本日は,同書.先日,研究費で入手.年度内の業務も先週末で終えることができ,ようやく今週1週間は読みたい本を読めそう.まずは,同書.
「日本における選挙管理に関する政治学行政学的研究の嚆矢」(3頁)となる同書.「日本では,選挙管理はきわめて技術的な領域で,政治学行政学の研究分野として重要であるとは認識されてこなかった」(同頁)とされるなかで,しかし,なぜ選挙管理は行政研究の対象から外れているのだろう,と思い読み進めていると,曽我謙悟先生が執筆された「第2章選挙ガバナンスに関する研究の動向と展望」のなかで次のように解説されており,納得しました.
つまり,既存研究の動向からは,選挙による「公平性と効率性というアウトプット」と「そのアウトプットがもたらす選挙不正の程度や選挙に対する人々の信頼など,アウトカム」の二つのうち後者に焦点があり,前者は「ないのが現状」であること.そして「アウトプットは政治学の対象というよりは,行政実務の問題であり行政学の対象であると考えられたきたのかもしれない」ものの,一方行政学側でも「選挙とは正しい政治の領域に属するがゆえに,行政学の分析対象から外れてしまっていたのであろう」(43頁)との理解が示されております.なるほど.
品田裕先生が執筆された「第6章日本の選挙管理委員会について」では,日本の選挙管機関のうち自治体の選挙管理委員会を対象に,「事務局部門」(146頁)は対象から除き,委員会というボードと選挙管理委員を分析されています.本稿では,委員の職歴に基づく「「元政治家」型」と「「名士」型」(140頁)と,それぞれの構成に基づく委員会の構成の存在を抽出.「元」職や名士という委員の属性からも「共通して高齢である」(134頁)ことも明らかにされており,なぜ高齢なのだろうかという素朴な疑問もわくなかでの,次の指摘は,なるほどと思いました.

選挙管理委員は,しばしば「時の氏神」的な役割を果たすことが多いので,さまざまな思惑や背景をもつかもれしない現役世代は敬遠されるのではないと考えられる.それよりも長老のいうことの方が,権威がありそうである」(134頁)