鳥取県議会は22日、県政運営における県民参画の基本理念や具体的方法を定めた鳥取県民参画基本条例案を、賛成多数で可決した。一定の要件を満たせば実施できる常設型の住民投票(県民投票)制度を盛り込んだのが最大の特徴。県によると、常設型の住民投票制度を設けたのは都道府県で初めて。
 条例では、二元代表による県政運営を基本としながら「県民に直接意思を問う必要が生じた場合に備えて」県民投票制度を導入すると明記。県の重要施策に関する事項などを対象事項とし、県民、知事、議会の3者に発議権を持たせた。
 22日の本会議では、「発動のハードルが高く問題が多い」などの反対討論があったが、「県民参画の機会を奪うべきではない」との賛成討論もあり、最大会派の自民党や第2会派「絆」などの賛成で可決した。条例は平井伸治知事が2期目のマニフェストに掲げ、2011年8月に有識者や県民らによる委員会で検討を開始。昨年12月に委員会の報告書を参考にした当初案が作られ、議会と協議を重ねながら修正を加えた。公布は3月26日だが、県民投票制度部分は県や市町村選管との協議が必要なため、10月1日施行。県によると、神奈川県や北海道でも住民投票制度を規定しているが、課題ごとに条例で実施方法などを定める「非常設型」でハードルは高い。
 平井伸治知事は採決後の取材に対し「全国で唯一、(都道府県レベルで)住民投票が発動できる道筋が付いた。大きな選択を迫られた時などに県民が主人公の鳥取型デモクラシーが効果を発揮するだろう」と話した。

本記事では,鳥取県において「鳥取県民参画基本条例案」が可決されたことを紹介.同条例に関しては,同県HPを参照*1
「県政運営における県民参画の基本理念」と「県民参画のための情報公開,広聴及び県民投票の基本的事項」を定めた同条例.全27条のうち第12条から第26条までとその大半は県民投票に関して規定.
概要だけを確認してみると,まず「対象事項」は,「法令に基づき県民の投票に付することができる事項」と「県の権限に属さない事項を除」く,「県の存立の基礎的条件に関する事項」,「県の実施する特定の重要施策に関する事項」,「現在又は将来の県及び県民全体に重大な影響を与える政策上の具体的事項」(第12条)の3事項が対象となる.次いで,「投票資格者」は「県内の市町村の選挙人名簿に登録されている者」(第13条).三つめに「発議」は3経路があり,まずは, 選挙人名簿登録者が「総数の10 分の1以上の者の連署」により「投票資格者」である「代表者」から「知事に対し,県民投票の実施を請求」し,知事が「投票請求を受けた日の翌日から起算して20日以内」で「県民投票の実施を発議」する場合である.次いで「議員」,そして「知事」それぞれにも「発議」(第14条)を認めている.
「実施要件」は,これら3つの経路で異なっている.まずは,県民から請求の場合,「選挙人名簿登録者の署名の数がその総数の3分の1の数以上」のときには発議となる.また,請求を受けて「知事が発議」する場合には「県議会で出席議員の過半数が賛成した」ときに発議となる.次いで,「議員が発議」する場合には,「県議会で出席議員の過半数が賛成したとき」となる.最後に,「知事が発議した」場合は,「県議会で出席議員の過半数が反対したとき」(第16条)が要件と規定.議会による発議は議会のみの判断,知事から発議は「お互いのチェック」の「バランス」*2が失した時に発議が行なわれるように規定されている模様.
選択肢等の検討「県民投票」で「選択する選択肢」と「投票の判断に資する情報」は,「鳥取県県民投票選択肢等検討委員会」を「設置」し「検討」(第18条)することも認めている.「投票資格者」は「投票日に投票事項ごとに1人1票」(第23 条)となり,「投票した者の総数」が「当該県民投票の投票資格者の数の2分の1に満たないとき」は「成立しないもの」とされ,「開票は行わない」(第24条).投票結果は,「知事,教育委員会公安委員会,警察本部長,選挙管理委員会,人事委員会,監査委員,労働委員会,収用委員会,海区漁業調整委員会内水面漁場管理委員,病院事業の管理者及び県議会」では,「県民投票の結果を尊重しなければならない」(第26条)と規定する.
これまでに制定された「常設型(非個別型)住民投票条例に基づいて実施された住民投票はない」*3なかで,同県の同条例は実施に至るのだろうか.今後の制度運用も要観察.