世田谷区の2014年から20年間のビジョンを定める保坂展人区長の諮問機関・基本構想審議会(会長・森岡清志放送大教授)が始動した。来年12月に素案をまとめる予定だが、運営方法をめぐって早くも議論が白熱し、委員から「時間が足りないのでは」との声も。行政計画は、事務局のお役所主導になりがちだが、どこまで「民意」を反映する場になるか。 (原昌志)
 「働き盛りの区民らの意見も聞く工夫をしたい」十三日夜の初会合。事務局の区側の説明に、委員からは「具体的にどうするか」「聞くだけでなく区民が主体的に参加することが重要」など早速意見が噴出した。「なぜ在住外国人が委員にいないのか疑問」の指摘もあがり、区側に対応を迫った。「一年間で議論が尽くせるのか」との声も出た。審議会の委員は二十五人。学識経験者には、NPO法人環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也氏、首都大学東京教授の宮台真司氏、昭和女子大学長の坂東真理子氏ら、保坂区長のカラーをうかがわせる著名論客を招いた。区民委員の町会や商店街関係者、区議らも活発に発言し、森岡会長からは「会長を引き受けて後悔している」と冗談も口をついた。大きな方針を決める審議会の下に、個別のテーマを検討する部会の設置を決めたが、この部会も全面公開と決定。「自由な議論を損なうのでは」との懸念も出たが、「発言できない人は委員の資格はない」など原則論が押し切った。
 審議会後、保坂区長は「多くの審議会は、ほとんど役所の説明で終わってしまう。これだけ意見が出たのは時代の変化を示しているのでは。住民参加のプロセスは丁寧にやりたい」と話した。審議会は来年二月から部会会合を開き、三月中旬に区民参加のシンポジウムを予定。夏前には各地域で区民意見交換会などを行い、同年内に素案の取りまとめ、翌年春に答申する。脱原発路線や、特別区制度のあり方などもテーマになる見通し。議事録などは区のホームページで公開する。

本記事では,世田谷区における基本構想策定に関する審議状況を紹介.
同区に設置された「基本構想審議会」では,「世田谷区基本構想審議会運営実施要領」の第4条に基づき,同「会議は,原則として公開」*1とされている.そして,本記事の最末尾でも「議事録などは区のホームページで公開」とも紹介されているように,確かに,同回の配布資料を拝読させて頂くと,「審議会の議事録は,出席委員全員の確認を得て,発言者の氏名を含めて公開」*2されることになる.ただ,同審議会の公開は,傍聴,議事録の公開に留まらず,同区がYouTube上に設けている「世田谷区オフィシャルチャンネル」*3を通じて,審議会の内容を同動画で発信されることも特徴的.実際に,既に,第1回の同審議会の様子を視聴可能*4となっている.
YouTubeには,「2011/12/13 にアップロード」*5と,第1回目の開催日であった2011年12月13日の即日に掲載されたことが記録.動画の公開に関しては,同回の配布資料を拝読させて頂くと,「審議会は,録画編集し,動画により区のホームページで公開」*6とある.そのため,「録画」と「編集」の手続を経ることが想定.ただ,実際の第1回の同審議会の画像を視聴する限りでは,2時間23分20秒分の「録画」画像が配信されており,「編集」に関しては,特段行われていない模様(実際は,「編集」されているでしょうか).
「議事録」の公開の手続では「出席委員全員の確認を得て,発言者の氏名を含めて公開」されるとも同資料では記述.つまりは,「確認」手続を通じて,各委員の発言趣旨や発言足らずの部分,冗漫な発言部分等々を,適宜「加工」*7されることを想定されるのだろう.方や,「動画」に関しては,議事録の公開に関しては明記されている,「出席委員全員の確認を得て」という,公表に際しての出席委員全員からの事前確認手続は明記されてはいない.反対解釈的ではあるものの,撮影された動画に関しては「出席委員全員の確認を得」ずに公開されることが許容されている,との理解もできなくもない.なるほど確かに,画像の配信は,審議会の時間と空間を異にするものの「傍聴」*8の一形態として動画を位置づければ,その確認手続は必要はないとも考えられなくはない.方や「傍聴」に関してはも「会議ごとに傍聴申込書」「により会長に申請」する手続が整備されている(ただ,傍聴者には「写真,ビデオの撮影,録音又は録画をしないこと」が世田谷区基本構想審議会傍聴要領第4条にて規定されていはいる).動画の公開手続に関しては,要確認.
審議会における,動画の配信と文書としての議事録の公表との関係は,下名,関心のある観察課題の一つ.とりわけ,動画の撮影を通じて,審議会内の各委員の発言において,いわゆる「特別訴答(special pleading)」の抑制に至るのか,はたまた,増進に結びつくものなのかは関心のある観察課題.ただ,その記録性に関しては上手く整理ができないこともある.例えば,2010年3月20日付の本備忘録にて言及した,内閣府に設置された地方分権改革推進委員会における審議状況の動画配信に際して,同委員会では「この動画配信は、地方分権改革推進委員会の公式記録ではありません」とも明記.審議会の「実際」を伝える手段としては,何れが適切なのだろうか.考えてみたい観察課題.