池田、箕面、豊能、能勢の4市町は、8月に施行された改正地方自治法に基づき、府から権限移譲された福祉、まちづくり分野などでの事務を広域連携で受ける「共同処理センター」の設置に向け、必要な規約を、それぞれ9月議会に提案する。事務作業を一本化することで人件費の削減や組織のスリム化を目指す。
 同センターが設置されれば、府が進めている市町村に対する特例市(20万人以上)並みの権限移譲の受け皿となる。議決を受け、10月1日から施行される。2010〜11年度に府から移譲を受ける70項目の事務のうち、市の単独処理を除く50項目の事務を4市町連携で処理する。福祉、まちづくり、公害規制、生活安全などの5分野で、それぞれに幹事市を置き、池田・府市合同庁舎や幹事市の担当課で執務を行う。事務を一括処理することで単独で移譲を受けるより、年間で計1億2000万円の人件費削減が見込めるという。

本記事では,池田市箕面市豊能町能勢町において,各市町が位置する大阪府から条例による事務処理特例制度に基づく,権限移譲を受けるための「共同処理センター」設置に向けた取組を紹介.
同センターは,2011年5月に成立した「地方自治法の一部を改正する法律」*1により,同法第252条の7に基づき「機関等の共同設置」*2として,「内部組織」として共同設置.同センターの概要は,2009年12月に「2市2町広域連携研究会」によりまとめられた報告書『池田市箕面市豊能町能勢町における広域連携の推進について』を参照*3.同報告書に記載されていた同センターの設置スケジュールでは,地方自治法の「改正法の施行を待って,課等の共同設置」,「法に基づく条例・規則等の整備をあわせて行う」*4とも記載れており,本記事を拝読すると,ほぼ同スケジュールに沿ったの設置の模様.
同センターでは,「池田合同庁舎」で「2市2町の担当職員が共同して処理」する「集中処理」と「各市町の職員が各市町の庁舎で処理」される「分担処理」*5の2種類の方式により実施.実際に全ての2市2町で「集中処理」が行われる事務としては,「身体障がい者手帳の交付」「知的障がい者に対する療育手帳の交付決定」「精神障がい者保健福祉手帳の交付」「指定障がい福祉サービス事業者の指定等」「指定居宅サービス事業者の指定等」「特別養護老人ホーム(定員29人以下の施設)の設置の認可」「老人デイサービスセンター等の設置の届出受理等」「有料老人ホーム設置届等各種届出の受理及び運営指導等」「社会福祉法人の設立認可等」「社会福祉事業(老人福祉センター)開始の届出の受理等」と,福祉分野での10事務であり,「箕面市」が「幹事市」*6となる.4つの市町が共同かつ集中的に実施できる事業は,存外,福祉分野の一部に限られる,との理解が適当なのだろうか,考えてみたい観察課題.
「権限移譲の効果を測定する方法も基準も不明確」「効果を実感することは難しい」*7とも評されることがある条例による事務処理特例制度.同センターの設置により,必要人数と人件費の算出により「市町が単独で移譲を受ける場合」より「共同処理方式で移譲を受ける場合」では,14名分の職員減が可能となり,「1億2,040万円の財源効果」*8が想定されている.ただ一方で,上記報告書の段階では,同センター設置により「10人員増分」*9とも記載.14名減・10名増(純増ではないとも考えれますが)とすれば,結果的には,4名分の職員減との理解が適当なのだろうか.また,個別市町レベルでの効果はどのようになるのだろうか.要確認.

*1:内閣法制局HP「平成23年1月から現在までに公布された法律(題名)(平成23年8月30日現在)

*2:宇賀克也『地方自治法概説第4版』(有斐閣,2011年)71頁

地方自治法概説 第4版

地方自治法概説 第4版

*3:池田市HP(各課のご案内総合政策部政策推進課大阪府からの権限移譲と2市2町の共同処理センターについて)「池田市・箕面市・豊能町・能勢町における広域連携の推進について」(2市2町広域連携研究会,2009年12月)

*4:前掲注3・2市2町広域連携研究会2009:9頁

*5:前掲注3・2市2町広域連携研究会2009:7頁

*6:池田市HP(各課のご案内総合政策部政策推進課大阪府からの権限移譲と2市2町の共同処理センターについて)「権限移譲事務にかかる担当部課一覧」(H23.1.12現在)

*7:千葉実「条例による事務処理の特例の現状とこれから」北村喜宣・山口道昭・出石稔・礒崎初仁『自治政策法務』(有斐閣,2011年)561頁

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

*8:前掲注3・2市2町広域連携研究会2009:10頁

*9:前掲注3・2市2町広域連携研究会2009:11頁