東日本大震災からの復旧・復興に向けた仙台市の施策に対し、市民はライフラインの復旧を除いて「進んでいない」と批判的に受け止めていることが、市が実施した市民意識調査で分かった。市は復興事業の進み具合を「予定通り」と自己評価しており、市民感覚との隔たりが表面化した形だ。
 復旧・復興施策の10項目のうち主な3項目の調査結果はグラフの通り。「進んでいる」「どちらかといえば進んでいる」を合わせた回答が最も多かったのは「ライフラインや公共施設の復旧」で86.4%。半面、「防災対策の見直し、防災の教育や啓発」(28.6%)「被災者の生活再建支援」(22.4%)「集団移転や復興公営住宅の建設」(17.8%)など他の項目は、総じて3割にも届いていない。中でも「被災宅地の復旧・再建」は9.6%、「道路のかさ上げを中心とする多重的な津波対策」は8.4%にとどまった。独自方式で注目されるがれき処理は31.9%と3割を超えたが、「進んでいない」「どちらかといえば進んでいない」の合計(52.3%)を下回った「津波に遭った東部農地の再生」や「復興特区制度による企業誘致や新産業創出」の項目では、「分からない」と答えた割合も3割前後に上り、分野によって市民の関心がばらつく傾向もうかがえた。
 市は震災復興計画に掲げた「100万人の復興プロジェクト」54事業の進行状況(7月末時点)を全て「おおむね予定通り」と判定している。企画調整課は「集団移転や被災宅地の復旧は目に見える動きにはなっていないため、評価が低いのではないか。調査結果を市政運営に柔軟に反映させ、取り組み状況を分かりやすく市民に伝えたい」としている。調査は6、7月、無作為抽出した18歳以上の市民5000人を対象に郵送で実施した。回答率は42.4%。

本記事では,仙台市における復興施策に対する市民意識調査の結果を紹介.同調査結果は,同市が2012年8月24日に公表された『平成24年度施策目標に関する市民意識調査報告書』*1を参照.
同日に公表された資料「100万人の復興プロジェクトの進捗状況」*2を拝見させて頂くと,掲載されているいずれの事業の「進捗」度も「概ね予定どおり」との認識が示されている.一方,上記の意識調査からは,
なるほど確かに,「水道,ガス,地下鉄等のライフラインや市民利用施設など公共施設の復旧」に関しては,86.4%の方が「進んでいる」と「どちらかといえば進んでいる」との認識を示されてはいる.ただし,次いで高い割合は,「震災がれきの処理」でも31.9%,「震災の教訓を踏まえた防災対策の見直し,防災に関する教育や啓発」の28.6%,「就労支援や心身の健康確保など,被災された方々への総合的な生活再建支援」は22.4%という認識が示されている*3
災害後の「レジリエンス」の確保に至るまでには,「個人や家族の社会心理面での安寧,組織面・制度面での復旧,経済面・消費面・生産面での復旧,社会基盤整備の復旧,公共の安全確保等の少なくとも5つの段階」*4があるともされるなか,まずは,顕然化されやすい社会基盤整備面に対しては,その回復との高いとの認識では共有.「平静さ(equilibrium)の回復」*5し,その顕然化に至る迄は,他の段階についても時間が更に必要ということなのだろう.復興計画の顕在化と復興のための時間の二つ関係は考えてみたい.

*1:仙台市HP(記者発表資料 2012年度(平成24年度)平成24年度「施策目標に関する市民意識調査」の結果をお知らせします)「平成24年度施策目標に関する市民意識調査報告書」(仙台市 総務企画局 企画部 企画調整課,平成24年8月)

*2:仙台市HP(記者発表資料 2012年度(平成24年度)100万人の復興プロジェクトの進捗状況をまとめました)「平成24年度施策目標に関する市民意識調査報告書」(仙台市平成24年8月29日)]」(仙台市 総務企画局 企画部 企画調整課,平成24年8月)

*3:前掲注・仙台市平成24年度施策目標に関する市民意識調査報告書)11頁

*4:Daniel P. Aldrich(2012)Building Resilience: Social Capital in Post-Disaster Recovery,Univ of Chicago Press,p.7

Building Resilience: Social Capital in Post-Disaster Recovery

Building Resilience: Social Capital in Post-Disaster Recovery

*5:Ibid., p.7.