熊本市オンブズマン制度が来月1日からスタートする。市自治基本条例に基づく制度で、オンブズマンが市政への苦情を中立的な立場で調査する。
 オンブズマン原田卓弁護士と吉田勇・熊本大名誉教授が担当。市の仕事とその仕事に関わる職員の行為について、事実があった日から原則1年以内の苦情を調査する。ただ裁判などで係争中の事案や、議会関係は扱わない。市民以外の人でも申し立てできる。苦情申立書に記入してオンブズマン事務局に提出すると、オンブズマンが内容を審査し担当部署などを調査。結果は申立人と市に通知し、必要な場合は勧告・意見表明をして、内容を市政だよりなどで公表する。
 事務局は同市手取本町1の1のマスミューチュアル生命ビル2階(096・328・2916)で平日午前8時半〜午後5時15分に受け付ける。【澤本麻里子】

本記事では,熊本市に設置された市民オンブズマン制度が,2011年11月1日より運用されることを紹介(結果的ではありますが,3日続けての熊本市に関する記事となりました).
熊本市自治基本条例の第23条では,「市は,公平かつ中立的な立場で市長等が行う市政に関する市民の苦情を処理するための機関として,別に条例で定めるところにより,公的オンブズマンを設置します」*1と規定されており,同規定を受けて,2011年2月23日付の本備忘録では,その設置条例案を同市議会へ提出される方針であったことを紹介.2011年3月に制定された同条例は,同市HPを参照*2
同制度では,同条例第7条により「苦情に係る調査に基づき見解を示し」「必要と認めるときは,市の業務に関し,是正等の措置を講ずるよう勧告」,または「制度の改善を求める意見を表明すること」がその職務とされており,同条例第22条に基づき「市の機関」においては「尊重しなければならない」*3と尊重義務が要請されている,自治体内に設置されつつも,「政治エリートに対する適切な支持・批判・要求・監視の機能」による「政府の統治パフォーマンスを高め,良き統治を実現」*4することに資することも,同制度のこれらの職務には想定されている模様.方や,他自治体で設置された同制度運用の内観に基づく分析から,これらの職務は「柔軟な形での運用」が図られており,むしろ「伝家の宝刀として扱われ」ることで,勧告及び意見表明の実施を「回避」*5される.同市における同制度の運用もまた要観察.

*1:熊本市HP(市民協働のひろば熊本市自治基本条例)「熊本市自治基本条例

*2:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募ご存知ですか?公的オンブズマン制度を作っています(市としての条例案づくり))「熊本市オンブズマン条例

*3:前傾注2・熊本市熊本市オンブズマン条例)

*4:坂本治也『ソーシャル・キャピタルと活動する市民』(有斐閣,2010年)219頁

ソーシャル・キャピタルと活動する市民 -新時代日本の市民政治

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*5:伊藤智基「法執行の評価・見直し」北村喜宣・山口道昭・出石稔・礒崎初仁『自治政策法務』(有斐閣,2011年)248頁

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

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