熊本市は、市の政策について市民にアンケートで意見を求める「2000人市民委員会」を設けることを決め、無作為に抽出して承諾を得た2124人に委嘱状を発送した。各地の自治体でも同様の取り組みはあるが、これほどの規模で行うのは珍しい。23日に、崇城大学市民ホールで研修会を開き、今後の進め方などを説明する。
 同委員会は政策への意見を求めることで、市民に市政運営への理解を深めてもらう目的もある。委員の抽出は、市が住民基本台帳から無作為に選出した1万8160人に委嘱の書類を発送して承諾を求める形で行った。任期は2013年3月末まで。委員には四半期に1度、市の事業について意見を求める。23日の説明会の際に1回目として、〈1〉防災対策〈2〉政令市移行に伴う区役所の機能と区のまちづくり〈3〉国民健康保険――の3項目についてアンケート用紙を配布する。
 委嘱された2124人は18〜88歳で、男性1152人(54・2%)、女性は972人(45・8%)。年代別では18〜34歳489人(23・0%)、35〜49歳526人(24・8%)、50〜64歳554人(26・1%)、65歳以上が555人(26・1%)。政令市移行後の区ごとにみると、東区519人(24・5%)、西、南区が各317人(14・9%)、北区419人(19・7%)、中央区が552人(26・0%)(区名はいずれも仮称)だった。

本記事では,熊本市に設置された「2000人市民委員会」において委員委嘱が行われたことを紹介.2011年6月11日付の本備忘録にてその設置方針に関して記録した同委員会.同委員会の詳細は,同市HPを参照*1
「市政の様々な政策課題」に関して「市民」の「関心と理解を高め」,「市民」の「声をより参考とさせてもらうための新たな仕組み」*2として設置されており,本記事を拝読させて頂くと,「2142人」の市民が委嘱された模様.参加者数の点では,いわば「より多くの民主主義」*3の具体化された取組とも整理できそうな同委員会.実際に委嘱された方々への「参加のゆがみ」*4への虞を棄却するためか,「無作為に選出」.その結果,本記事を拝読させて頂くと,委員の性別では「男性」が「54.2%」,「女性」が「45.8%」とやや男性の割合が高く,年齢に関しては,15歳毎の区分による年齢構成では概ね25%程度となっている(35歳と49歳,50歳と64歳の間,そして,それぞれの性別毎ではその環境や生活課題も異なることが考えられなくないので,もう少し小さな年齢区分や年齢毎での各性別の委員構成割合を是非拝見したいですね).
同委員会では,具体的には,「市が提供する市政の情報を基に市民生活に関わる重要な課題の対応や施策の立案などについてのアンケート調査」へ「回答(複数回)」や「任期中2回程度」開催される「市民委員会研修会や市政に関する説明会等への参加」すること,そして,「市から提供する市政に関する資料を活用した自主的学習」*5を行うことが想定されている.
1967年10月22日に横浜市にて,当時の市長の「再選運動を展開していた」会により「自主的な運営」として開催された「一万人市民集会」*6は,1回の開催.ただし,その後「市民相互の討論集会」が「42回」の開催され,そして,1974年から1975年の間に「区民会議」が設置されることとなる.方や,同会では会本体として継続して開催されることが想定されるなかで,「委員と委員の情報交換する場」に関しては「市のホームページに委員会専用ホームページを設け,情報発信をはじめ,情報を共有できるよう,例えば掲示板の様な機能ができる仕組みづくりを考えてい」*7るとも紹介.なるほど,その参加の場も「街頭」*8や会議室,体育館に留まらず,場のかたちを代え議論することが想定されている模様.
「戦後日本の自治制度は,国の制度よりは,元来,直接民主制への傾向が強い」*9と解されるものの,存外,住民間でのヨコの議論の場に関する制度は,自治体による制度整備に依拠するようでもある.同取組の今後の開催状況は,要経過観察.

*1:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募)「2000人市民委員会

*2:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募2000人市民委員会)「2000人市民委員会の活動内容

*3:山口二郎「政治的意思のない民主党が抱いていた大きな錯覚とは」『週刊朝日緊急増刊 朝日ジャーナル』(朝日新聞社,2011年)18頁

週刊朝日増刊 朝日ジャーナル 政治の未来図

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*4:ジェイムズ・S・フィシュキン『人々の声が響き合うとき』(早川書房,2011年)84頁

人々の声が響き合うとき : 熟議空間と民主主義

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*5:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募2000人市民委員会:「2000人市民委員会の活動内容)「2000人市民委員会とは?

*6:高村直助『都市横浜の半世紀』(有隣堂,2006年)230頁

都市横浜の半世紀―震災復興から高度成長まで (有隣新書 (62))

都市横浜の半世紀―震災復興から高度成長まで (有隣新書 (62))

*7:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募2000人市民委員会:「2000人市民委員会の活動内容)「Q&A

*8:前傾注3・山口二郎2011年:18頁

*9:金井利之「直接参加制度に関する諸問題」『都市とガバナンス』vol.16,2011年9月,11頁

都市とガバナンス 第16号

都市とガバナンス 第16号