県や市などの議会に併設された図書室の利用が低迷している。議員のために設置されたものだが、2万冊近くを所蔵する県議会図書室でも、議員1人当たりの図書貸し出し件数は年間1・59冊にとどまる。よく利用する議員からは「もったいない」と、活用促進を求める声も上がる。
 地方自治法100条が議会に官報や政府刊行物などの保管を義務づけていることから、各自治体は議会に図書室を設置している。貸し出しは原則、議員や職員に限られる。県議会事務局によると、県議会図書室の2010年度の県議への貸し出し実績は92冊。県議定数58で頭割りすると議員1人当たりの貸出数は1・59冊。ただ、事務局は「10年度は延べ約3300人が閲覧に訪れ、議員の依頼で事務局職員が調査することも多い。一概に少ないとは言えない」と理解を求める。実際、県職員への貸し出しは272冊あり、これを含めれば議員1人当たり6・28冊に跳ね上がる。
 県議会図書室の蔵書は1万9187冊。県は今年度、図書購入費として127万円を計上した。内訳は、国の白書などの行政関係資料が5割、政治経済などの一般図書が4割、郷土資料などが1割。一般図書では田中康夫元知事に関する書籍が多いのが目を引く。よく利用するという県議は「いつ行っても自分1人が多く、購入して5〜6年の本でも、最初の貸し出しは自分のことも多い。せっかく色々な本をそろえているのに、利用されないのはもったいない」と訴える。
 一方、長野市の議会図書室は2447冊を所蔵。今年度は予算240万円を図書購入などにあてた。09年度の貸し出し実績は、議員が延べ12人、計156冊。09年度当初の定数は39で、1人当たりにすると4冊となる。市議会事務局は「調べ物をする議員は多く、実際はもっと利用されている」との立場。ただ、利用の多い市議は「新しい資料が少なく、政務調査費で本を買った方が早い」と、蔵書充実の必要性を指摘する。また、松本市議会の図書室は1457冊と小ぶりで、今年度の図書購入費はわずか10万円。今年度は今月27日現在で、4人の名前が貸出簿に書いてあるだけだった。市議会事務局は「職員にももっと利用してもらえるよう、どんな本があるのか知らせたい」としている。

本記事では,長野県議会に設置された図書室の貸し出し状況を紹介.
同県「議会棟」*1の1階に配置されている同図書室.物理的には,その設置場所は,同棟に一歩踏み入ることができれれば,決して物理的には分かりにくい場所にあるわけではない模様.また,しばしば「現状はおしなべて貧弱で,利用もされていない」*2 とも評される議会図書館(室)ではあるものの,本記事を拝読する限りでは「1万9187冊」の蔵書があり,決して「貧弱」ではない模様.方や,本記事を拝読させて頂くと,その利用状況は「議員1人当たりの図書貸し出し件数は年間1.59冊」.同利用状況の要因は,上記の物理的な要因ではないようではあるとすれば,他のメディアによる資料・情報を参照され,図書形式の文書・資料の利用離れにあると解することが適切なのだろうか.要確認.
また,鳥取県庁内に設置された職員向けの図書室(いわば,「県庁内図書室」)を除けば,執行部側の職員への図書及び資料は「職場の片隅にある文書管理のための資料棚に,古びた刊行物が申し訳なさそうに並ぶことが関の山」*3という,更に「貧弱」な環境にあることが常である.同県議会の図書室が余り利用されていないとすれば,極めて惜しい情報資源と空間資源.ただし,同図書室もまた「午前8時30分から午後5時まで」の間は,「議員の利用を妨げない範囲で一般の方も利用することができ」*4るため,議員のみの利用が想定されるわけではない.そうであれば,例えば,大学図書館でも採用されつつもある「ラーニング・コモンズ」的に同図書室を組み直すことにより,議員にとっての調査研究支援,議員間の交流,そして,職員にとっての調査研究支援,更には,県民相互の交流といった,「アリーナ」*5としての利活用も考えられないだろうか.

*1:長野県HP(長野県議会議会の概要)「議会棟案内

*2:全国町村会HP(調査・研究:第2次地方(町村)議会活性化研究会)『分権時代に対応した新たな町村議会の活性化方策』(第2次地方(町村)議会活性化研究会,2005年3月),60頁

*3:松井望「働くなかでの学びと図書館 ―自治体行政の職場から―」『りべる』No.120,2011年4月,2頁

*4:長野県HP(長野県議会各種手続き)「議会図書室について

*5:宮崎伸光・田口一博「議会における政策形成」森田朗・宮崎伸光『議会改革とアカウンタビリティ』(東京法令出版,2000年),40頁