全国で初めて自転車利用者に押し歩きの努力義務を課した福岡市の「自転車の安全利用に関する条例」の施行から1週間が過ぎた。
「押し歩き推進区間」に指定された同市中央区の繁華街・天神の渡辺通りでは、“押しチャリ”が少しずつ浸透しつつあるが、指導員の呼びかけを無視して降車しない人も2割以上おり、降車を嫌って推進区間以外の歩道を走る自転車が増えるなど、新たな課題も見えてきた。
8日午前8時10分過ぎ。指導員の野瀬広司さん(60)が、渡辺通4丁目交差点から北上してきた自転車に乗った中年男性に降車を呼びかけた。しかし男性は「時間がない」と言い残し、そのまま走り去った。野瀬さんは「毎日呼びかけをしているのに、まだ応じてくれない人がいる」と顔を曇らせる。市生活安全課によると、1日の条例施行から7日までの1週間に、指導員が声をかけた人は計7110人。約78%の5529人は降車に応じたが、無視したり、抗議したりして降車しなかった人も約22%の1581人に上った。
本記事では,福岡市における「自転車の安全利用に関する条例」の実施状況を紹介.同条例に関しては,同市HPを参照*1.
同条例の第14条では「押し歩き推進区間」を規定.同市では「歩行者の交通安全を確保するため特に必要があると認める歩道の区間」を「終日又は時間帯を限」り「押し歩き推進区間として指定」することができ,「自転車利用者」は同区間を「通行するときは,自転車を押して歩くよう努めなければならない」*2(同条第3項)との努力義務を課されている.努力義務のために,同市では「違反者」に対して「歩道における徐行,自転車からの降車,灯火の点灯その他交通安全の確保に必要な措置をとるよう求める」(同条例第15条第3項)職として,同「市職員のうちから自転車安全利用指導員」(同条例第15条第2項)を任命する.本記事では,同条例の施行後1週間での実施状況と同職の業務を紹介.
本記事によると,同職が「指導」(同条例第15条第1項)をした自転車利用者は「7,110名」.実際に降車し「押し歩き」に改めた自転車利用者は「5,529名」と「約79%」であった,という.指導員の「まなざし」と指導以外には努力義務ゆえの「違反に対する不利益」*3が設けられてもいなく,くわえて,違反が不知ゆえの善意による違反者か,機会主義からの違反者か,または異議申し立てからの違反者か,「情報の非対称性」ゆえに,行政側には「違反者」の「タイプ」*4の見分けがつかないなかでは,高い降車率とも解せそう.公式化を通じた今後の慣習化の過程も,要経過観察.
*1:福岡市HP(くらし・手続き・環境:防犯・モラルマナー・交通安全 :交通安全 :「福岡市自転車の安全利用に関する条例」が制定されました)「福岡市自転車の安全利用に関する条例」
*2:前掲注1・福岡市(福岡市自転車の安全利用に関する条例)5頁
*3:曽我謙悟『行政学』(有斐閣,2013年)408頁
*4:前掲注3・曽我謙悟2013年:411頁