総務省は消費税を滞納している事業者が、地方自治体が発注する公共事業を受注することを規制する方向で検討に入った。(有光裕)
 社会保障・税一体改革で本格化する消費税率の引き上げ論議を控え、政府は自治体に入札の参加資格を厳しくするよう求める構えだが、具体策を打ち出せるかどうか見通せない。国税庁によると、2010年度の消費税の滞納残高は国税分で約4256億円に達し、地方自治体が課税する地方消費税を加えると5000億円を超えるとみられる。消費税は法人税と違って赤字企業も納めなければならないが、所得税相続税などを含む主な税目の中で最も滞納額が多い。
 総務省によると、都道府県の約9割(41団体)、市区町村の約8割(1254団体)は消費税(地方消費税を含む)を滞納している業者が公共事業に応札することを認めていない。消費税の納入は法律上、入札に参加する要件とはなっていないが、事業者の経営の健全性などを判断するため納税証明書の提出を義務付けるケースが多い。
 しかし、一部自治体は滞納している業者の入札も認めている。これに対し総務省は「消費税を滞納している業者が公共事業で利益を得ることは、地方自治への信頼を損なう」との懸念を強めており、省内の研究会で対策を検討中だ。月内にも中間報告をまとめ、政府税制調査会(会長・安住財務相)で具体策を議論したい考えだ。政府も社会保障・税一体改革で、消費税率を「10年代半ばまでに段階的に10%」に引き上げることを打ち出しており、消費税論議の本格化を控えて地方での滞納問題が議論の妨げにならないようにしたい考えだ。
 ただ、政府が有効な対策を打ち出せるかどうかは不透明だ。消費税を滞納している業者に公共事業への応札を認めている自治体には、「入札参加者が多いほど価格競争が促される」(山形県関係者)との声もある。総務省内にも「地方の判断を優先すべきだ」と、国が自治体に横並びの対応を求めることに慎重な見方もある。財源不足が深刻化する中で、政府が消費税の滞納問題に厳格な対応を求めることができるかどうかが注目される。

本記事では,総務省における消費税滞納事業者への入札規制の検討について紹介.
恐らくは,総務省に設置された「地域の自主性・自立性を高める地方税制度研究会」での検討を受けての記事.同研究会では,「地方消費税については、地方が自ら賦課徴収をしていないことを理由に,地方税に相応しくないとの批判」*1があるとして,「「執行の責任の拡大」及び「納税者の利便性の向上」の観点」から「消費税・地方消費税の賦課徴収に係る地方団体の役割の拡大」を進めるためにも,自治体「による申告書の受理等について検討」*2が行われている.
同課題に関しては,2011年7月25日に開催された第2回研究会から審議.同回の配布資料では「都道府県」で「41」,「市町村で1,254団体」が,「入札参加資格に消費税・地方消費税の未納がないことを条件」*3と規定していることを紹介.同資料をもとにした,同回の同研究会のなかでは,次のような発言*4も委員から提示されている.

入札の仕方のところで未納者をリンクさせるというご紹介がございましたけれども,滞納対策はこういうのがすごく効いて,「権限の連結」という議論になります.直接関係のない法律を連結させて,違法駐車もそうなんですけれども,車検証を出さないぞと言うと,みんなちゃんと放置違反金を払うという仕組みになっていまして,そこはむしろ積極的に法律を作ってしまえば,法治主義の下で正当化されるので,こんな入札だけじゃなくて,もっといろいろなバリエーションがあると思うので,考えられるとよろしいのではないかと思います.

2011年9月8日に開催された第3回では,「全国の団体において取組みが促進されるよう周知することとしてはどうか」との「今後の方向性」*5が示されている.
本記事を拝読させて頂くと,同資料段階で想定されていた周知よりも義務付けへの検討が進められる模様.義務付けにより,「国が政策を採用すること」により「政策採用に伴う不確実性が大きく低下し,政策を採用することの社会的適切性が高ま」り「自治体は先を争って政策採用に走る」「横並び競争」*6により,または,41都道府県と1,254市町村の現状により周知により各自治体の「直面する課題の構造と自分たちの地域が備える条件を十分理解すること」で「適切な参照先を選択し,導入」する「相互参照」*7することが適切か,考えてみたい課題.

*1:総務省HP(組織案内研究会等地域の自主性・自立性を高める地方税制度研究会)「資料3消費税・地方消費税の賦課徴収に係る地方団体の役割の拡大について」1頁

*2:前傾注・総務省(資料3消費税・地方消費税の賦課徴収に係る地方団体の役割の拡大について)6頁

*3:前傾注・総務省(資料3消費税・地方消費税の賦課徴収に係る地方団体の役割の拡大について)」4,5頁

*4:総務省HP(組織案内研究会等地域の自主性・自立性を高める地方税制度研究会)「第2回 地域の自主性・自立性を高める地方税制度研究会議事録」39頁(櫻井委員発言)

*5:総務省HP(組織案内研究会等地域の自主性・自立性を高める地方税制度研究会)「資料2消費税・地方消費税の賦課徴収に係る地方団体の役割の拡大について」10頁

*6:伊藤修一郎『自治体発の政策革新』(木鐸社,2006年)32頁

自治体発の政策革新―景観条例から景観法へ

自治体発の政策革新―景観条例から景観法へ

*7:前傾注8・伊藤修一郎2006年:259頁