大阪市橋下徹市長と市幹部による政策や事業の仕分けが23〜25日の日程で始まった。市の最高意思決定機関として新設した「戦略会議」で、多岐にわたるテーマを、広域行政を扱う「府市統合本部」や身近な住民サービスを担う「区」などに分類し、人事や財政に関わる問題点も洗い出す。初日の23日は、2014年度までに府内の水道事業の組織を統合する計画などが示された。
 会議は市役所内で午前9時からスタート。この日はほかに、交通や都市計画などインフラに関わる課題が取り上げられ、午後4時半まで、12の部局担当者が出席した。「うれしいです。ここまで水道局がマネジメントしてくれて」。橋下市長が府市統合本部の最重要課題と位置付ける水道事業の統合。水道局が、14年度までに市の水道事業と大阪広域水道企業団との統合を進め、15年度から大阪府域の水道サービスを一本化するロードマップを示すと、橋下市長は顔をほころばせた。橋下市長は「将来の海外展開や水ビジネスも見据えたい」と話し、来年2月の市議会に市が企業団に参加する議案を提出する予定。懸念される市内の水道料金の引き上げも、会計処理などで当面、据え置かれる見通し。
 ■交通局が地下鉄値下げ3案 市営地下鉄の料金下げについては、初乗りの20円値下げや、利用者の多い梅田―心斎橋を230円から180円にする案など交通局が3パターンの値下げ案を提示した。130億〜65億円の減収となる計算で、府市統合本部で議論される。橋下市長は「鉄道ネットワークは都市を強化する最たるもの」と指摘。府市統合本部で、市営地下鉄の延伸や私鉄との連結などについて、青写真を描く。「これをやるためにダブル選をやった」と橋下市長が強調したのが、JR大阪駅北側の再開発エリア「うめきた」や御堂筋の活用法などの街づくり計画だ。計画調整局が、御堂筋を中心とした計画のイラストを見せると、橋下市長は「市だけの範囲で物事を考えることはしません」と宣言。「彩都や京阪奈東大阪などもっと大きくとらえて」と訴えた。持論のうめきたの2期地区の緑化も「その方向で」と指示した。
 ■学校選択制「区長主導で」 一方、この日、最も多く聞かれた橋下市長の発言は「それは、区長さんに決めていただくようにしましょう」。区長を市長に次ぐ地位に格上げする方針を示している橋下市長。区長に予算の編成権の一部を任せ、住民サービスの多くを区長の決定に委ねるという。現在、通える市立の小中学校は居住地によって決められているが、橋下市長は学校を自由に選べる選択制を主張。この日の会議で、制度のあり方などについて区長が主導して決めることを求めた。「やっても良いという区は先行的に始めても構わない」と強調した。このほか、市の未利用地の活用方法など、地域の課題について区長の権限を強化することを確認した。24区の区長らで構成する区長会議を公開にし、透明性の高い決定の仕組みを作る方針。
 一方、地下鉄やバスの運転手の給与が民間に比べて高いことから、給与の引き下げについても議論した。橋下市長は「来年4月1日を目指して、民間の水準に合わせる」と明言。このほか、地下鉄の売店業者の選定方法の変更などの改革案も取り上げた。

大阪市事業仕分けといわれた戦略会議が24日終わった。当初は3連休返上で25日までの予定だったが、1日早く終了。橋下徹市長は戦略会議を、市長就任前に幹部に示した方針に対する「反論を聞く場」としていたが、激しい応酬はほとんど見られなかった。
 2日間で25部局に及んだ会議は各部局30分の予定だったが、組織改革を決める総務局(15分)、予算編成方針を定める財政局(14分)など重要課題もすんなり進行。市側の反論は市立幼稚園の民営化方針に対して「小規模園は経営が成り立たなくなる」(こども青少年局)など一部だった。
 橋下市長は「対応が非常にスピーディーで満足している」と総括。就任前に「市役所解体」を公言、職員の激しい抵抗も予想されたが、この日も予定より1時間半早く終了。ある幹部は「有権者が新市長を支持したのだから従うしかない」と淡々とした表情で語った。文化事業などを統括、都市の魅力アップが求められる「ゆとりとみどり振興局」について、「要の部局なのにのんきな感じ」として名称変更を指示するなど、細かな点にも独自色を出した新市長。ただ、急ピッチの改革に「実務が本当に回っていくのか」(市議)と懸念する声も上がっており、大方針を実現していく手腕が問われる。

両記事では,大阪市に設置された戦略会議の審議結果を紹介.
2011年12月19日に設置され,同日から開催された同会議.同会議の「決定」*1結果に関しては,同市HPを参照*2.両記事で紹介された同会議は,2011年12月23日から開催され「25部局」にわたる「政策や事業の仕分け」についての「決定」の内容.ただし,同会議の結果は,現在のところ,同市HPでは掲載されていない模様,残念.第2記事からは,会議の結果よりも2日間にわたる会議での応答の状況を紹介.同記事では,「激しい応酬はほとんど見られなかった」とも報道.まさに,「会議の席上スジを主張して正面衝突するような事態を慎重に避ける」*3会議として運用されたのだろうか.公表後,要確認.
2009年10月23日付の本備忘録にて記した,下名の中心的観察課題である「自治体内会議体」の観点からも同会議の制度と運営は,興味深いところ.そこで,従前,同市に設置されていた「政策会議」と,戦略会議との制度面での対比を,両会議の設置規定*4に基づき整理を行ってみると,下記の表の通りとなる.

項目 規程 政策会議(2010年6月2日〜2011年12月18日) 戦略会議(2011年12月19日〜)
招集・主宰 第3条第2項 市長 市長
構成員 第3条第1項 市長,副市長,政策企画室長,情報公開室長,市政改革室長,総務局長,財政局長及び計画調整局長 市長,副市長,政策企画室長,政策企画室大都市制度改革監,市政改革室長,総務局長,財政局長及び計画調整局長
目的 第1条 市政運営の基本方針,重要施策その他の市政の重要事項について,都市経営の観点から迅速かつ戦略的に決定し,市政を総合的かつ効率的に推進するため 市政運営の基本方針,重要施策その他の市政の重要事項について,都市経営の観点から迅速かつ戦略的に決定し,市政を総合的かつ効率的に推進するため
所掌事務 第2条 ①市政運営の基本方針の決定に関すること,②重要施策その他の市政の重要事項に関すること,③新たな施策若しくは事務事業又は複数の局にわたる施策若しくは事務事業で,所管する局が明らかでないものに関する主管局の決定に関すること,④その他前条に定める目的を達成するため市長が必要と認める事項 ①市政運営の基本方針の決定に関すること,②重要施策その他の市政の重要事項に関すること,③新たな施策若しくは事務事業又は複数の局にわたる施策若しくは事務事業で,所管する局が明らかでないものに関する主管局の決定に関すること,④その他前条に定める目的を達成するため市長が必要と認める事項
庶務 第4条 政策企画室 政策企画室

両会議間では,その構成員が政策会議の「情報公開室長」から,戦略会議の「政策企画室大都市制度改革監」へと変更.ただし,招集・主宰は勿論,目的,所掌事務,庶務の各項目は,規程上は変更なく規定されている.特に,両会議の目的の何れもが,「決定」の場として,規程上は規定されており,まさに,「重要な意思決定」は「全て会議の場で集団的におこなわれている」*5ことになる.制度面では,連続の反面,会議体の運用面ではどのような非連続が観察されるのだろうか.意思決定手続に内在する「今日の慣行は過去に根があり,ある組織の今日の慣行の背後には以前の時期から残った価値及び理解が層」となる「堆積化」*6の傾向性に対する,同会議内での「決定」事項の今後の事案決定処理も,要経過観察.

*1:大阪市HP(市の主要計画、指針・施策都市経営・総合調整戦略会議)「戦略会議の開催概要

*2:大阪市HP(市の主要計画、指針・施策都市経営・総合調整戦略会議)「大阪市戦略会議設置規程

*3:大森彌「日本官僚制の事案決定手続き『年報政治学』Vol.36,1986年,112頁

*4:大阪市HP(市の主要計画、指針・施策都市経営・総合調整過去の会議(政策会議・都市経営会議・執行会議)政策会議)「大阪市政策会議設置規程

*5:西尾勝行政学 新版』(有斐閣,2001年)315頁

行政学

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*6:B.ガイ ピータース『新制度論』(芦書房,2007年)168〜169頁

新制度論

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