政府は29日、首相官邸で「国と地方の協議の場」を開き、消費税を5%引き上げた場合の国と地方の配分について、国を3・46%、地方を1・54%とすることで地方側と合意した。政府・与党の「税と社会保障一体改革」の素案に盛り込む。地方への配分を巡っては、財務、厚生労働両省が1%程度、地方6団体が2%程度を主張し意見が対立していたが双方が歩み寄る形で決着した。
 配分は、国税である消費税率を3・8%、地方税地方消費税率を1・2%と定めた上で、国の税収のうち0・34%分を地方交付税として地方に回す。現行税率の5%と合わせると、増税後の消費税収の配分は、国が63%、地方が37%となる。増税後の消費税は、医療、年金、介護、子育て支援社会保障4経費の財源に充てることが決まっている。現在の4経費の負担割合は国と地方で3対1程度。国側は当初、地方への配分はこの割合に沿って1%強程度としたい考えだった。一方、地方側は「予防接種や乳児健診など、地方が自前の財源で賄っている事業(単独事業)も住民に不可欠な社会保障サービスだ」と主張。単独事業分(総額6・2兆円)にも配慮するよう求め、2%近い配分を求めていた。29日の協議では、地方単独事業6・2兆円のうち、人件費などを除いた2・6兆円を消費税でまかなうことで国側が譲歩。国と地方の社会保障4経費の負担割合を7対3程度と改めた結果、両者の主張の中間で決着した。
 政府は、国の基礎的財政収支の対GDP(国内総生産)赤字幅を、15年度に10年度比で半減する目標を掲げている。地方への配分が想定より増えたことで、目標の達成はより困難となる見通しだ。全国知事会山田啓二会長(京都府知事)は、「地方単独事業の意味を最後の段階で柔軟に見てもらった」と評価した上で、国に増税時の低所得者対策などを注文した。【坂井隆之】

本記事では,国と地方の協議の場が開催状況を紹介.
内閣官房HP内の「国と地方の協議の場」サイトからは,同協議の場は8回目の同協議の場.ただし,その位置づけは,国と地方の協議の場に関する法律第4条第1項のただし書きである「内閣総理大臣は,協議の必要があると認めるときは,臨時に協議の場を招集することができる」の規定による「臨時会」として開催.同法第4条第1項では,「毎年度,議長が協議の場に諮って定める回数」を議長が招集されることとなり,具体的には,「国と地方の協議の場運営規則」に基づき「毎年度4回開催」*1と定められており(以下,「定例会」と呼ぶ),協議の場の開催には,いわば,開催回数の総量規制が定められている.
本年度の臨時会は,これまでに,2011年8月14日付の本備忘録に第1回が2011年8月12日に始まり,第2回が同年11月29日,第3回は同年12月20日,第4回が同年同月26日に開催.本記事で紹介されている会合は第5回目となる(12月20日の会合のURLでは「dai4」とありますが,この記載ですと定例会となりますが,正確には臨時会として,「rinji3」ではないかとも想定されますが,実際の同会合の位置づけは何れが正確なのでしょうか).
これらの臨時会では,2つのテーマが審議.「社会保障・税一体改革について」に関して,第1回臨時会(会議時間30分)*2,第4回臨時会(会議時間50分)*3,そして,本記事で紹介されている第5回臨時会(会議時間30分)*4で協議.もう一つは,「子どもに対する手当について」をテーマに,第2回臨時会(会議時間60分)*5と第3回臨時会(会議時間20分)*6で協議が図られている.ただし,2011年12月15日に開催された第3回の定例会(会議時間55分)のように,同回では「社会保障・税一体改革分科会における議論の経過について」と「子どもに対する手当について」*7に関しても協議が行われており,定例会と臨時会の間で,必ずしも,協議内容での相異に基づき,その位置づけの使い分けがなされはいない.まさに「課題に応じて」*8臨時会が開催され,定例会では処理しきれない協議事項を補いつつ,定例会,臨時会を問わず,連続的に協議を図る場として運用された模様.
本記事で紹介された第5回臨時会は,まず,「地方単独事業」に関して3つの事項が協議.具体的には,「「社会保障四分野」(「年金,医療,介護,少子化に対処するための施策」)に該当」するもの「地方単独事業を対象とすることを基本」とすること,「給付」に関しては「受益が直接個人に帰属しない事業について精査」し「事務費及び事務職員の人件費等を除外すること」,「地方財政計画や地方交付税における需要額をメルクマールとして「制度として確立された」地方単独事業を定量的に整理」*9することを,「地方単独事業の総合的な整理」として内閣官房総務省財務省厚生労働省から提案. 次いで,「消費税率(国・地方)の引上げ分を5%とする場合」には,本記事にて報道されているように,「社会保障四経費の分野に則った範囲の社会保障給付における国と地方の役割分担に応じて」,「国分3.46%」「地方分1.54%」*10とすることも総務省財務省から提案され,「合意」に至ったとされる.今後,例えば,2014年「4月に8%,15年10月に10%」*11と段階的に消費税制の改正が具体化された場合,2014年4月から2015年10月迄の18ヶ月という間奏曲が奏でられる合間では,その配分を如何に進めるのだろうか.今後の協議の過程も,要経過観察.

*1:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場国と地方の協議の場(平成23年6月13日(月))「資料1−1国と地方の協議の場運営規則(案) 」1頁

*2:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場)「国と地方の協議の場(平成23年8月12日(木)

*3:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場)「国と地方の協議の場(平成23年12月26日(月)

*4:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場)「国と地方の協議の場(平成23年12月29日(木)

*5:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場)「国と地方の協議の場(平成23年11月29日(火)

*6:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場)「国と地方の協議の場(平成23年12月20日(木)

*7:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場)「国と地方の協議の場(平成23年12月15日(木)

*8:松本英昭『自治制度の証言』(ぎょうせい,2011年)101頁

自治制度の証言―こうして改革は行われた

自治制度の証言―こうして改革は行われた

*9:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場国と地方の協議の場(平成23年12月29日(木))「資料1 地方単独事業の総合的な整理」1〜2頁

*10:内閣官房HP(政策課題各種本部・会議等の活動情報国と地方の協議の場国と地方の協議の場(平成23年12月29日(木)資料2 総務省・財務省提出資料

*11:時事通信(2011年12月30日付)「14年4月8%、15年10月10%=消費増税、半年先送り−修正案を了承・民主