議会に慎重論も
 浜松市は15日の市議会行財政改革特別委員会で、2014年度に市民の判断を問う住民投票条例を制定することを柱とする、行政区再編の工程表を示した。投票の実施時期は明示しなかったが、早ければ15年春の統一選と同時に実施する想定。工程表が固まったことで、再編論議がいよいよ動きだすことになる。
 工程表のスケジュールでは、本年度から来年度にかけて庁内で区再編原案を検討。これをたたき台にアンケートなどで住民意向調査を実施し、来年度から13年度にかけて市民会議で再編案を検討する。14年度中に再編案を確定させ、併せて同年度中に住民投票条例の制定を図るとしている。市側は行政区の再編には職員数の削減、庁舎などの資産の集約が可能になるといったメリットがあると説明。また住民投票は公職選挙と同時実施することで、投票率の向上と経費節減を図ることができるとした。一方、委員からは「再編ありき。住民投票をする根拠が分からない」などといった慎重論が相次いだほか「工程表に縛られるべきではない」といった意見もあった。北遠地域選出の委員は「身近なところに行政窓口を置き、生活を守っていくべきだ。住民投票をやると人口が多いところの意見で決まる」などと懸念を述べた。

丁寧に合意形成を
 浜松市の行政区の再編は行政効率などの観点から、削減の方向で企業経営者らが中心の行財政改革推進審議会(行革審)が重ねて求めてきた。一方、過疎地域や限界集落を抱える旧浜松市以外の地域を中心に、行政の目が行き届かなくなるのでは、との懸念も強い。市は市民の判断を問う住民投票の想定時期を、2013年の知事、参院選に合わせる案と、15年の統一選に合わせる案の2案を並行して検討した。後者を選んだのは、こうした慎重論に配慮して「丁寧に進める」という市首脳の意向だったという。投票の実施時期をあえて明示しなかったのもこのためだ。市は今後、市民会議などを通して幅広い意見を聞くと強調するが、これを単にガス抜きではなく、合意形成の場にするべきだ。容易でないことは分かる。しかし、そうでなければ合併後、ようやく芽生えつつある新・浜松市の一体感に傷をつけることになる。(荘加卓嗣)

本記事では,浜松市議会における行政区の削減・廃止に関する検討状況を紹介.
2009年7月12日付及び同年8月20日付の両本備忘録で記録した同市の行政区削減の検討状況.「浜松市に行政区を設ける必然性はない」*1との答申を示された第2次行財政改革推進審議会の後に,2009年12月から2011年10月の間で「第3次」*2の同審議会が設置され.2011年10月18日に「答申書」を提出.同「答申書」を拝読させて頂くと,「区の削減・廃止」に関しては,第2次審議会の後,「平成22年8月に庁内組織「区制度検討会」が設置されるものの「市が作成したマニフェスト工程表の内容」が「行政区再編の課題の整理を平成23〜25年度,課題整理,検討の過程の市民への情報公開も平成23〜25年度と曖昧」であること,「区割り検証の取り掛かりが遅い」*3との評価が示されている.そこで,同審議会では,「詳細な工程表を平成23年12月末までに示すこと」,そして,「早く区割りの検証に取り掛かり,区再編のメリット・デメリットや検証過程を早期に公開すること」*4を答申されている.
本記事では,同答申を踏まえて,工程表が,同市議会に設置された「行財政改革特別委員会」*5に提示されたことを紹介.ただし,同特別委員会の審議内容は,同市議会HPからは,現在のところ確認ができず,残念.本記事に掲載されている工程表を拝読させて頂くと,2012年3月迄に「区制度の検討・検証」を終え,同年9月迄に「区再編原案」を「検討」,その後,「区の再編に関する住民意向調査」を同年12月迄に実施.あわせて,市民会議にて,2012年10月から2013年5月頃の間で,「区再編案の検討」を行う.2013年7月からは区協議会・市長地域懇談会などで「区再編案」を検討.2014年7月には住民投票条例の制定を目指し,2014年10月迄に「区再編案」が「確定」したうえで,2015年に実施される「公職選挙と同時」の住民投票を実施する工程の模様. 
「より多くの民主主義」*6を具体化する観点のみならず,行政区制度の改正においても「大規模な集合を求める遠心的な方向」と「小規模な集合を求める求心的な方向」*7の2つが想定されそう.これらのうち,前者である,再編,そして,削減という「遠心的な方向」で検討を進められようとされる同市.再編は,兎も角,廃止となると,上記の第2次審議会の意見書にも示されているように,政令指定都市制度における「行政区」が「必置制度」*8であるため,その緩和が必要となる.2012年から「大都市制度を検討」*9されるとも報道されている地方制度調査会において,「自由度の拡大路線」*10の流れに棹をさすように,現行の政令指定都市制度の「組織統制」*11でもある行政区についても検討がなされるのだろうか.要経過観察.

*1:浜松市HP(浜松市行財政改革推進審議会浜松市行財政改革推進審議会 提言・答申等)『意見書(「行政区の廃止または削減」「議会の改革」「区協議会の充実」について)』(平成21年7月10日)4頁

*2:浜松市HP(浜松市行財政改革推進審議会)「審議会開催情報 第3次行革審

*3:浜松市HP(浜松市行財政改革推進審議会浜松市行財政改革推進審議会 提言・答申等)『浜松市行財政改革に関する答申書』(平成23年10月18日)7頁

*4:前傾注2・浜松市浜松市行財政改革に関する答申書)8頁

*5:浜松市HP(市議会)「平成23年11月〜平成24年1月の委員会日程

*6:山口二郎「政治的意思のない民主党が抱いていた大きな錯覚とは」『週刊朝日緊急増刊 朝日ジャーナル』(朝日新聞社,2011年)18頁

週刊朝日増刊 朝日ジャーナル 政治の未来図

週刊朝日増刊 朝日ジャーナル 政治の未来図

*7:ロバート・A・ダール,エドワード R.タフティ『規模とデモクラシー』(慶應義塾大学出版会,1979年)222頁

規模とデモクラシー

規模とデモクラシー

*8:前傾注1・浜松市(意見書(「行政区の廃止または削減」「議会の改革」「区協議会の充実」について))4頁

*9:東京新聞(2011年12月16日付)「「減税」直接請求 先送り 知事会 難色で後退

*10:西尾勝「四分五裂する地方分権改革の渦中にあって考える」『分権改革の新展開』(ぎょうせい,2008年)3頁.

年報行政研究43 分権改革の新展開

年報行政研究43 分権改革の新展開

*11:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『改訂版 ホーンブック地方自治』(北樹出版,2011年)144頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治