, 和田清美監修『逆発想の都市政策』(ぎょうせい,2011年)147頁

逆発想の都市政策

逆発想の都市政策

*4:肥沼位昌著・出石稔監修『あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら』(第一法規,2009年)71頁

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

*5:前掲注3・松井望2011年:147頁

*6:川崎市HP(ストップ!路上喫煙)「路上喫煙通行量調査結果

*7:北村喜宣『行政法の実効性確保』(有斐閣,2008年),33頁

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

*8:山岸俊男社会的ジレンマ』(PHP出版,2000年)98頁

社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)

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