東京都は車体全体に広告を掲示して街頭を走る広告宣伝車について、デザインを事前審査する制度を10月1日に導入する。広告の色や照明が過激になり、都民から「景観を壊す」といった苦情が増えていることが理由。すでに今年3月に都屋外広告物条例の施行規則を改正しており、都内のナンバーの宣伝車を対象とする。
 新制度では広告主や宣伝事業者が区市町村に屋外広告物の許可申請をする前に、東京屋外広告協会(東京・千代田)の事前審査を受けることを求める。審査では広告の内容やデザインが公序良俗に反していないかや、交通標識と紛らわしくないかなどを審査する。協会が適切と判断した場合に発行する審査済み証を許可申請の際に持参してもらう。ただ、事前審査を受けない事業者への罰則はない。こうした審査は電車やバスなどではすでに実施してきた。ここ数年、急激に台数が増えている広告宣伝車にも適用することにした。

本記事では,東京都における屋外広告物条例施行規則の改正に関して紹介.
同規則では,第1条第5項を「車体利用広告で長方形の枠を利用する方式によるもの」,「電車又は自動車の所有者又は管理者が自己の事業又は営業の内容を表示するもの」,「自動車登録規則」の「別表第二に規定する広告宣伝車として登録されたものに表示するものを除く」「広告物等」に「係る申請について知事が必要と認める場合」,「屋外広告物等に係る意匠等作成経過報告書の提出を求めることができる」として,同規則同条第6項により「屋外広告物等に係る意匠等作成経過報告書の提出を求める場合」,知事が「同項の申請に係る広告物等の意匠等」に関して,「知事が別に定める委員会等にあらかじめ意見を聴くことを求めることができる」*1と規定.これにより,「従来,電車,バス等で行っている広告デザインの自主審査制度」を「広告宣伝車についても導入」*2.同規則にいう「委員会」とは,本記事も紹介されている,公益社団法人東京屋外広告協会に設置された「車体広告審査委員会」」*3が意見を示すことになる.
「車体利用広告のデザイン」の「基準」は,「体利用広告(バスラッピング)自主審査基準」に基づき,「道路交通の安全を阻害するおそれがないもの」「車両運行上の支障となるものでないこと」「都市景観との調和を損なうものでないこと」「広告物の掲出面積や表示位置は,東京都屋外広告物条例及び施行規則で定める規格の範囲内であること」と概括的な基準を規定されている.
あわせて,「禁止事項」として,「運転者の誤認を招くような広告物」(「発光,蛍光,蓄光,反射効果を有する材料を使用するもの」「自動車の方向指示器や制動灯と紛らわしいもの」「信号機又は道路標識等の効果を妨げるおそれのあるもの」),「運転者の注意力が散漫となる広告物」(「デザイン構成がストーリー性のある四コマ漫画や映像表示となっているもの」「文字表記が縦書きであるもの」),「車体後部の文字表記が多いもの,又は絵柄や文字が過密であるもの」,「車体後部に電話番号やホームページアドレス等が記されているもの」,「広告物が車体の窓又はドア等のガラスの部分に表示されているもの」,「車両運行上の支障となる広告物」(「窓上部分に文字を記載するなど利用者から見てバス会社の識別を低下させるもの」,「車体の排気口やスピーカー口をラッピングで塞ぐデザインとなっているもの」),「各広告面の下地又は過半に赤色,黄色,黒色,金銀色又は夜間運行にふさわしくない暗い色は使用しないこと」の「いずれかに該当するものは,これを掲載しない」*4としてネガティブリスト的規制も図られている.
本記事では,同手続を経ない「事業者への罰則はない」とも紹介.一方,2011年9月23日付の本備忘録でも記録したように,制度への「不知」*5による「善意の違反者」*6が要因とも察せられた私鉄会社では,罰則がないなかでも,同都からの「指摘」*7を踏まえて,結果的には自主的に広告撤回に至る場合もある.「監視と統制」の「コスト」*8を回避するためにも,広告宣伝車を用いる事業者数次第ではあるものの,その制度周知の方法もまた課題.

*1:東京都HP(都市整備局都市づくり政策屋外広告物条例・規則・要綱)「東京都屋外広告物条例施行規則」(昭和32年10月22日,規則第123号)

*2:東京都HP(都市整備局都市づくり政策屋外広告物平成23年度のトピックス一覧)「広告宣伝車による広告の取扱いについて

*3:公益社団法人東京屋外広告協会HP「車体利用広告審査基準

*4:前掲注3・公益社団法人東京屋外広告協会(車体利用広告審査基準)

*5:森田朗『許認可行政と官僚制』(岩波書店,1988年)63頁

許認可行政と官僚制

許認可行政と官僚制

*6:クリストファー・フッド『行政活動の理論』(岩波書店,2000年)63頁

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

*7:神奈川新聞(2011年9月23日付)小田急F―Trainに都条例がブレーキ、「広告」規制に抵触で月内で運行終了に

*8:山岸俊男社会的ジレンマ』(PHP出版,2000年)98頁

社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)

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