和歌山県が職員の採用年齢の上限を引き上げて5年が経過した。30代で入庁した職員が本庁勤務を経て、各振興局に活躍の場を広げている。住宅メーカーや市役所勤務など多彩な社会経験があり「地元和歌山に貢献したい」と意気込んでいる。
 県は2007年度実施の採用試験から、1種(大学卒業程度)の採用年齢の上限を29歳から35歳に引き上げた。即戦力となる人材や民間の活力を呼び込むのが狙い。引き上げ以降、30代は受験者の約3割、合格者の約2割を占める。11年度は受験者1302人のうち335人(25・7%)、採用者102人のうち23人(22・5%)だった。5年間で67人を採用した。採用者は通常2年の本庁勤務を経て、各振興局など出先機関に異動する。
 入庁4年目で海南市出身の吉田誠さん(35)は、11年度から西牟婁振興局建築課で住宅建築の確認や検査業務を担当している。以前は大手住宅メーカーに勤務していたが、地元に根差した仕事がしたいと転身した。「建築業界の経験が生きる部分もあるが、役所はより仕事の幅が広い。資格を取得して、できる仕事を増やしたい」と話す。
 入庁3年目で大阪府河内長野市出身の村部昭憲さん(37)は、本年度から東牟婁振興局総務県民課で防災を担当。「昨年の台風被害の反省を取り組みに生かしたい」と駆け回る。化学会社、徳島県小松島市役所で勤務経験がある。「広域行政に関心があり転職した。市町村と県、出先と本庁では視線が違う。現場の声を集約して本庁に届けるとともに、県と市町村の連携を深め、サービスを向上させたい」と意気込む。
 入庁4年目で大阪市出身の男性職員(36)は、西牟婁振興局総務健康安全課で生活保護を担当する。保険会社に勤務していたが、業績至上主義に違和感があった。「行政の仕事は数値での評価が難しいが、社会に貢献できる充実感がある。精神科病院に入院していた人が、ヘルパー資格を取って生活保護から脱却した事例は本当にうれしかった」と新たなやりがいを感じている。
 県人事課は「多様な人材の確保は行政の活性化になる。採用年齢の引き上げは継続したい」と話している。

本記事では,和歌山県における職員採用年齢の上限引上げ後の職員の執務状況を紹介.
平成24年和歌山県職員採用〓種(大学卒業程度)試験案内」を拝見させて頂くと,「資格免許職」以外の13職に関しては,1977年4月2日から1991年4月1日までに生まれた方を「受験要件」*1と置かれており,受験年齢の上限は35歳となる.同県HPからは,例えば,2011年度のように,各年度の申込者と合格者等の「試験実施結果」*2は確認ができるものの,年齢別の受験者数,合格者数は確認ができない.本記事を拝読させて頂くと,「30代は受験者の約3割」であり「合格者の約2割」となり,「5年間で67人を採用」されたことが分かる.なるほど.
2008年10月10日付の本備忘録内でも,少し触れた行政組織内での「若手」の時期を経ることなく,採用されるこれらの職員の方々の執務スタイル.学卒採用の新規採用職員との間では,やはり,「経験を通して」獲得された「実践知」*3により「組織人」*4となることへの習熟速度が異なるものなのだろうか.もう少し多くの方のお話を伺い,考えてみたい観察課題.

*1:和歌山県HP(リンク集人事委員会トップ ページ和歌山県職員採用情報試験案内)「平成24年度和歌山県職員採用〓種(大学卒業程度)試験案内」2頁

*2:和歌山県HP(リンク集人事委員会トップ ページ試験実施結果)「平成23年度県職員採用I種試験実施結果

*3:楠見孝「実践知の獲得」金井壽宏,楠見孝編『実践知』(有斐閣,2012年)34頁

実践知 -- エキスパートの知性

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*4:桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論 補訂版』(有斐閣,2010年)208頁

組織論 補訂版 (有斐閣アルマ)

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