関西広域連合は八日、安倍晋三首相率いる新政権に申し入れる要請事項をまとめた。近く井戸敏三連合長(兵庫県知事)が国に提出する。国出先機関の地方移管といった従来の主張に加え、昨年末の会合では広域連合内で意見が割れた首長の国政参加をめぐっては「参議院への地方代表の参画」という形で要請事項に盛り込んだ。
 要請は「新政権に対する期待」と題し、地方分権の推進と予算編成での喫緊課題の対応を二大テーマとした。地方分権の推進を求める項目では、自民が政権公約に掲げた道州制を見据えるならば、中央省庁の事務や権限、財源を地方に移譲し、地方の税制度の見直しも実施すべきだと提言。予算編成の項目では、原発の新安全基準の早期策定や、関西への首都機能バックアップ構造の構築などを求めている。参議院と地方との関係では、昨年末の会合で嘉田由紀子知事や橋下徹大阪市長が、地方自治法で禁止されている首長と参院議員の兼職を認める要望を要請文に含めるよう主張したが、他の知事らから反対意見も上がっていた。今回まとめた要請では「参議院への地方代表の参画などを図ること」に表現を抑え、首長の兼職の是非については今後の検討課題とした。(中尾吟)

本記事では,関西広域連合における新政権への要望事項のとりまとめ結果を紹介.同要望事項は,同連合HPを参照*1
同要望事項内では,「地方分権の推進」と「予算編成等において喫緊の対応を要請する事項」の二つの事項から10項目が要望されている.本記事で紹介されている「首長の国政参加」は,同要望内では「道州制に関する地方意見の反映」のなかで次のように記載する(2頁).

我々においても,国と地方を通じた統治機構の在り方について,議論を深めていくが,その検討に当たっては地方分権改革の原点に立ち返り,地方意見を最大限反映すること. そのため,国と地方協議場を十分活用するともに, 参議院への地方代表参画などを図ること.

地方自治の砦」*2として,両院制を維持する場合での「参議院の議員の選挙制度自治体関係者による間接選挙」案,参議院を廃止した場合でも,その後の一院制での「国会とは別に副次的な立法審査機関としての自治体代表者から構成される地方自治保障院(仮称)」案があるとすれば,後者は,参議院廃止という険しい道程ともなる.そのための「参議院への地方代表参画」との記述からも前者の具現化案としても整理ができそう.
ただし,同要望では「国と地方協議場を十分活用するともに」との要望もあることも特徴的.つまり,事実上の「立法審査機関」として「国と地方の協議の場」が活用されることで,まずは,「国の立法過程に自治体関係者の意見を有効に投入することができる恒常的な仕組み」*3として,「地方代表参画」の目的であるはずの「市民に身近な立法」*4づくりの実績をあげておくことが,「参議院への地方代表参画」の具体化への根拠になるとも考えられそう.

*1:関西広域連合HP(報道発表平成25年1月8日 「新政権に対する期待」の提出)「新政権に対する期待 新政権に対する期待

*2:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)165頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*3:前掲注2・西尾勝2007年:166頁

*4:成田頼明『地方自治の保障』(第一法規,2011年)117頁

地方自治の保障《著作集》

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